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陰陽の龍  作者: aqri
キノクニ様とやらがおりまして
6/23

1 地上にて

 ガシャーン、と大きな音と共に「食い逃げだ!」と叫ぶ声。なんだ? と誰もが振り返る中、三人の男が飯店から飛び出してきた。三人はバラバラの方向に走っていく。店主は追いかけようにも誰を追うか迷ってしまって動けない。

 驚いて固まっている周辺の人たちをなぎ倒すように押しのけて走っていく男たち。その中の一人が目の前に子供が歩いているのを見つけ叫ぶ。


「どけやクソガキ!」


 次の瞬間、男はポーンと宙を舞っていた。その様子を他の人たちは目を丸くしてあんぐりと口を開けて見つめてしまう。まるで大道芸を見ているかのように、本当にきれいに放射線を描いて空を飛んだのだ。男は受け身を取れずそのまま地面に叩きつけられた。


「誰がクソガキだよ、クソガキ」


 蹴り上げました、と言わんばかりの足の構え方をしている少年。まさかこの子があの男を蹴り飛ばしたのか? あんな高さまで? そんなバカな、と周囲の人々はざわざわとわずかに騒がしくなってくる。

 少年はスタスタと歩いて男に近づくと、痛みで唸り声をあげている男の頭を踏みつけた。


「ぎゃ!?」

「食い逃げなんだって? って事は、お前は罪人ってこった。多少痛めつけても何も問題ないわけだ」


 頭をぐりぐりと踏みつけながら言うと男は何とか立ち上がろうとする。しかし思った以上に少年の力が強すぎて立ち上がることができない。


「……わかってるって。ちょっと考えがあるんだよ。別に殺しはしないから」


 頭の上で少年が誰かと話をしている。しかし相手の声は聞こえない。

 慌てて走ってくるような音がした。少年が振り返るとそこにいたのは肩で息をしている飯店の店主だった。


「食い逃げの一人だ。捕まえておいてやったぞ」

「はあ、はあ。た、助かるぜ」

「で、どうする?」

「は? なにが?」


 ようやく息が整った店主は不思議そうに聞き返す。すると少年はにっこりと笑った。


「バラバラにして飯の材料にするか、食えたもんじゃなさそうだから今すぐ殺すか」


 あまりの内容に、店主はあんぐりと口を開けて言葉が出ない。確かに食い逃げやかっぱらいはこの辺では横行している。貧しい者が多く、働くより奪う方が早いからだ。


「こんなの生きてたって何の役にも立たないだろうから、殺しちまうか」


 そういうと踏みつけていた男の頭の上にぴょんと飛び乗った。男は痛みのあまり悲痛な叫び声を上げる。


「いや、あの、待て待て」

「なんで?」


 さも不思議、と言わんばかりに首をかしげる。その様子は本当に普通の子供だ、地面から響く悲鳴がなければ。


「えっとほら。そいつを殺しちまったら俺の店の評判が下がるから。人の肉を調理してるんだってよ、なんて噂が立っても嫌だし」

「そっか、それは一理ある」


 地面からは相変わらず男の悲鳴が響いているが、少年は全く気にした様子がない。


「わかってる、ちょっと待ってろって」

「誰と話してるんだ?」

「気にすんな。じゃあこうしよう。とりあえず二度とこの店に近づかないように、軽く痛め付けておく。その礼に、饅頭五個くれ」


 その内容に店主は一瞬戸惑ったようだが、確かに店に二度と近づかないようにしてもらえるのはありがたい。何が起きたか見逃してしまったが、この少年相当強いようだ。もしまた店に迷惑がかかるようなことがあれば、この少年を呼びつけるぞと言って追い払うこともできるかもしれない。しかも報酬は饅頭だ、高い金をせびってくるわけでもない。


「わかった、いいだろう」

「よし、交渉成立だな。饅頭は肉が三個、餡が二個な」


 にっこりと笑うその顔は年相応に無邪気だというのに。その後、思わず店主が止めに入ってしまうくらい食い逃げの男は少年にボコボコにされたのだった。




「いやあ、饅頭が手に入って良かった」

「やりすぎだよ、まったく。相手は普通の人間だってことを忘れてない?」

「相手が強い弱いで手心加えるとかアホらしくてやってられるか。ま、それでも一応頑張って手加減してみたぜ? 死んでなかっただろ」

「死んでないけどほぼ死にそうだったよ」


 チョウカは機嫌良さそうに饅頭をほおばる。実は最近食い逃げを繰り返す男三人組の噂は知っていた。明らかに挙動不審な男たちが店に入るのを確認して出てくるのを待っていたのだ。目的はもちろん男の一人をボコボコにして食べ物を交換条件で手に入れること。何の苦労もなく食べ物が手に入るのだからやらないわけにはいかない。


「美味いぞ、ほいよ」


 空中に向かって饅頭を一つ放り投げる。すると饅頭が空中で消えた。今ここに他の者がいたらそう見えていただろう。


「あ、美味い」

「な?」

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