12話 天外
志吹は気分が乗らないまま学校に向かった。正直いやだった。あんなことがあったのだから気まずくてしょうがなかった。それでも学校はいつもの場所にいつもと変わらず存在している。だいたい同じくらいの登校時間で来れる。それだけで憂鬱だった。
教室に入り席に着いた。隣の席と少し前の席にいつも通り二人はいたが挨拶はしなかった。そのまま机に突っ伏した。するとトコトコ寄ってくる足音が聞こえた。
(奏也か・・なんて言おうか・・・)
志吹は少し緊張していた。
「お、お前は・・・・!」
隣で太一の驚く声が聞こえた。なんだろう、と思い顔をあげるとそこには神谷志穂がいた。
「お、お前は!!!!!」
志吹はまた違った意味で心臓がバクバク鳴っていた。
「その反応、さっき聞いたっつーの。」
志穂は少し見下ろすように言った。奏也も志穂の存在を知り大声をあげていた。
「なんでこんなとこに!!!い、いるのかね!!!」
「チッ!相変わらずピーピーうるせえな。」
三人は状況が飲み込めずにいた。すると志穂はとんでもないことを言い出した。
「うち、今日からここに転校してきたから。迷惑かけんなよ。」
三人はしばらくぽかんとしていたがしばらくして各々驚きの声をあげた。
「え~と、今日からクラスメイトになる神谷志穂さんだ。みんな仲良くしてやってくれ~。」
始業のときに担任からそう伝えられた。あまりのスピード感にめまいがしそうだった。志吹は志穂に詰め寄った。
「おい!なんでこんなこと!訳わかんねぇぞ!!」
志穂はすました表情で答えた。
「別に。ただお前らはうちと同じ種類の人間のようだったからな。近くにいた方がいいだろ。」
「だからって!お前は俺たちを・・!」
「忘れろ。」
相変わらずのつんけんした口調でそう話した。志吹には理解ができず困惑していた。そんな志吹の表情を見て志穂は言った。
「まあ無理もないか。後で三人で屋上に来い。いろいろ話してやる。お前も知りたいんだろ。・・・いろいろ。」
志吹は最後の一言に含蓄を感じた。正直頭の整理はついていなかったが、あとで屋上で話すことに決めた。他の二人は遠くから様子を見守っていたが、話し終わると志吹のもとへ近づいてきた。
「おい、なんだって?」
奏也は不安げな様子で聞いてきた
「ああ、後で屋上に来いだとよ。・・・・あ・・・。」
「どうしたんだい?」
太一が尋ねた。志吹は前日のことをすっかり忘れ奏也たちと話していた。急に前日のことを思い出しもじもじしていた。だが、もう今しかないと思い腹をくくって切り出した。
「すまない!!」
何かに導かれたように3人の声は揃った。
「あ、あの!!お、俺・・!!!」
志吹は思いのたけをぶつけようとした
「志吹。分かってるよ。」
奏也はそう言って志吹を制した。
「いつもの僕たちの雰囲気を壊さないでくれないか。」
太一はぶっきらぼうにそう答えた。3人は目を合わせた。静かな笑みが沸き起こるように3人の顔を彩った。
「へへっ。」
志吹の目に浮かぶものには誰も触れなかった。




