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我、赤ちゃん生

生後6ヶ月。

俺の異世界生活は、魔法の存在を知ったことで一気に加速した。セレナ母さんが庭で披露した光魔法。あのキラキラした光の粒は、俺の心を鷲掴みにした。前世で散々ラノベやアニメに浸かってきた俺にとって、魔法はまさに夢の産物だ。しかも、母親が使えるってことは、遺伝的に俺もポテンシャルありまくりじゃん! 早く体が成長して、魔法をぶっ放せるようになりたい。


でも、現実は厳しい。赤ん坊の体じゃ、できることなんて限られてる。ミリアに抱っこされて庭に出る日々を繰り返すだけだ。ミリアの関西弁は相変わらずで、「坊ちゃま、今日はお日様ポカポカやで~。魔法の練習みたいに見てるん?」なんて言ってくる。俺の視線がセレナ母さんの手に集中してるのに気づいてるのか? エルフの観察力、侮れない。

この頃、俺は心の中で魔法のイメージトレーニングを始めた。ラノベ主人公みたいに、赤ん坊のうちから魔力を感じ取ろうって魂胆だ。目を閉じて、集中。体の中を流れる何か――魔力の流れみたいなのを想像する。最初はただの妄想だったけど、ある日、ふと温かい感覚が胸の奥から湧き上がってきた。気のせい? いや、絶対魔力だ! 興奮して「あー! うー!」って叫んだら、ミリアが「お腹すいたんか? ミルクすぐ用意するわ!」って勘違い。くそ、歯がゆい。


双子の妹、リリアの存在も大きくなってきた。青髪のこいつ、泣き声は相変わらずデカいけど、俺の隣で寝てる姿は可愛い。時々、手を伸ばして俺の指を握ってくるんだ。赤ん坊同士のコミュニケーションだけど、前世の俺にはこんな温もりなんてなかった。芽依のことを思い出すと、胸が痛む。あの時、もっと素直になってたら……。いや、過去は振り返るな。今は、この家族を大事にしよう。

父親のアークは、仕事で忙しいみたいで、週に一度顔を見せるくらい。来ると、俺とリリアを抱き上げて、「健やかに育っているな」って低い声で言う。初日のあの日本語の質問が頭から離れないけど、深く考えないようにしてる。3年後って言ってたし、それまで待てばいいさ。

生後8ヶ月。

ようやくハイハイができるようになった! これは革命だ。ベッドから抜け出して、部屋を探索。煉瓦の壁に触ってみたり、窓辺の陽光を浴びてみたり。視界が広がって、世界が一気に面白くなった。

ミリアは俺のハイハイを見て大喜び。「坊ちゃま、えらいわぁ! もうすぐ歩けるようになるんちゃう?」って。彼女の緑髪が揺れるたび、エルフの美しさにドキドキする。前世の俺なら、こんな美女に世話されるなんて夢みたいだけど、現実はオムツ替えの毎日。プライドがズタズタだ。

魔法のトレーニングも進化させた。ハイハイしながら、心の中で「魔力集中!」って唱えてみる。すると、指先から小さな光の粒子がチラッと出た! マジで! セレナ母さんが気づいて、「あら、ライネ。あなたも光の適性があるのかしら?」って微笑む。母さんの魔法は光属性らしい。俺も遺伝したのか? 興奮してハイハイのスピードが上がったけど、転んで顔面から床に突っ込んだ。痛い……赤ん坊の体、脆すぎる。


リリアもハイハイを始めた。こいつ、俺より速いんだよな。競争みたいになって、部屋中を追いかけっこ。ミリアが笑いながら見守ってる。「双子さん、ほんま仲良しやなぁ」。前世で友達と遊んだ記憶が蘇る。あの頃の俺は、田舎で無邪気だったのに、高校で潰れた。こっちの世界では、絶対に同じ過ちを繰り返さない。


父親が久々に来て、俺の魔法の片鱗を見た。「ふむ、早いな。セレナの血か」って呟く。目が鋭くて、ちょっと怖い。でも、頭を撫でてくれる手は優しい。掛け軸の「安産祈願」は、まだ部屋に飾られてる。あれの謎は、3年後か。


生後10ヶ月


革命だ!技術革新!もう文明開花だ!

俺、頑張ったよ。うんほんと…

ついに、歩けるようになった! ふらふらだけど、部屋を歩き回れる。自由度が爆上がりだ。ミリアに手を引かれながら、庭を散歩。噴水の水しぶきがキラキラして、魔法みたい。セレナ母さんが庭で花を育ててるんだけど、それも魔法で加速させてるらしい。花が一瞬で咲くのを見て、俺の目が輝く。


言葉も少しずつ出るようになった。「ママ」「ミリア」「リリア」くらい。心の中ではフルセンテンスで喋ってるのに、口が追いつかない。歯がゆいけど、早めに言語をマスターするチャンスだ!ミリアの関西弁を真似して、「ええわ」って言ってみたら、彼女が爆笑。「坊ちゃま、その言葉は似合わへんわぁ!」って。エルフの笑顔、罪深い。


魔法の練習は本格化しようと思う。まぁ9割以上は独学で頑張っている。だがたまに、セレナ母さんが、俺を抱きながら簡単な光魔法を教えてくれる。「魔力をイメージして、指先に集めてごらん」。俺、心の中で集中。すると、小さな光球が浮かんだ! 母さんが喜んで、「素晴らしいわ、ライネ。あなたは天才ね」。前世の俺は勉強で褒められたことあったけど、こんな純粋な喜びは久しぶり。胸が熱くなる。


リリアも魔法の兆しを見せ始めた。リリアはどうやら、炎の魔法が使えるらしい。手を叩いたら火花が出ていてびっくりした。母さんが「リリアに魔法はまだ早かったかしらね〜」なんてミリアと話していた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

時が経つのは早いものだ。もうこっちにきて1年が経った。

今日は1歳の誕生日だ。パーティーとかプレゼントあるのかな、なんて楽しみにしてたら


誕生日の日には何故だかすごい沢山人が来ていた。身なりを見るに全員ザ・貴族っていう感じの正装を着た人ばっかりだ。「お子様方ののお誕生日おめでとうございます」だの「プレゼントを持ってまいりましただの」ひっきりなしに母さんとアークのところに家の大広間で押し寄せていた。

リリアと俺はというとミリアと一緒に隣の部屋で、甘い離乳食的なのを食っていた。1歳になりようやく固形物を口にさせてもらえた。はぁ米が恋しい。


大広間の方に耳を傾けていると「子供達を結婚させませんでしょうかねぇ?旦那」とかいう不穏なワードが聞こえてきた。

まじですか、もう(よわい)1(ねん)という(とし)で嫁さん候補ができそうになっていたのである。

え〜貴族生後6ヶ月。のゴタゴタとかまじ勘弁よ

まあそのあとまあアークが断ってくれたから結構ほっとした

というか、子供の一歳の誕生日というだけでこれだけ人が集まるうちの家って、まじで大貴族なのかもしれない。


貴族たちが全員帰った頃にはもう夕方になっていた。夕方、貴族どもがようやく引き上げた。広間は静かになって、残ったのは甘い菓子の匂いと、俺の耳に残る「結婚」の残響だけだ。1歳で婚約とか、冗談じゃない。貴族社会の闇は深い。俺の読んでたラノベでも似たようなゴタゴタあったけど、俺は絶対に巻き込まれない。リリアは妹だし、守る対象だ。

ミリアが俺とリリアを抱き上げて、ゆりかごに戻す。「坊ちゃま、今日はえらい人ごみやったなぁ。疲れたやろ?」って、関西弁で囁く。エルフの腕、相変わらず心地いい。リリアはもうぐっすり。青髪がふわふわ揺れて、可愛い。俺はまだ興奮冷めやらず、目を閉じて今日の出来事を反芻する。

誕生日パーティー、予想外の規模だった。プレゼントの山。宝石の玩具、魔法の絵本、果ては小さな剣のおもちゃまで。セレナ母さんが「みんな、期待してるのね」って微笑んでたけど、俺にとっては何が何だかさっぱり。

アーク父は、来賓を相手に余裕の笑顔。威厳が漂ってる。うちの家、間違いなく上流貴族だ。王国の名家、ってとこか。

夜、家族だけでケーキみたいな菓子を食べる。セレナ母さんが魔法でろうそくを灯す。キラキラして、幻想的。俺、初めての言葉で「ありがとう」って言ってみた。口がもごもごだけど、伝わったみたい。母さんが目を潤ませて、「ライネ、おめでとう」って。胸が熱くなる。前世の誕生日なんて、コンビニケーキ一人食いだったのに。

アークが、俺に木製の小さな杖をプレゼント。「お前の魔法の才能に、ふさわしい」って。心の中でガッツポーズ。チート能力じゃないけど、遺伝のポテンシャルは本物だ。


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 1歳と2ヶ月。

もうすっかり誕生日気分は過ぎた頃合いだ。アークからもらった木製の杖は、ずっと身につけていた。

長さは30センチくらいで、俺の小さな手にもしっくりくる。木の温もりが心地よくて、握ってるだけで魔力が活性化される気がする。「坊ちゃま、また杖握りしめてはるんですか?」ミリアが苦笑いしながら俺を見てる。


そりゃそうだ、起きてる間はずっと杖を手放さないからな。食事の時も、オムツ替えの時も、頑なに離さない。前世でスマホ依存だった俺が、今度は杖依存になってるとは。「うー、あー!」俺は杖を振り上げながら、必死にミリアに説明しようとする。だが当然、赤ちゃん語では伝わらない。

歯がゆい。心の中では「これは魔法の練習に必要不可欠なアイテムなんだ!」って叫んでるのに。最近、魔法の独学が本格的になってきた。セレナ母さんが庭で魔法を使ってるのを見て、見よう見まねで練習してる。


母さんに教えてもらうわけじゃない。ただひたすら観察して、自分なりに理解して、真似してみる。庭の東屋で、一人でこっそり練習。「魔力をイメージして、指先に集めて」心の中で自分に言い聞かせる。前世で読んだラノベの知識を総動員だ。胸の奥で、ほんのり温かい感覚。それが徐々に腕を通って、指先に向かう。杖の先端が、ほんのり光る。


やった!一人で成功した時の喜びは格別だ。誰に褒めてもらうわけでもない。でも、自分で掴んだ成果だから、達成感がすごい。リリアも魔法の兆しを見せ始めた。こいつも俺と同じで、母さんの魔法を見て独学で覚えてるらしい。「ほわー!」リリアが手をパチンと叩くと、小さな火花が散る。


炎系の魔法のようだ。双子だけど、魔法の属性は違うのか。面白い。「リリア姫、火の魔法は危険やから、お母様に言わんとあかんで」ミリアが慌てながら注意する。でも、母さんには報告しないでほしいな。異世界物あるあるの忌み子とか言ってどっか見捨てられるのはいくら俺でも心が痛い。


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1歳と4ヶ月。言葉がかなり流暢になった。二語文くらいなら普通に話せる。


「ミリア、だっこ」

「ママ、きれい」

「リリア、あそぼ」周りの大人たちは俺の言語習得の早さに驚いてる。まぁ、中身は、大人だからな。むしろ遅いくらいだ。でも問題は、関西弁が移ってることだ。「ええで〜、ライネくん」なんて、ミリアの真似をして言ったら、セレナ母さんが困った顔をした。


「ライネ、もう少し丁寧な言葉遣いを覚えましょうね」そうか、貴族には貴族の話し方があるのか。知らんけど。前世の俺は田舎の一般家庭だったから、そんな作法は知らない。でも、ミリアの関西弁、なんか心が和むんだよな。堅苦しい敬語より、親しみやすい。


「坊ちゃま、お嬢様の真似したらあかんで。ワイは使用人やから、この話し方でええんや。でも坊ちゃまは将来は英雄様やからな」ミリアが優しく諭してくれる。だが将来英雄という言葉を言って少し悲しそうな顔をしてたのは気のせいだろうか。将来のお殿様って、そんな大層な身分なのか、俺。

でもやっぱりなんか引っかかる。俺の身分について隠してることがあるんじゃないか?あの父親。

あいつの仕事というものを生まれて一回も聞いたことも見たこともない。子供に関係ないことと思われているのか。それとも…やっぱり考えるのはもうちょっと観察してからにしよう。こういうのは慎重な方がいい。



そして俺の魔法の独学も進歩してる。母さんの光魔法を見て、少しずつコツを掴んできた。光の球体を作るだけじゃなく、形を変えることもできるようになった。星型、ハート型。前世のアニメやゲームの知識が役に立つ。でも、全部独学だから、正しいやり方かどうか分からない。もしかしたら、変な癖がついてるかもしれない。


まぁ、今のところ問題はなさそうだし、このまま続けてみよう。1歳と6ヶ月。歩くのが完全に安定した。庭を駆け回れるまでになった。リリアと追いかけっこするのが日課だ。「坊ちゃま、お嬢様、転ばんよう気いつけや〜」ミリアが遠くから見守ってくれる。庭は広くて、池もある。色とりどりの花が咲いてて、魔法で管理されてるのか一年中綺麗だ。噴水もあって、水が踊るように舞い上がる。この生活、最高だな。


前世は狭いアパートの一室で、ゲームとラノベだけの生活だった。外に出るのも面倒で、引きこもり気味だった。でも今は違う。広い庭、魔法という夢の力。転生して良かった、と心から思う。ただ、一つだけ気になることがある。


時々、アークが俺を見る目だ。何か、測るような視線を感じる。愛情はある?のかな

でも、それ以外に何か別の感情も混じってる気がする。

期待、というより、もっと重いもの。責任?義務?よく分からないけど、少しだけ不安になる。


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1歳と8ヶ月。


魔法の独学レベルが格段に上がった。光の球体を複数同時に操ることができるようになった。5個、6個と数を増やしていく。母さんが庭で魔法を使ってるのを、遠くからこっそり観察。手の動き、魔力の流れ方、呪文の口の形。

全部覚えれたらよかったのだが全く、何言ってるかわからねぇ。多分呪文かなんか言ってるのだろうが俺はスパイでもなければ刑事でもないので口の形で言ってることを推察するのは結構難しい。ついでに言葉がまだ上手く話せないから、魔法は気持ちとイメージで発動させてる。


ある日、一人で庭の隅で練習してた時、小さな光の蝶々を作ることに成功した。ひらひらと舞う光の蝶。美しくて、思わず見とれる。「すげー…俺、天才かも」心の中でガッツポーズ。光ってる蝶を見ると文明破壊を思い出すのは俺のオタク趣味なのだろうか。いずれはこの蝶をデカくして黒歴史〜なんてやってみたいものだ。


でも、この成果を誰にも見せられないのが残念だ。独学してることがバレるかもしれないし。リリアも独学で頑張ってる。火の玉を動かして、空中でくるくる回したりしてる。「リリア、すごいな!」俺が褒めると、リリアが嬉しそうに笑う。「見て見て!」と俺にリリアが火の粉を散らして、小さな花火みたいにする。兄妹で切磋琢磨。でも、お互いに独学だから、変な方向に成長してるかもしれない。まぁ、楽しいからいいか。


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1歳と10ヶ月。


言葉がかなり上達した。複文も話せるようになった。

「ミリア、お花きれい」

「ママ、今日いいお天気」

「リリア、一緒に遊ぼう」

でも、相変わらず関西弁が混じる。「ええなぁ、このお菓子」なんて言ったら、またセレナ母さんに注意された。貴族の作法難しいンゴ。


魔法の独学も、新しいレベルに到達した。前世で見たアニメの魔法をイメージして、試行錯誤で編み出した。独学だからこそ、既成概念にとらわれない発想ができるのかも。

ある日、母さんが俺の魔法に気づいた。庭で一人で練習してた時、うっかり大きな光の球を作ってしまった。

「あら、ライネ?」

振り返ると、母さんが驚いた顔で立ってる。やばい、バレた。

「ライネ、その魔法、誰に教わったの?」母さんが優しく聞いてくる。

「えーと…一人で…」正直に答えるしかない。

「一人で覚えたの?」母さんがびっくりする。「すごいのね、ライネ。とても上手よ」怒られるかと思ったけど、褒めてもらえた。「でも、一人で練習するのは危険よ。今度から、ママと一緒にやりましょうね」

それ以降、週に一度、母さんと一緒に魔法の時間を持つことになった。

この体、マジ多彩なり。

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