呆れた砂糖菓子
「見て、金平糖。浅草土産よ」
「コンペイトウかあ……それ、甘いだけであんまり美味しくないんだよね」
「あ、そう。そんなこと言うならあーげないっと」
そう言って君は、水色のそれを一つ摘んで、口の中へ放り込んだ。
「……うん、確かに美味しくないね」
「だろ? だから言わんこっちゃない――」
「ほんとにいらないの?」
君はべーっと舌を出してみせる。そこには溶けて丸みを帯びた砂糖菓子。
……呆れるほど甘美で、蕩けるほど淫靡な誘惑。
僕は抗い切れず、情欲が命じるまま舌を絡ませた。
「もう……まだ昼間だよ?」
君はおどけるように笑ってみせた。
君が蝶で、僕が蜘蛛? それとも――。
甘い匂いに捕らわれて、僕はもう身動きが取れない。
< 了 >