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Dream Delivery

作者: くー

 コツ・・・コツ・・・コツ・・・、後ろから足音がしてくる。カッ・・・カッ・・カッ・・カッ・・。私は後ろの足音がきになり歩みを少しだけ速める。コツ・・・コツ・・・コツ・・コツ・・。後ろの足音も少しだけ速くなる。コツ・カツ・コツ・カツ・、薄暗い路地裏で響く二つの足音。誰がいるんだろう?振り向きたい気になる、けど振り向いたらいけない気もする・・・。

 そのまま数十秒、数分とも感じられる時間が過ぎていく。路地裏を歩むその先にはだんだんと太陽と思しき光が見えてくる。薄暗い路地裏がもう少しで終わる。あの気になる足音も終わりを迎える。光に一歩、そしてまた一歩近づいていく。私は思い切り光りめがけて走りこんだ!

 「きゃああっ!」

・・・・。




・・・・。

 「ゆうき!いつまで寝てるの!」

空気の寒さと光の明るさが私の体を襲う。

 「・・・・・ほぇ?・・・。」

いったい何があったんだろう?目を半開きにして朦朧とした意識で周りを見渡してみる。机の上の教科書。ベッドの枕元にあるゲーセンでとったクマのヌイグルミ。布団を片手に持った母親。いつもと変わらない光景。

 ああ、そうか。いつもの光景を夢見ていたんだ。私は枕もとのクマのヌイグルミを手元に引き寄せ、それを抱きかかえながら再び夢の国へ旅立とうと・・・・した。

 「もう朝よ!起きなさい!」

 そういうと母親の片手が私の頭に飛んできた。

 「痛いよ!何するの!」

 「何時だと思ってるの!朝ごはん食べれないわよ!」

 「・・・・・えっ!?」

 思わず机の教科書の横にある時計をみてみる。

 「・・・・・!?」

 声にできない時間になっていた。

 「何で目覚ましならなかったの!」

 「あなたが目覚ましかけ忘れたのでしょ!なんでそんなにそそっかしいの!」

 目覚ましかけたはずだけどなぁ・・・?疑問を持ちつつも私はあわてて準備をし、朝食を食べつつ家を出たのだった。



キーンコーンカー・・・バターン!

 「おはよー!」

 扉を開き、教室にかけこむ。教室はいきなり飛び込んできた女の子に困惑するようにつめたい空気を発していた。いつもどおりの先生の声が飛んでくる。

 「ゆうき、ギリギリセーフ・・・と、今学期これで何回目だ?」

 先生に冷たいツッコミをいれられ私は指折りしつつ・・・、

 「・・1・・2・・たくさん・・・?」

 「せんせー、これで25回目でーす。」

 私が混乱していると教室の後ろに座る男子生徒から声が飛んでくる。

 「むとう、よく覚えてるな。」

 先生は感心したような声を出した。

 「いつも耳元でバターンをやられてるので・・・・。」

 そういってむとう君はやれやれといった感じのジェスチャーをしつつため息をついた。

 「ちゃかさないでよむとう君!」

 ドッ!教室に笑いの声が響いた。これがこの教室でのルーチンワークになっている。私が早い時間に登校してる日はいつもむとう君から

 「ゆうきが早いなんていい夢でもみたんじゃねーの?」

 とよくからかわれる。

 私はカバンを机の横のフックにかけ、むとう君の横の席に座る。そしてふと、おもむろに今日見た夢を思い出す。

 路地裏を歩いていて・・・後ろを人がついてくる・・・、光がさしこんできている開けたところに走って飛び出そうとする・・・。ここ三日ほど同じ夢を見ている気がする。夢というのは『過去の体験が夢に出てくる』『将来の予知夢を見ている』なんて図書館の本で見たけど、夢に出てくるような路地裏を歩いた記憶も将来そんなところを好んで歩くようなこともしないと思う。

 「・・・・ゆーうーきー!」

 「ひゃぁっ!・・・何むとう君!?」  

 いきなり耳元で名前をよばれ、すばやく右隣のむとう君を見る。

 「せんせー呼んでるよ。・・・顔赤らめて何かあったか?」

 「・・・へ?・・あ、はいっ!」

 困惑しているところにすかさずむとう君のツッコミがとぶ。

 「何があったか言ってみな?」

 「えーっと・・・、薄暗い路地裏を歩いてて・・・後ろから人が・・・、ついてきて・・・・」

 「ゆうき、ここは教室だ。後ろから人がこないように教室の後ろにたっとくか?」

 いきなりとんでくるむとう君以外の声。声のするほうをみてみようとそーっとそちらに首を傾けていく・・・。

 「すみませんでした!」

 目の前には薄暗い路地裏で感じた空気より恐怖を覚える顔で先生が立っていた。


キーンコーンカーンコーン

 学校の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。

 チャイムが鳴ると同時に後ろからポンと肩を叩かれた。

 「ゆうきー、今日帰りどっかいかない?」

 後ろをふりむくと女の子が一人立っていた。

 「チカちゃん!いいよー!どこいく?」

 私は笑顔でその女の子に返事をした。

 「駅前にクレープ屋ができたんだー、そこいかない?」

 「今月ちょっとお財布ピンチだからカフェじゃだめ・・?」

 「しょうがないなぁ、そのかわりお小遣いはいったらクレープね!」

 いつもどおりの会話をチカちゃんとしつつ私たちはカフェに向かった。

 カフェではいつもどおりの100円コーヒーを頼んで一つの席に向かい合って座った。そこでおもむろにチカちゃんが口をひらく

 「最近ゆうきって付き合いいいよね。」

 「そうかな?」

 唐突にチカちゃんに話をふられどぎまぎしながらコーヒーを口にしていると

 「昔は行こー?って誘っても体調が~ってことよくあったじゃない?」

 「あ、あはは。昔はよく風邪ひいてたからね・・。」

 そういえば昔はよく風邪ひいて母親を困らせてたな。風邪だけじゃなく体調が悪いときとかもよくあって月に何回か学校休んでたっけ・・。

 「そうねぇ、高校はいってから体調崩さなくなったね、体も立派に成長して、BFもできて・・・、ママうれしいわ!」

 「ママじゃない、ママじゃない。・・って、BF?いないよそんなの!」

 「えー、むとう君とよく夫婦漫才やってるじゃない?BFじゃなかったの?」

 「付き合ってないからね!」

 急にむとう君がBFときめつけられて顔をあからめつつあわてて語気を強めながら否定すると、

 「急にムキになっちゃって・・・、これはチカ探偵のでばんかな!?」

 「もー、やめてよ!そんなことないってば!」

 私は慌てて否定するもチカはニヤニヤしたままコーヒーをかき混ぜていた。



 バタンッ。部屋の扉を閉じる音。あのあとチカと学校の話とか最近の話題を話をしてカフェを出た後、路地裏を一切通らずに家に帰ってきた。家では母親が夕飯を作っていたのでそれを食べてお風呂にはいってリビングでテレビを見て、自分の部屋に戻る。いつもどおりの流れだった。

 「さて、勉強して寝よっと。」

 机に向かい、ペンケースからシャーペンを取り出し、私は宿題を始めた。今日のテレビ、推理物みたけどあんなところに落ちがあったなんて・・・。カフェでチカちゃんと話したのは楽しかったなぁ。学校では時間ぎりぎりで怒られちゃったし・・・。ふと、シャーペンの動きが止まる。

 「そういえばギリギリなの三日連続だっけ・・・。明日は早く起きなきゃまた先生に怒られる・・・。」

 宿題の提出が明後日までということも思い出した私は宿題をするのをやめ、布団に入り寝ようとするのだった。

 「おやすみ、ごんた。」

 父親が勝手に名前をつけたクマのごんたに挨拶をし、私はねむりについた・・・。

 



 コツ・・・コツ・・・コツ・・・、後ろから足音がしてくる・・・。最近同じ夢を見ている気がする。カツ・・・カツ・・・カツ・・・私は歩みを止めずに、振り返らず、歩いていく・・・。カツ・・・カツ・・・カツ・・カツ・・、コツ・・・コツ・・コツ・・コツ・・歩く速度を上げると後ろの足音も速くなる。カツ・・カツ・・。

 すると急に上から人の声が鳴り響いた。

 「ごめん、おまたせ!路地裏の迷路に迷ってたよ!」

 ふっと上を振り向くとまるで、一昔前のアメリカのヒーローを思わせるような格好をした人が一人空中に浮いていた。この雰囲気にそぐわないその人物は夢の中という注釈をつけることによってのみ納得できるほどの違和感をこの場でかもしだしていた。

 「最近眠れなかったんじゃないかい?君には新しい夢をもってきたよ。でもその前に・・・。」

 ヒーローを思い浮かべてしまうその人物が何かを唱え、そして手を振りかざした。すると、後ろから聞こえてきていた足音が聞こえなくなった。

 「ナイトメアテラーは去ったよ。君には新しい夢をあげるよ。これで元気になって!」

 ヒーローと思われる人物がおかしな踊りを始めた。するとあたり一面が明るくなり、路地裏と思われていたところが遊園地に変わっていった。

 「あ、ありがとうございます。あなたはいったい・・・。」

 「悪夢は人を弱らせる、でもそれを駆逐して新しい夢を配達する・・・、ドリームデリバリーとでもよんでくれ。・・おっと、夢の続きを楽しんで元気になってくれ。そして私のことは記憶からなくなる。」


 パチンッ、指をはじく音が聞こえる。

 とたんにゆうきの目の前に閃光がはしった。


 「遊園地か・・・あ、チカちゃんがいる!」

 「ゆうきー、この遊園地ワッフルがおいしいんだー!」

 「・・・チカちゃん、太るよ?」

 メリーゴーランドが回るよこでワッフルを食べつつマスコットキャラクターとの写真を通りすがりの人にとってもらった。シャッター音と同時に光ったフラッシュがとってもまぶしく・・・





・・・ジリリリリ!

 がばっ!目に差し込む光と音。ゆうきの楽しい遊園地の夢は終わってしまった。

 「朝だ!学校の時間・・・!」

 机の上の教科書の横の時計に目を向ける。まだ準備してゆっくりごはんを食べれる時間だ。

 「あら?今日はちゃんと起きたわね。」

 「目覚ましさえ鳴ればばっちり起きれるよ!」 

そういいつつ朝ごはんを食べ、カバンを背負って学校にむかっていった。



 学校への登校中、チカちゃんと出会った。

 「おはよー、チカちゃん。」

 「あっ、ゆうき、おはよー。」

 チカちゃんをみつけたゆうきは昨日の夢の話をはじめた。

 「チカったらさー、夢の中でまでわっふるー!といってたんだー。」

 「えー?私そんなこと言わないよー、で、遊園地の夢って楽しかったの?」

 遊園地の話を聞かれ、楽しい思い出がちょっとよみがえる、けど・・・。

 「んー、楽しかったよ!遊園地にどうやって行ったか思い出せないけど・・・。」

 「夢なんてそんなものじゃない?ほら、いきなりどこかに行ったりとか王子様が出てきたりとか・・・。」

 「そっかなぁー、そんなものなのかな?」

 チカちゃんの話を聞いてゆうきはなるほどと納得した顔でうなずいた。





バタンッ

 「おはよー!」

 元気に挨拶してチャイムより早い時間帯にゆうきが教室にはいると目の前の机に座っていたむとう君がこっちをふりむいた。

 「こんなに早いなんて珍しいな。ん?ご機嫌そうだな?遊園地の夢でも見たか?」

 「そそ、あったりー。むとう君よくわかったね!」

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