9th
「……ゴ、ケンゴォ!」
「う、ん……誰だようるさい、なぁ!?」
誰かが自分の名前を叫ぶ声で目が覚め起き上がる
それと同時にリアラに突然抱きつかれた
「リリリリリアラ!?お前何して……」
「よかったぁ……ずっと目を覚まさなかったから……死んだんじゃないかって」
……ああ
思い出した。そう言えばやけに強いゲスペルを倒したあと倒れたんだ
あのあとリアラが一人で運んでくれたのか?
「俺は大丈夫。ただ魔力使いすぎて倒れただけだから……ところでここは?」
俺から離れて目をこするリアラ
目が赤く腫れてるのを見たところどうやら泣いていたみたいだ
「ここはギルドの安眠室だよ……おまえ3日も寝たままだったんだからな!」
「3日も!?」
ていうことはあれか? 俺は残された短い時間を3日も無駄に過ごしたというのか!?
うおおおおぉぉぉぉぉぉ……惜しいことしたあああぁぁぁぁぁ
「ど、どうした!? どこか傷が痛むのか!?」
「え? ああいやそうじゃなくて……って、そう言えばあまり痛くないな」
今気づいたけど足が痛くない
そんな3日寝てたからと言って治る傷じゃなかったはずなんだけど……
足の怪我を不思議に思っていると部屋のドアが開いた
現れたのは俺より少し年上ぐらいの桃色の髪をした女性
桃色の髪……?
「あら、目を覚ましたのね~」
「姉さん!!」
「姉さん!?」
似てなっ!
桃色の髪以外共通点ないぞお前ら!?
「あ、紹介するよ健吾。アタシの姉でこのギルド長の娘、ミリナ・グルーラ。お前の怪我を治したのも姉ちゃんなんだぞ!」
「初めまして~」
「あ、どうも……」
それにしても、この人が怪我を……
……あれ? 結局どうやって治したわけ?
「なぁ、どうやって怪我を……」
「愛しの娘たちー! 今帰ったよー!」
どんな方法を使ったのか聞こうとしたら、新たに部屋に飛び込んできた人物に邪魔された
入ってきたのは30ぐらいの男性
部屋に入ってきたかと思ったらリアラとリアナを抱きしめた
「親父、苦しい……」
「父親!?」
いやいやいやいや、どう見ても30前後の年だろ!
それでリアラは17、8ぐらいだしリアナに至っては20過ぎてるだろ!?
えええええどういうこと!?
「ん? 彼は?」
「ケンゴくんよお父様。ほら、リアラが前にいってたじゃない~」
「ああ、君がケンゴくんか! どうやらうちの娘がとんでもない失礼をしたようだね」
「うっ……」
突然リアラが苦い顔をしたが……失礼?
クエストにいってる間は特に失礼なことはなかったけど……
……あ、間違って転送したことか!
「別にいいですよ。特に気にしてませんし」
「そうか、それはよかった……リアラ、リアナ、ちょっと席をはずしてくれるかい?」
「? うん……」
「わかりました~」
リアラとリアナは首をかしげつつも素直に部屋の外に出ていく
はて、何か二人きりで話したいことでもあるのだろうか
「……2人とも出ていったね」
「そっすね、ぇ!?」
疑問に思いつつ返事をすると、突然襟を引っ張られた
え、なになになになに!? 何か失礼なことした!?
「ケンゴ・タカツキ……うちの娘に手を出してんじゃねぇぞ……」
「え? え!? ええ!?」
突然人が変わってドスの利いた声で言ってくるリアラの父親
「誓え! 二度とうちの娘に手はださないってなぁ!」
「今までもこれからも手を出すことは一切ないわ!」
二度とってなんだよ! まるで俺が一度手を出したみたいじゃねぇか!
「それはつまり俺の娘に魅力がないってことかぁ!」
「どっちだよ!」
ていうかこの展開在り来たりにもほどがあるわ!
こいつただの親ばかかよ!
「とにかく……今度俺の娘に手を出したら……」
「親父ー、まだ話し終わらないのかー?」
「ちょうど終わったよー?」
まだ10分もたってないのに待ち切れなかったのか部屋に入ってくるリアラ
リアラ達の父親は一瞬で俺と肩を組み笑顔になる
親ばか恐ろしい……
「なあ親父、ちょっと出かけてきていいか?」
「出かける? どこにだい?」
「実はハルバートをなくしちゃってさ、新しいのがほしいんだよ」
「いっておいで! もうハルバートどころか店ごと買ってきてもいいから!」
「いや別に要らないけど……あ、そうだ! ケンゴもこいよ!」
「え゛……」
横からの視線が色々痛い……
目で「どうすればいいかわかってるだろうな」って言ってきてるよこの人
「嫌か……?」
「いってきなさいケンゴくん!」
「さっきから何なんだよお前は!!」
俺の反応を見てリアラが寂しそうな表情をすると急に意見を変えてきた
正直言ってうざい。前の世界でもあまり怒らなかった(怒る相手がいなかっただけだが)俺でもかなりむかつく
なんかこのまま行くのはこいつのいいなりみたいで癪だな……でも断る理由もないしいいか
「別にいいよ。武器を買うってことは武器屋か?」
「ああ! 近所におすすめの店があるんだ!」
俺が行くというと嬉しそうな顔をする
なんか犬みたいに思えてきたぞ
「じゃあ親父、いってくる!」
「いってらっしゃい」
リアラに引っ張られて外に出る
……部屋を出る最後まで殺意のこもった視線送られてきたのはなかったことにしよう
「で、おすすめの店ってどこなんだ?」
「そこだよ」
そう言ってリアラが指さすのはギルドの真向かいにある建物だった
「……近」
「そりゃ冒険者相手に売ってるんだからギルドの近くに店を建てるさ」
それもそうか
リアラに引っ張られたまま向かいの店へと入っていく
店先の看板に何か書いてあったが相変わらず読めない
「ニア! 来たぞー! ……って、あれ? いないのか?」
勢いよくドアを開け、ニアという名の人物を呼ぶがいないようだ
……ニアって誰?
「あらリアラちゃん。ごめんねぇ、あの子たぶんここに戻ってこないわよ?」
カウンターからリアラと親しそうなおばさんが出てくる
「ええ!? なんでだよ!」
「ほら、この間城の兵隊になれる試験があったでしょ? あの子それに応募して受かっちゃったのよ」
「そ、そんなぁ~」
「なあリアラ、ニアって誰だ?」
もう戻ってこないと聞いて落ち込んでいるリアラに聞いてみる
試験に受かったのならアスカと一緒の第二小隊だ
1ヶ月後には俺も城に行くし会うことになるかもしれない
「え? ああ……ニアってのはここで働いてたやつでさ。すっごい足が速いんだぜ! 武器を買った時何度かサービスしてもらったこともあるんだ! あ、でも男にはなぜか厳しかったな……」
「ふーん」
とりあえずニア=女好きのクズ野郎ってことだな
アスカは襲われていないだろうか…………されても返り討ちにしてそうだな
「まあ過ぎたことをいってもしょうがないし、速く武器を買おうぜ!」
さすがリアラ、切り返しが早い
友達がいなくなったのは悲しいが今は武器の方が大事ということだろう
ニアざまぁ
店の奥に行くと棚にさまざまな武器が並んでいた
スモールソード、ブロンズソード、ダガーなどの基本的な剣から斧、槍、矛、メイスなど様々な武器が置いてある
リアラは迷わず槍が置いてある場所に足を運んだ
「むぅ……どれにしよう」
「そんなに悩むのか?」
「当然! 武器の長さ、重さ、切れ味、確かにその差はわずかだけどそのわずかが時には命取りになるんだから!」
こちらを見ずにそう答えたリアラは別のハルバートを手に取る
何か軽々と持ってるけど……実は軽いのだろうか
ふと疑問に思ったので並んでいる中で一番小さなものを手に取ってみる
「うおっ!? ちょ、ギブギブギブギブ重いいいいいぃぃぃぃ!!!」
「うわぁ! 何やってるんだよケンゴ!」
思ったより重かった、かなり重かった……!
リアラが助けてくれなかったら確実に落としてたよ……
「アタシは鍛えてあるから大丈夫だけどアンタは持てないだろ!」
説教されました
その後結局リアラは前に使っていたのと同じようなハルバートを買って店を出た
「なあなあ! 次は服見に行こうぜ!」
「服?」
「ああ! 見たところケンゴそれ以外服持ってなさそうだしさ」
失礼な
前の世界においてきただけで俺は結構おしゃれだぞ
これ以外服持ってないのも事実だがな
「それで服屋はどこにあるんだ」
「服屋は市街区の近くにあるんだ。ここから結構近いぞ!」
そういって歩き出すリアラ
俺はこの街の建物は旅館とギルドしか知らないから素直についていくしかない
「あ、そう言えば」
「ん?」
「すっかり聞くの忘れたけどさ、リアナはどうやって俺の怪我を治したんだ?」
さっきはリアラ達の父親に邪魔されて聞けなかったことだ
妥当なところで薬草か……回復魔法?
「ああ、アタシの家族は回復魔法が使えるんだ! それでケンゴの怪我も治したんだよ! ……まあ、アタシには使えないけどな」
最後の方でリアラが顔を暗くする
「使えないって……なんでだ?」
「グルーラ家で回復魔法が使えるのは第一子息だけなんだよ。どういうわけか知らないけど、光の精霊はごく少数の人間にしか手を貸さない」
「へぇ……」
ていうか回復魔法って光なのか……てっきり水とかでもできるかと思ってた
しかし第一子息……つまり長男か長女にしかつかえないとは
自分だけ光魔法が使えないリアラは自分の場所がほしくてクエストをこなす様になったってことか?
ま、それを聞くのは野暮ってものだな
「あ、ニア!」
突然リアラが走り出した
今ニアっていったか? てことは例の女好きのやろうか
どんな顔だろうと思って見てみると、そこには数日ぶりの顔がいた
「……アスカ!?」
「ケンゴ!?」
「
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