泣き虫陽介君
ねぇ、普通はありえないと思わない?そりゃあ宴会やパーティで出会いを探すってのは普通だと思うの。でも、葬式で運命を変えるような出会いをした人の話なんて、聞いたことあるかしら?
ほとんど誰もいなくなったその場所に、五人だけがいた。そうしてそれぞれ皆、瞬きもしないで私を見つめていた。だけど五人はそこで、出会っただけだった。それぞれの存在を今気づいたように、確認しただけ。
来る日も来る日も、陽介君は泣き続けた。昔から泣きながら家に帰ることの少なくなかった陽介君をなだめるのは私の日課で、いつものように真っ赤な目の陽介君を胸に抱いていたいけれど、今の私では洋介君に触れ目事さえ出来ない。
陽介君の涙は今まで見たどんなものより、悲しく切ない涙を流ししている。
「……お前、いい加減にしろよ。一番泣きたいのはきっと、痛いとか苦しいとか思う間も無く死んじまった有希子さんの方だぞ?」
半端呆れ顔の冬真君が陽介君の隣に突っ立って言う。そう言ってからまた、何か思い出したように下唇を噛んだ。
「分かってる。分かってるけど……これ、止まらねぇんだよ……」
搾り出すような声を出した陽介君は、そうしてギュッと目をつぶった。けれどもその涙は止まることなく、後から後から流れ続けて制服のズボンを濡らした。
「……ごめん」
罰の悪そうな顔で言った冬真君はうつむいて、陽介君から離れていった。そうして家から出ると、トボトボと歩きながら夜の空を見上げる。
「……有希子さん、ごめんね。あいつ、俺じゃ慰められないみたい……」
独り言を言うと、寂しい顔をして俯いた。そうして帰っていく冬真君に、そっと笑顔を見せることも私は出来ないんだって、また胸が痛くなる。
私は本当に恵まれた人生を送ったけど、だけど私は一体、何で死んだの?何のために、生まれてきたのかしら?
私が死んでから数十日。そろそろ四十九日が来て、私は今までみたいにここを彷徨っていられなくなる。そんな頃、陽介君はやっと顔を上げてくれた。
四十九日、また葬式のときのように皆が集まった。そうして再び、五人は最後までその場所を動こうとはしなかった。
今度こそ、五人は出会ったのよね。全員の運命をいっきに変えてしまうような出会いをしたの。だけどまぁ、その時には誰も、そんなこと思ってもみなかったんだけどね。この私でさえも。
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