7th
アスカが第二小隊隊長となって一週間がたった
俺は今ギルドに通っている
何故そんなことになったかというと、アスカが隊長になることを決めた後で姫様……アイリス・モンデットに「なんで俺には自分で決めさせてくれなかったんだ?」と聞いたところ「ここで手放すのは惜しいと思ったからです」なんてわけのわからない回答が返ってきた
必死に抵抗していたらせめてもの情けで一ヶ月間の自由をもらえた
金や剣も一応王国から貰っているのだが、暇だったのでクエストを受けてみようとギルドにいってみたんだ
「「あ」」
ギルドに入って第一声
ある人物と目があって同時に声を発した
目の前には忘れもしない、俺を勘違いで空中に転移させたリアラがいた
「よ、よう! よくきたな!」
「よくきたなじゃねーよ……」
俺を見て動揺しているのが丸わかりだ
こいつはこいつで反省しているってことか
「……すまん!」
とりあえずどうしてやろうか考えていると、リアラが両手を合わせて俺に謝ってきた
「勘違いとはいえお前を試験に送り出したりして……でも、わざとじゃないんだ! 本当に!」
「わ、わかったから! もう頭を上げろって、俺はこの通り無事なんだしさ!」
俺が大けがをしたのならともかく五体満足なのにこんな必死に謝られたらたまったもんじゃない
罪悪感に襲われて気がおかしくなりそうだ
「ほ、ほんとか……?」
目をウルウルさせて上目遣いで見てくる
くそ、こいつ……気の強い性格だと思っていたのにいつ俺がギャップ萌えが好きだと気付いた!?
「ホントだから泣くな! 俺はこの通り大丈夫だし気にしてないから!」
「なーんだよかった。いやー、もし怒ってたらどうしようかと思ってた」
さっきの泣き顔が嘘かと思うぐらいケロッとした顔で笑うリアラ
え? ていうか本当に今の謝罪は嘘じゃないよね? 形だけの心のこもってない謝罪じゃないよね?
「え……さっきまで泣いて……え?」
「悪いと思ってたのは本当だからな? でも許してもらえたと思ったら安心してさー」
……ああ
こいつあれか、感情の起伏が激しいというか、喜怒哀楽の表現がはっきりしすぎてるんだ
今のも悪いと思って泣いていたが俺が許して安心したから笑ったのか
「そういやあんた、何しに来たんだ?」
「え? ああ……暇だからギルドに来てみたんだよ。何か面白いことがあるかもしれないと思ってな」
「ならちょうどいいや! アタシのクエストについてくるかい?」
「は?」
「いやー、手頃なクエストがあったから受けようと思ったんだけど2人組じゃないと受けられないらしくてさ。だからちょうどパートナーを探してたんだ」
何度もいうがこの世界の人たちに警戒心はないのか?
初対面のやつに全財産渡したり二人きりになったリクエストに誘ったり……
こっちとしては別に困らないからいいんだけどさ
「ちなみにそのクエストってどんな奴なんだ?」
「これだよ」
そう言ってリアラはどこからか紙を取り出した
クエストの依頼が書かれているんだろうが……相変わらず読めん
「悪いちょっと読んでくれ」
「? まあいいけど」
疑問に思いながらもクエスト内容を上げていくリアラ
今思えば何で文字読めないのにギルドいってみようとか思ったんだろうな……
リアラがいうには、依頼内容はゲスネル15体の討伐
近くの山にゲスネルの群れが麓近くまで下りてきたから念のために討伐してほしい、とのことだ
なぜこれを二人組で受けないといけないのかわからないが、暇つぶしにはちょうどいいだろう
「別に断る理由はないし、行くか」
「ほんとか!? これからよろしくな、えっと……」
「ああ、ケンゴだよ。ケンゴ・ハセガワ」
「リアラ・グルーラ。改めてよろしくな、ケンゴ!」
「ああ」
出会って数分で、俺とリアラはペアを組むことになった
さて、それじゃあさっさとクエスト終わらせてひと稼ぎしますかね
「なにが15体だくそやろおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」
リアラと出会って数十分、俺とリアラは今ゲスネルの群れから逃げている
なにが起こったかというとあの後転移魔法で森にまで来た俺たちはさっそくゲスネルの群れを見つけた
その時は7、8体だけだ、それぐらいなら倒せるし何とも思わない
と言ってもほとんどリアラが倒して俺は1、2体しか倒せてないけどね……
ちなみにリアラの武器は槍……というよりハルバート。まあ簡単に説明するとリーチが長い小さい斧みたいなものだ
それはともかくゲスネルの群れを倒した俺とリアラ
次の群れを探してさまよっていたんだが……
次に顔を合わせたのはゲスネルではなくゲスペルだった
しかもどうやら随分と力のあるようでそのゲスペルひきいるゲスネルの数は70体近く
試験の時に囲まれたゲスネルの数の2倍強だ
それで一目散に逃げ出して今に至る
「やっば全然振りきれない!! リアラって魔法使えないのか!?」
「できるけどあんな大群倒せるほど強い魔法覚えてねぇよ!! そっちは!?」
「皆無!」
「……役立たず」
知ってる!
武器もろくに使えないし魔法も使えない、本当に何でパートナーになったんだろう俺!
例の技を使って武器を作ろうかと思ったがリアラがいる
なんだか面倒事になりそうだしあまり人前で使わないほうがいいだろう
……ま、本当にピンチになったら使うけどな
「それでどうする? このままだと二人とも死ぬぞ?」
「もうしばらく先に行くと細道なってる! そうすれば2、3体ずつじゃないと通れないだろうから地道に倒すしかない!!」
確かに言われた通り最初の時と比べてだいぶ道が細くなってきた気がする
しかし一度に2、3体か……ゲスネルが70、1分間に2体倒せるとして……
35分も戦い続けるのか……いや、そりゃ確かにほとんどリアラが倒す羽目になるだろうけど
「もうそろそろいいだろう! とまれケンゴ!」
リアラの言うとおりに足を止める
確かにこの道の狭さなら一度に大量に襲ってくることはないだろう
これで二人で全部倒すまでがんばるのか……めんどくせ
「よし、まずはアタシが戦うからケンゴは後ろで休んでな。しばらくしたら交代するから」
「おう!……え? それってどうい……」
俺が聞き終わるまえにゲスネルの群れに突っ込んでハルバートを振るうリアラ
え? つまりあれですか? リアラが疲れて交代してきたら俺一人で食い止めろと?
……無理
そうなると能力使うぜ? 絶対に
人前では使わないようにしようって決めたのに初日で破ってしまうじゃん
アハハ、決意破るの早……
リアラが孤軍奮闘して足元にゲスネル達の死屍累々が……
今10体ぐらいか? あと60体……リアラの活躍に期待しよう
あ、また1体倒した
「リアラー、あと何体倒せそうー?」
「んー? この調子だとあと30体ぐらい、多くても40体だと思うー」
意外にも返事が返ってきた
ということはまだ余裕はありそうだな
それにしても間を取ってあと35体倒したとすると、俺が倒さないといけないのは25体か……
これはもうばれるしかないのか……?
一応武器はあるけども……城の一般兵士が使うような安物で凌げとか無理ゲー……
「ケンゴ、交代!」
「はやっ!?」
リアラが息を荒げながら戻ってきた
「アタシは競争とかじゃ最初に飛ばして後でバテルタイプなのさ!!」
「それ自慢げに言うことじゃないから!!」
くっそもう少し打開策を考えたかったのに!
ゲスネルはリアラが初っ端に飛ばしてくれたおかげで半分以上が倒れていた
あと30弱……どうする?
「コソコソするのは好きじゃないが……しかたないか」
極力ばれないように、刀などの大きい武器は控えよう
となると、一番効率的なのは……暗器!
クナイをイメージし、魔力を手の平に集中して作り出す
もちろんリアらからは見えないように
「ッフ!」
ゲスネルの群れに突っ込む際にさりげなくクナイを投げ込む
数本は明後日の方向に飛んで行ったが、目の前の2体の体に数本刺さりゲスネルが怯む
その隙に懐に潜り込み、アスカの見よう見まねでのどを切り裂く
そしてアウェイ
俺にみたいな臆病ものにはお似合いのヒット&アウェイ戦法だ
「もういっちょ!」
さっきの繰り返しでクナイを数本投げ、怯んだところを懐に潜り込み一撃で絶命させる
クナイがなくなればまた作り、一撃で倒せなければもう一度攻撃する
その地道な作業の繰り返しでなんとか10体近くまで減らせた
だが残ったゲスネルのほかに、本命ともいえるゲスペルがいる
ゲスペルはまるで俺たちがどんな戦い方をしているか観察するようにじっと見てくる
仲間が殺されたことに驚きも悲しみも怒りもせずに、じっと見てくる
「リアラ、そろそろ交代いいか!?」
「まかせな! このぐらいなら楽勝だ!」
肩で息をしながらリアラのもとまで戻る
そしてすでに体力を回復させたリアラとバトンタッチ
ゲスペルはともかく、ゲスネル程度ならなんとかなるだろう
今思えばつくづくゲスペル達と縁があるな、俺……
「ほらほらほらほら! この程度かいあんたらぁ!」
視界には重そうなハルバートを軽々と振り回して、嬉々とした表情を浮かべたリアラがいた
とりあえず俺はリアラと力勝負では勝てないことを悟った
実はまだリアラのキャラが不安定だったり……
基本的にキャラはかぶらないようにしてるつもりですけどこれから似てるキャラが出るかもしれません