乳児は辛いよ 3
ぐっぱーぐっぱー。
手をにぎにぎ開いたり閉じたりしながらこんにちは。
だんだんと視力がアップしてきて、物がよく見えるようになりました。
うんっと手を上に持ち上げて自分の手を見て見るとちっちゃいピンクの爪が生えそろったちっちゃいもみじのおててがあります。我ながら可愛い手です。
色はほんのりピンクがかった乳白色で、それで初めて自分が白人系種族なんだと実感する。
両親も色白(お父さんはちょっと日焼けしてたけど)だったからそうなんだろうなぁとは思っていたんだけど、この部屋には鏡もないものだから確認のしようがなかったんだよね。
そして目がよくなってくるにつれて別のものも見えるようになってきた。
それは例のキラキラです。周囲を観察するように注意してたら、いつのまにか大気の中にキラキラしたものが見えるようになったんだよ。
初めは埃だらけかよ!って思ったんだけど、吸い込んでも喉がイガイガしたりしないし。
それから何度か試してみて、ひたすらそのキラキラを眺めているうちに、意識を切り替えるとその流れが見えるようになった。
上の方ではゆったりと流れているキラキラの動きは、私と私の周囲に近いほど私に向かって速く流れてくる。
でも私のすぐ近くではまるでバリアを張ったようにぷっつりとその動きが途切れていた。
何日か観察して、やがてそのバリアの範囲が一定ではないこと、その範囲が私の体調に左右されていることに気付く。
例えば体調が悪いときってバリアの範囲が広い。
吸い取っちゃって体調が悪いのか体調が悪いから吸い取っちゃっているのかは不明だけど、それで私はようやく以前に言ったとおり自分が実は大喰らいなんじゃないかって気付いた。
私が苦しい時って食べ過ぎで胃もたれして、さらに食べ過ぎた物を嘔吐しているんじゃないの?ってさ!
赤ちゃんだからうまく吐き出せなくてゲロまみれ……うわぁ、嫌だぁ……。
ちなみにここまで気付くだけなのに生まれてから2ヶ月位経っていた。
え、チート?なにそれ美味しいんですか?
いや、ふっつーに埃に見間違えそうなキラキラをひたすら眺めてる時点で察して下さい。
そんなキラキラの流れが読める位凝視する前に、これからどうするべきかとか世間様のチートエリート転生者はタスクを作るんでしょうけど、こちとら元は有名でも名門でもないごくふっつーの高校に通ってごくふっつーの生活していた世間からすれば嘴も黄色いひよっこもひよっこの女子高生、新生児にして何度も死にかけるようなヘビーな体験を前にそんな頭は回りません。
対処療法で体調が悪ければ何とか死なないように祈って耐えること、とりあえず体調がマシであれば体力温存が第一、それくらいしか考えていられないので、これだけのことに気付けたのも私からすれば奇跡だと思う。
まぁ話を戻してじゃあどうするの?って話なんだけど、食べないようにって念じても無理でした。
私の体は清々しいほどに私の言うことききませんね!
じゃあ食べ過ぎる前に外に出しちゃえないかって考えた。
出すのは自分の自由意思じゃないけどいつもやってることだからたぶん出来ると思ったんだよね。
でも出ろーって念じてもうんともすんとも言わない。
あれーって思って、自分の体をペタペタ触る。
たぶん私の体の中にはいっぱいのキラキラが詰まってるはずなんだけどなぁとグダグダ1ヶ月ほど考えているうちに、自分の体をめぐる何かの流れに気付いた。
血管を流れる血液のようにすごく注意して意識したり表面に近い所に触ったりしないと感じ取れないけど確かな感覚。
あー、これが私の中のキラキラかぁってことと、今はちょっと薄いなぁって思った。
どうにかならないかとさらに1ヶ月ほどかけて隅々まで体の中のその流れを追っているうちに、私の体の中のキラキラの濃度はひどくバラバラだってことにも気付いた。
あるところはすごく薄いのに、別のところではものすごく濃くて瘤みたいに溜まってる。
直感的にいつもの爆発はこの瘤が起こしてるんだろうなって分かった。
だから血栓みたいに詰まったそれをどうにかほぐして押し流せたら痛い思いをしないで済むんじゃないかと、なんとか出来ないか試してみる。
うんうん唸って色んなところに力を入れてみたり、ベッドの上で最近だいぶ動かせるようになってきた……それでも死ぬほど頑張って寝返りが打てる程度なんだけど……体をぐねぐね動かして謎のダンスをしてみたり。
……お世話係のお姉さんに目撃されてものすごく恐がられた。くすん。
矛盾に気付いて4/13に加筆修正しています。申し訳ない。