木と規則
小さな国があった。一つの村ほどの大きさで、住民も少ない。ある日、国王が言った。
「この国には規則がない。自由なのはいいが、何かなくては国の未来に影響するだろう」
「おっしゃる通りです」
国王は、さっそくお触れを出す。国民は内容を聞いておどろき、反抗もしたが、やがてその規則に順応していった。しばらくの年月がたち、国王も死期が近付いてきた。ある日、秘書に告げる。
「わしももう長くはない。むすこに後を継いでもらうつもりだが、一つ約束がある」
「何でしょう」
「庭にある、あの木を大切にしてくれ」
「よくわかりませんが、なにかあるのでしょうね。わかりました。そうします」
「たのんだぞ」
そう言い残して国王は息絶えた。壮大な葬式が行われ、国民は大いに悲しんだ。そして、また長い年月が過ぎる。国王のむすこである現国王も、年をとってきた。ある朝、外を見て言う。
「私が即位してからというもの、特に事件はなく、平和だった。それも、あの木のおかげなのだろうか…」
「そうでしょう」
秘書が相槌を打つ。もちろん、先代の秘書ではなかった。
その国王も死に、またそのむすこが即位をした。ある朝、一人つぶやく。
「あの規則は、やはり妙なものだ。植物を大切にするなど…。環境を大切にするのはいいが……」
国王は外を見る。前まで平和だった国も、今では散々なものとなっていた。それは植物に金をはたき、不況の中食べ物がなくなってしまったから…。
「私もまだ若いが、じき餓死をするだろう。しかし、植物は大切にしなくては…。それで、この国に大きな事件が起きないのならば……」
国王が死に絶えた城の庭では、規則により大きく育った国の木が枝を広げて、立派にそびえていた。




