6.波乱の入隊試験
そこには腕組みをし、勇ましい姿で立つ局長がいた。
「来たな。2人とも」
「それで、試験の内容はなんですか?」
「その前に、君たちの武器を見せてくれんか」
「あ、あぁはい」
武器を見せてくれと頼まれたので、大太刀を地面に置いた。
「これは、美しい。大太刀なだけあり、長さも立派だな。まだ剣を使ったこともないのだろ?君には、これを使いこなせるようになってもらわなくてはな。
よし、もう1人の坂内くんはどういうものなのだ?」
「お、これっす。」
「ふむ。なるほど、妖刀ですね。刀身の先端の尖がかなり強調されてるようですね。身軽に使いこなせ、これも戦力になる。君にも、一刻も早く使いこなせるようになってもらいたい」
「は、はい!頑張ります俺!」
「・・・・よし、それでは試験を始める。ふふっ。君たちにはこれから、私を斬り殺してもらう。」
「は?」
は?は?は?斬り殺してもらう?試験は局長を殺すこと?どういうことなの?
この時頭の中は冷静に判断できなった。これは、夢なのか?破茶滅茶すぎる。そもそも、 ここが異世界なのか夢なのかよくわからないんだが。
「局長、殺していいんすか?」
っておい!お前は何を簡単に受け入れてんだ....和音の表情は驚きの顔さえない。
「ふっ。やってみろ。」
「あぁ!?やってやらぁ!」
「か、和音何言ってんだ!こんな試験狂ってる!」
「だって、局長がこう言うんだ。やるしかねえだろ。まぁ、あんたのことだ何か考えあるんだろう?」
「正式に言えば、私を殺す気で来いと言った方が良いかもな。万が一君たちが私を殺しても、問題ない。できるならの話だが。
そして、使う武器はこちらで用意した小太刀で使ってもらう。初心者の君たちは、小太刀からスタートだ」
殺す気で来い・・・・か。よくわからないけど、それくらい本気で来いと言うことなのだろう。きっと・・・・。
・・・・そして、局長が小太刀を持ってきた。大太刀は、おろか大刀より短い全長70cmほどの刀だ。
そして、鞘から抜いてみるとこれまた美しい刀身。ちゃんと、手入れもされている。
そして、持った感じは、大太刀と違い軽く扱いやすい。簡単に言うと、包丁を握るような感じである。
「ルールは、とにかく君たち2人で私を殺す気でくればいい。それだけだ。ちなみに私は木刀を持つだけだ。安心しろ」
「んにゃろー!なめやがって!いくぞぉ!」
少し挑発されている気を感じる。和音はやる気満々のようだ。よし、俺も全力で行こう。
「それでは、開始!」
局長がそう言った。よし、行くぞ・・・・
「おらぁぁぁぁ!」
「シュッ!!」
「くそ、かすった」
「まだまだだな。桜井くんもこい!」
「うぉぉぉぉ!」
「シュッ」
くそ、かする。局長は、木刀を使うことなく華麗に避ける。
「おりゃっ!」
「スカッ」
「くそっ!あたらねえ」
・・・・そうして、木刀に傷もつけることもできず一度も当たらず、約5分ほど経過した。
「どうしたんですか。この程度なのか?君たちは」
「う、うるせぇ!おりゃぁぁぁぁ」
「シュッ、シュッ、シュッ」
何度も避けられた。
そして・・・
「ドンッ!ドンッ!」
「うぐっ!?」
「かずと!」
和音は、局長に木刀で体を数回当てられた。
「かずと!だいじょうぶか!?」
「も、もうむりだ....」
和音は、横たわった。俺も全く歯が立たない。
「うぉぉぉぉりゃ!」
「シュッ」
「シュッ」
「そんなんじゃ、当たりませんよ」
「ドンッ」
「うわぁ」
俺も木刀で打たれた。も、もう....
すると、武蔵川がきた。試験を見に来たようだ。
「2人とも!何しとるんや!剣はふったことなかろうと、もう少しできるはずや!何回倒れてもええ。せやから、お前らの真の力を思いっきり今だせ!小さな傷でもええ!木刀に傷一つくらいつけてみろ!」
「む、武蔵川さん....」
せめて、傷一つでも....
全力で・・・・
「う、う、」
「うぉぉぉぉぉぉぉ」
「せゃぁぁぁぁぁぁ!」
俺は、無我夢中で局長に向かっていった
目を閉じ思いっきり刀を振った
すると・・・・・
「シュキッ」
「!?」
明らかに、今までに感じたことない独特の感触がした。何が起きたか定かではない。
「見事だ。桜井くん。」
「え?」
どうなったんだ?ただ、感じたことない感触はした。目を開けると・・・・
「やるでは、ないか。」
なんと、局長の頬に軽い切り傷が入っていた。
え?お、俺が・・・・?
「刀真!お前....」
「んあ?」
「局長に、刀当たったぞ....!?ほ、頬に!」
ま、マジかよ?信じられない。ついに当てることが....!?
はっ、だがこれだけでは駄目なんだ。どうすれば....
「お見事だ。2人とも。今までに、初心者で私の皮膚に傷を付けた者はいません。
入隊試験を合格とします・・・・
よろしくお願いしますよ。隊長のお二方。」