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第十一章

「三日間、ありがとうございました!」


 両手を体の横に添え、ブライは深くお辞儀をした。隣に立つルシエラとマシャドも、それに続く。


「ええんやで、詩織の友達は大歓迎やさかいに」


「またいつでも来てよぉ」


 玄関の前に立った詩織の祖父母が、三人に向かって手を振る。その足元ではペチが、名残惜しそうに尻尾を振っていた。


「じゃあちょっと行ってくる! 晩御飯までには帰るからねー!」


 そう言って詩織は助手席に乗り込んだ。


「ご協力ありがとうございました!」


 運転席の窓から顔を出した浜崎が、手を振りながら言った。


「一時間くらいでしたっけ?」


「そっすね、早めに着いて現地で待とうかなと。みなさんは忘れ物とか大丈夫っスか?」


 浜崎は振り返り、後部座席に乗り込んだ三人に向け問いかける


「バッチリだよ」


「同じく」


「俺はそもそも預かってもらってるからな」


 ブライは装備を積み込んだトランクの方を向き、ルシエラは手元の杖を大事そうに抱えつつ、マシャドはドアにもたれかかりながら、それぞれ答えた。


「おっけーっスね? んじゃ、行くっスよー」


 そして浜崎はサイドブレーキを降ろし、シフトレバーに手をかける。五人を乗せた車はゆっくりと、祖父母の家をあとにした。




 麓に待機していた機動隊員に連れられ、五人が辿り着いた山中。なんの変哲もない森の中で、松島は一人佇んでいた。


「室長、お連れしました」


「ご苦労さん」


 松島に彼らを任せ、隊員は踵を返した。


「どうもみなさんお揃いで……?」


「松島さん。最後までお世話になります」


 軽く頭を下げたブライのその後ろ。ルシエラに借りた杖に縋り付くように、詩織は立っていた。


「詩織ちゃん、大丈夫っスか……?」


「大丈夫……じゃないです……」


 彼女はそのままずり落ちるように、膝から地面に座り込んだ。


「そこそこ険しい山だったし、無理もないわ」


「よく一人で歩き抜いたな! 偉いぞ!」


 ルシエラとマシャドに労われ、詩織は気の抜けた笑顔で弱々しく笑っていた。


「まあ、開放が予測される時間までもう少しあるんで、みなさんもその辺で休んでてください」


 松島に促され、地表に露出した木の根や岩の上など、皆が思い思いの場所に腰を下ろす。日も傾き、木の生い茂る森の中は涼しく、湿度の高さもあまり気にならないほど過ごしやすい。喧しいアブラゼミの大合唱に混じって、ヒグラシの声がいくつか聞こえてきていた。


「ウチらは軽装だからなんともないっスけど、お二人はよくそんな恰好で山登りができるっスね」


 浜崎が不思議そうに、ブライとマシャドの装備を眺める。


「んー、普段からこの格好だしね」


「もう慣れちまったな」


 胸と腰、手と足にそれぞれ鎧を身に着けた二人。マシャドは背中に大きな戦斧を担ぎ、ブライは腰に剣を携えている。


「それがこの前言ってた剣ですかね」


 松島がブライの腰元を覗き込みながら言った。


「ええ、そうです。確認してみますか?」


「いえいえ、扱い方もわかんないんで遠慮しときますよ」


 苦笑を浮かべながら、松島は軽く首を横に振る。


「万が一に備えて機動隊にも待機させてはいますが……お二人に任せたほうがよさそうですかね?」


「ああ、魔物……外異獣ですか? そうですね、僕らに任せてもらえれば」


 ブライは口角を上げ、自信たっぷりにそう答えた。


「ひゅー、頼もしいっスねぇ」


「あたしは手伝えないから、どんな化け物が出てこようが二人でなんとかしてよね」


 浜崎の茶化しやルシエラの煽りにも、ブライは動じず笑顔のままだった。




「……待って、何か……」


 突然、ルシエラさんが立ち上がった。


「妙な感覚ね……穴はどこに開くって?」


 キョロキョロと辺りを見渡しながら、彼女は松島さんに問いかける。


「そうですね、ちょうどあの岩の辺り、目印に赤い塗料が……!」


 松島さんが指差した先に、てっぺんが赤く塗られた岩が見える。その周辺の景色が、まるで水面に反射しているかのように歪んで見えた。


「前兆を確認、観測開始」


 懐から取り出したトランシーバーを耳に当て、松島さんが呟いた。


「始まったっスね」


 ゆらゆらと、蜃気楼のように揺らめいていた景色は、やがて渦を巻くようにぐるぐると中心部へと集まっていく。


「あ、あれが『風穴』……?」


 気付けばそこに、真っ黒い穴が浮かんでいた。


「浜崎」


「うっす。みなさん、行きましょう」


 松島さんに指示され、歩き出した浜崎さんに私たちはついて行く。


「平均開放時間……穴が開いてる時間はだいたい六分くらいっス。その間に……」


「そ、そんなに短いんですか……!?」


 どうしよう、まだ心の準備が……。


「そうか、そりゃ急がねえとな!」


 そう言って、マシャドさんはずんずん進んでいく。そして穴の前に立つと、こっちを振り返った。


「ハマサキ! いろいろと迷惑かけてすまなかった! シオリ! お前のおかげでこの数日間、退屈せずに済んだぜ! お前らのおかげで、俺も仲間も無事に帰ることができる。二人とも、本当にありがとう!!」


 背負った斧を手に取り、頭上に掲げながら、彼は叫んだ。


「あは、カラッとした人っスねぇ……。いいんスよ! ウチも楽しかったっスから!」


 大きく手を振る浜崎さんに、私も続いた。


「わ、私も! すごく楽しかったです! ありがとうございました!」


 それを見たマシャドさんは白い歯を見せ、弾けるような笑顔で笑っていた。


「……っと。ルシエラさん、杖、お返ししますね」


 私は借りていた杖を渡そうと、隣のルシエラさんの方を向いた。けれども彼女はなぜか顔を背けたまま、そこに立ち尽くしていた。


「あ、あの、大丈夫……ですか?」


 心配で顔を覗き込もうとしたとき、彼女は私に向かって手を突き出した。


「大丈夫……大丈夫だから……」


 彼女の声は少しだけ震えていた。


「ほんと、あっさりしてるわよね、あいつ……」


 袖で目元を隠しながら、彼女はゆっくりと私に近付き、震える手で杖を――。


「――っ! シオリ!」


「る、ルシエラさん!?」


 突然、私は彼女に抱きしめられた。


「ありがとう……! あなたのおかげで、私たちは救われたわ……! あなたのおかげですごく楽しかった……! ありがとう……! 大好きよ、シオリ……!」


 涙をこらえながら、彼女は懸命に声を上げる。


「うっ……! ふぐぅ……! わ、私もでずぅ……!」


 もう……せっかく笑顔で別れようと思ってたのに……。


「ひぐっ……! それから、ハマサキも……! 嫌なことばっかり言ってごめんなさい……! ほんとはすごく楽しくて……!」


「あはは……わかってるっスよ。ウチも、すっごく楽しかったっス」


 目尻に浮かぶ涙を指で拭いながら、浜崎さんは優しく返した。


「お別れは寂しいけど……あたしはきっと、二人のこと忘れない……!」


 ゆっくり、体を離しながら彼女は言った。


「二人とも、元気でね! お別れの言葉は言わないから!」


 叫びながら、彼女は穴の方へと走っていった。


「最後の最後に特大のツンデレ食らっちゃったっスねぇ……」


「彼女もやっと素直になれたみたいだね、よかったよ」


 その背中をほほえましそうに見つめながら、ブライさんが言った。


「さてと……ブライさん、穴の件なんスけど」


「わかってるよ。向こうからこっちに来ちゃわないように、探し出して塞げばいいんだよね」


「すみませんがお願いするっス」


 軽く頭を下げた浜崎さんに、ブライさんは頷く。


「……浜崎、ありがとう。キミがずっと手伝ってくれてたから、僕らはこうやって三人揃って向こうに戻れる。感謝してもしきれないよ」


「あーいいんスいいんス。それが仕事……でもあったっスけど、本当はみなさんと一緒にいたかったから、楽しかったからやってただけなんス。だから結局、お礼なんていらないってことっスね!」


 いたずらっぽく、彼女は笑った。


「……ありがとう、それから」


 彼がじっと、私の方を見つめている。


「詩織、キミに見つけてもらったから、キミがずっとそばにいてくれたから、僕らはこうやって無事に帰ることができる。二人を助けられたのも、記憶を取り戻せたのも、全部キミのおかげだ。ほんとうに、ありがとう」


 そう言って彼は微笑んで、少しだけ頭を下げた。せっかく止まりかけてたのに。またこみ上げてきた涙を必死にこらえ、私は深呼吸をした。


「いいんです。私も、ブライさんと一緒にいるのが楽しくて、勝手について来てただけですから」


 微笑んだ私を見て、浜崎さんが俯きながら振り返った。すれ違いざまに私の肩にそっと触れ、そのまま彼女は松島さんの方へと向かった。


「……まだまだ言い足りないけど、ごめんね、もう行かなきゃ」


 名残惜しそうに私を見ながら、彼はゆっくり振り返った。穴の方へと向かって一歩、また一歩。


「ブライさん!」


 彼の名前を呼んで、私は覚悟を決めた。




 不思議な人だった。声をかけられるたびに、体に電気が走ったような感覚があって、なのにすごく安心できて、温かくて。じっと見つめられると、みるみるうちに自分の体温が上がっていくのがわかった。火照る顔を隠すので必死だった。彼の隣にいるだけで、ふわふわとどこかに飛んで行っちゃいそうなほど、浮かれているのが自分でもわかっていた。


 生まれてきて初めての感情で気付くのに時間がかかったけど、よく考えてみればすごく簡単なことだった。私は彼が好きなんだ。でも気付いたときには手遅れだった。彼にはもう、お似合いの人がいたから。


 私が気持ちを伝えたら、彼はなんて言うかな。困った顔でありがとうなんて、そう言って微笑んでくれるのかな。もうお別れなのに。言ったってどうにもならないのに。『あなたのことが好きな私を、どうか忘れないでいてください』なんて。ただ困らせるだけなのに、それでも彼は優しく微笑んで、自分勝手な私をずっと忘れずにいてくれるんだろうな。


 彼の心の中に居られるなら、わたしはそれでもいい。邪魔者でも、お荷物でも構わない。ただ彼の中で、ずっと消えずに残っていたいだけなの。




――蓋をしていた自分の心。中には白くて小さなつぼみがあった。そっと手に取ると、ゆらゆらと嬉しそうに揺れている。私にはどうすればいいかわからない。彼に渡せば、綺麗な花を咲かせてくれるのかな――




「さよなら、お元気で!」


 精一杯の笑顔で、私はそう言った。


「――うん! ありがとう! 詩織も元気でね!」


 いつもみたいに優しい笑顔で、彼はそう言って穴の方へと走っていった。待っていた二人と一緒に、穴の中へと足を踏み入れながら、こちらに向かって手を振る彼に、私は笑って手を振り返していた。




 その場に泣き崩れる私を、浜崎さんが支えてくれた。


「わたし、言えなかった……! 好きって! 言えなかった!!」


 どこまでも優しい彼に、私の気持ちを押し付けたまま別れるだなんてこと、できなかった。彼にはなんの憂いもなく、ただ幸せになってほしかったから。


「詩織ちゃんは……十分頑張ったっス……! ウチが見てたっスから……!」


 泣きわめく私の頭を撫でながら、浜崎さんが慰めてくれていた。うっとおしかったセミの鳴き声ですら耳に入らないほどに、私は大声で泣き続けていた。




――自分の本当の気持ちに、何度も何度も謝りながら私は、ゆっくりと手の中のつぼみを握りつぶした――




 見覚えのない森の中、僕らは立ち尽くしていた。


「うーん……ここはどこだろう……?」


「植生は南の方っぽいけど、あんた場所わかんないの?」


「見覚えはある気がしてんだがなぁ……」


 マシャドが頭を掻きながら、周囲を見渡している。


「ま、無事戻ってこれてることを祈って、気長に探索でもしようか」


 焦りはなかった。呼吸するたびに体に力が満ちて、魔力が回復していく感覚があったからだ。


「だな! 適当に歩いてりゃそのうち抜けられるだろ!」


「はぁ……全く、お気楽なんだから」


 そうして僕らはまた歩き出した。木々の向こうから見える夕日が、僕らをまぶしく照らし出していた。




「……気になるんでしょ? ユウサのこと」


 ずっとそわそわしていたマシャドに声をかける。


「なぁ!? ……んでわかったんだ……?」


「王様への謁見中もそうだったし、バレバレだよ。こっちはもういいから行ってあげな?」


 報告も済ませたし、あとは騎士団に顔を出すだけだ。


「す、すまん、ありがとう! じゃあまた後でな!」


 そう言って、すごい速度で彼は走り去った。


「……あの子も幸せ者ね、こんなに想ってくれる人がいるなんて」


 そうだね、と呟き、ふと彼女の方を見る。彼が走り去った方をうらやましそうに眺める彼女に、僕の緊張はどんどんと増していった。団長室にたどりつくまで、僕らは無言のままだった。


「し、失礼します!」


 裏返った声をかき消すように、慌てて扉を開けた。


「……誰もいないわね」


「団員もほとんど見かけなかったし、遠征にでも行ったのかな」


 二人だけの部屋の中、後ろ手に扉を閉めた。


「どうするの? 適当にどこか――」


「ルシエラ、大事な話があるんだ」


 彼女の言葉を遮り、僕は覚悟を決めた。


「……な、なによ話って……!」


 身構えるように後ずさる彼女は、頬を真っ赤に染め、僕から目を逸らした。


「……出会ったころから、キミはまっすぐで、意志が固くて、誰よりも負けず嫌いだった」


「それ褒めてるの?」


「もちろん。そして僕はそんなキミを、ずっと近くで見てた。キミからずっと、目が離せなかったんだ」


 心臓が今にも口から飛び出しそうだ。でも言わなきゃ。無事に帰れたら伝えようって、決めていたことだから。


「……ルシエラ、僕は――」


「ちょ! ちょっと待って!」


 僕の精一杯の勇気が遮られてしまった。


「い、今なの!? あたし、心の準備が……!」


「そんなの、僕だってできてないよ! それでも、言わなきゃだから……!」


 胸に手を当てあわあわと狼狽える彼女の目を、僕はじっと見つめる。


「僕は、キミが好きだ。キミさえよければ僕と、結婚してくれないか」


 そう言い切って、大きく息を吸い込んだ。彼女の顔は、俯いていて見えなかった。


「……あたしなんかで、ほんとにいいの?」


 震える声で呟いた彼女に、僕は頷いた。


「キミがいいんだ。キミだからいいんだ」


 力強く答えると、彼女はゆっくり近付いて、僕の胸に頭を預けた。


「もう……あたしが言うつもりだったのに……」


「そ、そうだったんだ……先に言えてよかった」


 そっと彼女の背中に腕を回し、恐る恐る抱きしめた。驚いたのか、彼女の体がビクッと、少しだけ跳ねた。


「……まったく。あんたは昔から、勝手なんだから」


 そう呟き、顔を上げた彼女と目が合った。吸い込まれるようなその瞳に見とれていると、彼女は不意に目を閉じる。互いの鼓動を感じながら、ゆっくりと顔を近付け――。


「ブライ! ルシエラ! いるか!?」


「どわあああ!!」


「なあああ!!」


 跳び上がるように、僕らは叫びながら体を離した。


「な、なんだよマシャド! おどかすなよ!」


「すまん! だが一大事なんだ! 開けてくれ!!」


 耳まで真っ赤になったルシエラがその場にしゃがみ込んでいる。歯を食いしばりながら、僕は扉を開けた。


「こんなときに何の用事だよ……あれ?」


 そこには、ユウサをお姫様抱っこしたマシャドが立っていた。


「ふ、二人ともおかえりなさい……」


 引きつった顔で手を振る彼女をよそに、マシャドが口を開いた。


「俺たちに! 子供ができたぞ!!」


「……はぁ!?」


 あっけに取られる僕の後ろの方で、ルシエラが驚きの声を上げた。


「真っ先にお前らに伝えたくてよ! 居ても立っても居られなくてな!」


「そ、それはおめでとう……だけど、ユウサの体調は……?」


「おお、そうだった! これから研究院に話を聞きに行こうと思ってたんだ! それじゃあまた後でな!」


 頬を染め、申し訳なさそうな顔のユウサを抱えたまま、彼はまた走り去っていった。


「……なんなのよあいつは!!」


 頭を抱えながら、ルシエラが叫んでいる。


「まあ、あいつらしくていいんじゃないかな、いろいろと……」


 雰囲気もなにも無くなってしまった部屋の中で、それでも僕はぼーっと喜びを噛み締めていた。




「ただいま、アレット」


「おかえり、ブライ」


 結局、アレットに会えたのは日が落ちてからだった。新兵の訓練で北の森に行ってたらしい。顔を合わせるなり人目も気にせず抱きしめられたけど、悪い気はしなかった。


「どうだった? 魔王は」


「強かったよ、今までのどの魔族よりも」


 リビングで二人、テーブルを挟んで向かい合いながら、久しぶりの会話を楽しむ。


「でも一番苦戦したのは、その後かな」


「へえ、魔王を倒したってのにまだ何かあったんだ?」


 彼女の柔らかな微笑みを見ていると、やっぱりすごく安心する。


「大変だったんだよ……いろいろとね」


「えーなんでもったいぶるの? 教えてよぉ」


 だから彼女にも、きちんと気持ちを伝えておかなきゃ。


「……ねぇ、アレット。僕の母親になってくれない?」


 ひどく驚いた顔で、彼女は固まってしまった。


「僕が生きてこられたのは、アレットが僕の面倒を見てくれたからだって、ずっと思ってる。そんな優しいアレットのことを、僕はずっと母親みたいに思ってた。だから」


 スラスラと、彼女への想いが溢れ出てくる。


「僕の、ほんとの母親になってほしいんだ」


 黙って僕を見つめていた彼女の頬に、涙が一筋流れ落ちた。


「……嬉しいなぁ、そんなこと言ってもらえるだなんて。夢みたいだよ」


 笑顔のまま涙を流し、彼女は顔を伏せた。


「いいのかなぁ、こんなに幸せで……。こんなに……」


 ポタポタと、テーブルの上に涙が落ちる。一つ大きく深呼吸をして、涙を拭いた彼女は顔を上げ、またニッコリと笑った。


「ルシエラちゃんでしょ。内緒にしてって言ったのに」


「あー……。まあでも、彼女に聞かなくても言うつもりだったよ?」


「ほんとかなぁ」


 疑う素振りを見せる彼女に、僕もつられて笑顔になる。


「それで、結局なにがあったの?」


「ああ、そうだね。長くなるかもしれないけど、いい?」


「もちろん。たくさん話、聞かせてね」


 そうやって笑い合って、僕らは本当の家族になっていくんだ。


「母さん、あのね」

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