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5-1 境界の森

 ある程度書き方を考えていたので、結構早く仕上がりました。

 ただ思ったより長くなってしまいましたので、分割して投稿します。



 ーーー川のせせらぎと日光が死角なく照らす森に、獣の雄叫びと悲鳴が木霊する。


「ぎゃああああああぁぁぁぁぁッッ!!」

「ーーーーーッ!!」


 酩酊しそうな断末魔。およそ同じ人間が上げた声とは信じられない叫びに吐き気を催しながら、少女は必死の形相で疾走していた。




「ーーーッハァ、ハァ、ハァ、ハァ……ッ!!」




 ーーー走る、走る、走る。

 腰にあったポーチは投げ捨て、

 目深に被った帽子を落とさないように、

 生命線(、、、)細剣(レイピア)一本を抱えて、

 すれ違う木々の枝で切り傷を作りながら、

 少女は人間の限界域で走り続けた。

 いつぞやの少年のように。



 背後からは、爆発に似た音と地響きに、尋常ならざる叫び声。




「ーーーグオオオオォォォォォォォオオオオオオオオ!!!」




 熊に似た猛獣は、しかし鰐の如く長大かつ凶悪な顎を振り回して爆走する。一歩一歩が大地震に匹敵する揺れを起こし、木の幹すら枯れ枝の如くへし折って突き進んだ。


「ッーーーーー!!」


 走る。

 頭の中が真っ白になりながら。

 転がった石ころを少女が蹴飛ばし、次の瞬間には猛獣が巻き上げ、少女が踏み折った枝を猛獣が粉微塵にする。


「……ッハァ、ハァ、ハァ!!」


 ーーーそも、なぜ自分はここにいるのだろう。


 唯一出来る人間的思考といえば、ただこの()に踏み入った瞬間に対する後悔(、、)だった。

 切っ掛けは身売りに遭いそうだったからーーーだった筈。

 ギルドの紹介を受けた依頼人の仕事先でポカ(、、)して……気づけばこの森まで馬車で運ばれていた。


「ッーーーッ!!」


 ーーー何だ。

 ーーー結局、自分のヘマが原因じゃない。



 ギルドが出す仕事を受けるかどうかは、基本的に自己責任だ。


 ギルドの登録者は、どんな事情を(、、、、、、)持つ者でも(、、、、、)身元保証が為されるが、命を落としたとしても、依頼失敗という結果がギルド(向こう)に知られるのが早いか遅いかの違いしか無い。

 ピンからキリまである報酬に目が眩んだ者。

 ある事情があってならざるを得なかった者。

 また、憧れを抱いてその道に足を踏み入れる者も少なくない。

 それがギルドの斡旋を受けて仕事をする人間ーーー冒険者である。


 少女が踏み入れたのは、己の身一つで生きていかねばならない過酷な世界だ。


 思考の海に沈み、足の挙動が拙くなる。


 結果、


「ーーーぅ……!」


 足元の木の根に足を引っ掛け、体を地面に叩きつけることになる。

 自然のトラップによって強制停止された足は、慣れない全力の長距離走で痙攣を起こしていた。


 ーーー背後から、少女を追う爆発音。




「ーーーオオオオオオオオォォォオォォォオオオオオオオオオオッッッ!!!」





「っひ………!!」


 背を向けている状態に恐怖したのか、上体を捻って体勢を変える。しかし、それで何かが変わるというわけでもない。

 歯が噛み合わず、意識の糸は切れかけ。

 いっそ気を失えば楽だろうに、少女の意識はギリギリのところを保っていた。


 伸びた口を振って前方の木々を薙ぎ倒す。ご丁寧に進路を作っているのだ、と少女は思わずどうでもいいことを考えていた。


「グオオオオォォォォォォォオオオオオオオオ!!!」

「ーーーーーッ!!」


 来た。

 これは死ぬ。

 絶対に、確実に、どうしようもなく自分は死ぬ。


 ーーーぁ……


 幸か不幸か、ようやく少女の意識に陰りが差した。

 初めて訪れる、意識の糸が切れる感覚。

 閉じていく視界の中、少女が最後に見たのはーーー



 何故か、目の前で表情を変えずに傾いていく猛獣の姿だった。



 何だか飛鳥の方が書きやすいなぁ……。

 早ければ明日明後日にまた更新できそうです。

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