8.幕末飯
ガラッ
扉が開いたようだ。そこにいたのは・・・・
「やぁ、桜井君、坂内君。3番隊隊長の平山だ。局長に聞いたよ、隊長就任おめでとう」
どうやら、来たのは3番隊の平山さんと言う人だ。この人は確か、幹部の集まりでも優しく対応してくれた人だ。
「ありがとうございます!」
「あざっす!」
「そういや、君たちは未来とやらから来たのだろう?」
「ええ、今から約150年後から来ました」
「そうか。ふっ、不思議なものだな。150年後から来る人間がいるだなんて。
そうならば、この街のことをよく知らないんじゃないのか?」
「え?ええ、お恥ずかしいのですが、まださっぱりわかりません」
「そうか。なら、明日街案内をしようか?明日は、特に組の仕事もないものでね」
「え、いいんですかっ?」
「勿論だ。私の休憩時間といえば料亭へ行き酒を飲むことくらいだ。ちょうど、飽きてきた頃だ」
少し笑みを浮かべ優しく言ってくれた。この人、酒飲むんだ。まぁ、隊長のお誘いってことでお言葉に甘えていいだろう。うん、そうだ、そうしよう....
「そうなんですかっ。それなら、お言葉に甘えて。お願いします」
「ああ、わかった。それじゃ、また明日ここへ来るよ。今日はこれで、失礼する」
「はい!また明日待ってます!」
そう言い、平山さんは部屋を去った。さて、今日は何をするかな。いきなり隊長と言われても、何をすればいいのかわからない。
「なあ、刀真〜、隊長って何すんの?」
なぬっ!?俺も今思ってたとこだ。残念ながら、その質問に対しての回答は無理だ。
「俺も考えてたとこだけど、よくわからないな。そういや、さっき武蔵川さん来るって言ってなかったっけ?」
「あぁ、おっさん後で行くとか言ってたな。てか、飯どうするんだろ。めっちゃ腹減ったよ俺」
飯か....そういや、生きていくには飯は必要不可欠だな。だが、金ない。。。。
俺も正直なところ腹は減っている。この時代のご飯は何を食べるのかと言うのも興味があるな。
ガラガラッ
・・・・・・するとまた誰か来た。
「俺や、待たせたな二人とも」
ふぅ・・・・。今度は、ちゃんと武蔵川さんが来た。
「そういや、さっき3番隊の平山さん来ましたよ。局長お伝えが早いんですね」
「あぁ....そうか。平山が、あいつらしい」
「んなことよりよ、おっさん腹減ったよ。なんか食わしてくんない?」
「ははっ。そうやな、腹減ったよなおまんらも。おっしゃ、今から3人で行くか」
気前がいいな。和音の図々しいお願いを嫌な顔せず引き受けてくれた。さっきより腹減ってきたよ......
らーめんとかステーキとかあるのかな?
「ねえ、武蔵川さんらーめんとかステーキって食べ物ある?」
「らーめん?すてーき?なんやそれは。わしはそれしらんわ」
この時代はやっぱり、らーめんやステーキも無いんだ。まぁ、幕末時代だから当然ないよな。この幕末変わってるからあるかも、と思ってたが・・・・・・
「なんだ、無いのか。なんかおっさんおすすめの店とかあんの?」
「はっはっは。まぁ、おまんらの口に合うかわからんが俺の行きつけの店があるんやけど、そこがめちゃくちゃうまいんや」
「へぇー!そうなんだ!そこ行きたいや俺」
「俺もその武蔵川さんの行きつけの店行きたいです」
「よし、決まりだ。支度はもうせんでええか?」
「はい、大丈夫です!」
「俺もだ!」
「ほんなら、行くで」
・・・・・・屯所を出て、約10分ほど歩いていると、まるで今で言うレストラン街のような風景があった。
八百屋や、居酒屋っぽい店が沢山あった。
なんとなく武蔵川さんの行きつけは居酒屋っぽいが俺たちは、まだ未成年だ。
居酒屋は困るな......
不安な思いのまま、歩いていると・・・・
「よし、ここや。おまんら、米って知っとるか?」
「米?そりゃ知ってるよ」
「あたりめーじゃん、おっさん。こっちの時代にもあるぜ」
まさか米とは、なんか単純というか・・・・逆に意外というか・・・・・・
米がおいしい専門店なのか?
「そうなんか。ほんなら、行くで」
「へい、いらっしゃい!お、武蔵川さんやないですか」
「おう。今日は連れも一緒や」
「あ、そうなんですか。なんや、珍しいやないの。武蔵川さんは、飯は1人が一番や!ってよー言ってはりましたのに。あははっ」
かなり陽気な店主だ。めちゃくちゃうるさい。まぁ、それはともかく良さそうな人で安心した。幕末の人は怖いイメージもあったからな.....
「ど、どうも」
「あ、あれ?お連れさんってこの子ら?」
「ああ、そうや。新しい入隊者でな。あと、隊長でもあるんやこの2人は」
「へぇ〜そうなんや。若いな〜。すごいやん隊長って。あ、ほんなら、今日はお代いりません。いつも、お世話になってますし隊長さんも来てくれてることやし」
「え?ええんか?そりゃ助かるわ」
武蔵川さんは、少し笑みを浮かべながら嬉しそうに言った。武蔵川さんにお世話になってるってどういうことなんだろう。
「ほんなら、じゃんじゃん食べたいだけ食べてってや。3人分持ってきますわ」
「おう、頼む」
「ねえ、武蔵川さんなに頼んだの?」
「あ?あぁ、米やで。ここは他の店とちごてうまいんやで」
「そ、そうなんだ」
「なぁおっさん、おかずは?」
「おかず.....?なんやそれ?」
「えーわかんねえのかよ!説明めんどくさいから、いいわ」
米だけを食えということなのか?俺も、さすがにそれだけでは物足りないというか......味気ないというか......
「おまたせー。はいどうぞ〜」
・・・・・・そこに来たのは、米。
シンプルにご飯だけ。見事なことに輝いていて美味しそう。心の中で苦笑いしてしまいそうだ。
グフッ、グフッ。
・・・・・・マジ無いわこれ!ふざけんな!ケチめ!
涙が出そうである....
と、思ったのだが時代が時代だから食の文化も今と違うのかも。江戸民ってある意味すごいな。
「ちょっ、こんだけ?マジでおかずなんも無いの?」
ちょっ!和音、それは禁句だ....! ここは幕末だ。仕方ないだろ......
「おかず?なんやそれ?うちのお米あかんかった?」
「はぁ?」
「ちょっ、和音つべこべ言わず食おうぜ」
「ちぇっ。まぁ、いいや食ってやる」
少しモヤモヤ感があったが腹も減った。食べてみよう。
っぐ・・・・・・!?
くそうめえぇぇ!幕末とは言え、米自体のクオリティはすごい。正直家の米よりうまいかも.....
すると和音も・・・・・・
「んっめぇぇ!なんだよ、おっさんいいとこ知ってんじゃん!刀真!おかずおかずって文句つけんなよ!」
「え?いやいや、お前だろ!」
「せやろ?うちの米は京一うまいって言うてもおかしないんやで〜」
「え?マジで?」
「武蔵川さん!ありがとう!すごく美味しいよ」
「ほら、良かったわ。どんどん食って力つけてくれや」
そして、30分間米を食べ尽くし腹が膨れた。
もう無理だっ....
「ふぅ〜腹一杯。もうおれギブ!」
「そうか、わしももう無理や。」
「3人とも、よー食いはりましたな。こりゃ、赤字やわ〜。
はっはっは。まぁそんなことええから、また来てや」
「あ、ありがとうございます!」
「おっしゃ、ほんなら二人とも出よか」
「はい!」
「おう」
飯も食べたとこで、店を出ることにした。
「いや〜うまかったぜ。ありがとな、おっさん」
「礼には及ばん。それより飯も食ったことやし、屯所戻ろか」
そして、屯所へと戻ることにした。
戻るため、幕末のレストラン街を歩いていると・・・・
バシャッ!
「つめたっ!」
何か冷たい物がおれの体にかかった。振り返ってみると・・・・・・
「す、すみません!ど、どうか斬らないでください!」
そこには、見る限り俺と、同じ歳ほどの少女がいた。どうやら俺に水がかかったようだ。わざとなら、イライラするとこだがたぶん誤ってかけてしまったんだろうから、許してあげるしかない。てか、斬らないでくださいって斬るわけないじゃん。
「お前、刀真に何やってんだよ!わざとか!?」
「すみません、水撒きをしていたのですが歩いておられるのを気付きませんでした。すみませんっ!すみませんっ!」
「あ、あぁそれならいいよ。気にしないで。」
「いえ、そういう訳にはいきませんっ」
そう言うと、少女がしゃがみ出し....