1.始まりの日
この日の夜はいつもと変わらない夜であった。
まさか、なんの変哲もないこの夜でこの後の出来事が大きく変わるだなんて。
「ねえ、そろそろ変われよ。」
「まてまて、今めっちゃ良いとこっ!」
僕の名は桜井刀真。現在は高校3年である。
僕の性格は、物欲が強く、時には苛立ちをぶつけたりしてしまうが、他人には過剰に気を遣う複雑な性格である。
そして、この日は親友とお泊まり会を行っていた。
この親友の名は、坂内和音。僕と同じ高校3年であり、クラスも同じだ。
この親友は僕にとって相棒とでも言える人物である。
他のクラスメイトと違い、話を聞いてくれたり時に喧嘩はしたりするが、何より言いたいことを遠慮なく言い合える関係でもある。
そして和音の性格としては、不思議な一面があり、陽気で遠慮が少なめでたまに憎たらしく思うが、時には気遣ってくれる実は優しい奴である。
また、ラーメン屋に行くとスープしか飲まない奴でもあった。
そして、このお泊まり会は、毎月一ヶ月に一度行っている。また、今月は僕の家、来月は和音の家と交互に泊まるとお互い決めている。
そして、お泊まり会の時は決まって、毎回ゲームをしている。よく遊ぶゲームは、幕末時代をテーマとしたゲームだ。
なぜかと言うと僕たちは、日本刀や戦国武将や新撰組などが大好きであるため、こういうゲームが多い。
そして、このゲームは敵を単純に斬っていき、ストーリー式のゲームである。ただし、このゲームは対戦形式ではないので、どちらかがプレイし、どちらかが観戦となる。
そして、毎回よくばりな、和音がゲームを操作している時間が多く、僕はほぼ観戦だ。
そしていつもと変わることなく、ゲームを観戦していると、戦闘シーンが終わった途端ゲームからかなり眩い光が部屋中に広がり、僕も相棒も目を開けることができなかった。
「うっ….!眩しい!」
そして、そのまま目を閉じた。
そして、目を開け気がつくと薄暗く床が畳の部屋にいた。かなり和風感が漂っている。
「なんだここは?」
そして、何がどうなっているのかわからず頭の整理がつかないが、辺りを見渡すとぐっすりと眠っている相棒が居た。
「おお、かずと!よかった〜おきろ!!おい!」
必死に起こすが爆睡しているようでなかなか起きない。
そして、更に見渡すと見知らぬ男がぐっすりと眠っている。
その男の右には2本の刀が置いてあった。
見る限り刀の種類は、大刀と小刀のようだが、まるで本物のようだ。
そして、その男はなぜか洋服ではなく和服である。簡単に言うと侍の服装そのままであり、コスプレをしているのかと思わず笑ってしまいそうである。
そして、僕が立ち上がるとその音に気付いた男が起きた。
「おお、起きよったか。おまん、大丈夫か?この宿の前でおまんら2人とも倒れておったぞ。」
「え?あ、あぁ大丈夫です。」
この男は何を言っている?宿?倒れてた?それに話し方が古臭く、ツボにはまる話し方でもある。
全く何が何かわからず意味不明だったが、とにかく質問してみることにしてみた。
「あ、あの〜ここはどこですか?」
「何を言っておる?ここは、京じゃよ。」
きょ、京?今でいう京都のことなんだろうけど、なぜ京都に?
「それよりおまんら、その服装はなんや?そんな変な格好して、異国の者か?異国にしても見たことないがかよ。」
どうやら京都弁やらいろんな方言の訛りがある。そんなことより、疑問をもつ服装は男の方であった。
「いえ、日本の東京生まれの東京育ちです。あなたこそその服装なんですか?侍みたいなコスプレして。」
「とうきょう?こすぷれ?なんやそれは。それに、わしは侍やが?」
「は、はぁ?侍?てか、そんなことより日本の方ですよね?」
「そ、そうや。根っからの日本人や。京生まれ、京育ちのな。」
よくわからないがまま、頭のモヤモヤを晴らすためまた質問してみた。
「今ってもちろん平成時代ですよね?」
少し恥ずかしい質問だが、これも確認のためだ。
「あぁ?へいせい?なんぞそれは?今は江戸末期幕末じゃ。あほなこと聞いてくるもんやの。」
俺は、今までのこの男の言葉といまの質問の返答に耳を疑った。これは、単純に言えば….。
馬鹿げてるけど、俺と和音は幕末時代に迷い込んだ。この男も恐らく本物の侍である。
どうして迷い込んだのかわからない・・・・
はっ!?そうだ、ゲームを観戦していると眩い光が部屋を包んで今に至るのだろう。
「話聞く限りどうやら、京のことようしらんそうやな。その服装やと、街でたら目立つぞ。新撰組に狙われること間違いなしやな、」
「え?新撰組?」
新撰組だと?まて、言われてみると幕末と言うことは本物の新撰組がいるということか?
「新撰組って本物の?」
「あぁ?もちろん本物や。イカれた人斬り集団や。」
「イカれた人斬り集団?」
「そうや。何や、噂では使えやん平隊士をどんどん斬り殺してくようや。
そんな集団でも平隊士はどんどん増えとるようやがな。
なんで、入隊するやつらが殺されるかわからん場所に入るかはようわからんがな。
やから、おまんらみたいな目立つようなものは斬り殺れる可能性が高い。」
「そ、そうなんだ。」
新撰組って憧れだけど、思ってたより恐ろしい集団なのかもな。
「やから、おまんらそんな目立つ格好はやめたほうがええ。なんなら、俺が着るもん持ってくることもできるで?」
「あ、ああそういうことなら、とりあえず2人分頼む。すまん、初対面なのにこんなこと。」
街を歩くことになるだろうから、恐らく必要だろう。出会ったばかりなのに少し申し訳ない気分だが。
「お、おうわかった。それより、おまんら、ほんまにこの世界を知らんようやな。俺は、困っとる人がおるならほっとけやんタチでな。これからも、わしを頼ってくれ。」
「ありがとう。」
突然のことで身元もわからない人間に動いてくれるとは、やけに親切な侍だ。心から感謝している。
「礼には及ばんぞよ。
それより、名を聞かせてくれんか?ちなみに、わしは武蔵川 剣二や。」
聞くからにかっこいい名前だな….
「武蔵川さんか。俺は、桜井刀真。」
「刀真か。いい名だ。剣と刀の共通があるな。
そうだ、そのもう1人の者は?」
「え?ああ、こいつは坂内和音だ。」
「和音?変わった名だな。まぁ、2人ともよろしくな。」
「あ、うん。よろしく、武蔵川さん」
そういや、和音起こさないと。この状況を見るとこいつもたぶん混乱するしな。はやいとこ、説明しないと。
そして、和音を起こすことにした。
「おい!かずとぉ!おきろぉ!やばい!世界がヤバイ!」
大きな声で叫び起こすが、全く起きる気配もない。
すると、武蔵川さんが大刀を片手にすると・・・
「ドンッ!」
刀を床に大きく叩きつけた。突然のことでびっくりした。だが、和音は、まだ起きない。
「お主、起きんか!それでも、男か!」
すると、和音が目をこすり始めた。
「んん….?あなたは誰?俺は誰?」
ようやく起きたようだがまだ寝ぼけているようだ。はやく、状況説明しないと。
「和音〜わかる?俺は刀真。お前はカス音だよおぉぉ」
目覚めさせるために、あえて小馬鹿にして言ってみることにした。
「あぁん!?お前は刀真、俺はカス音?ふざけんじゃねえぇ!クソ野郎」
「ははは。起きたな。」
やはり俺の作戦にかかった。さて、起きたはいいがここからが本題だ。
「お、おい刀真…?ここ、お前の部屋…じゃねえよな?お前の部屋洋室だよな?」
「あ、あぁ。俺の部屋は洋室だ。
刀真、しっかり聞いてくれ。俺たちは、幕末に迷い込んだ。」
「は、はぁ?部屋変えてリアルに言ってるけど超つまらん冗談だな。」
「つまらん風に聞こえるけど割とマジで。」
「マジでって….お前….なんで….」
和音は、今までに見たことない表情になった。幻の幻のようで動揺しているんだろう….