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陰陽の龍  作者: aqri
序章
3/23

3 サカナシ

「虫は光に集まる。太陽に勝る光は溶岩しかない」

「そりゃそうだが」

「夜、焚き火に向かって虫が突っ込んでくるだろう。あれは光に集まるからだ。光に集まる習性は虫が月を目印にしているからだ」

「月? なるほど、それで東西南北を判断していたのか」

「昼間はそこら中が明るいから方向が定まってない。だが太陽の光より強い光を出せるのがいるとすれば」

「サカナシか!」


 普段太陽の光の中に隠れている存在。過去これが姿を現したのは確認されているだけで四度。それが降りてくれば地は荒れて天上界でも天変地異が起きたと言う。しかし別に化け物の類ではない、言い伝えられている限りでは正体はわかっている。サカナシは、龍だ。


「何で普段太陽の光の中に隠れているのに地上に降りてくるのかと思ってたけど。人間の命を食い荒らす虫を操って、栄養満点になったところでその虫を自分が食べに来る。なるほど、あいつは一筋の光を作り集まったシバリたちを急降下しながら全て一気に食っているんだ」

「腹立つ! ばーか!」


 ()であるラオは一気に機嫌が悪くなる。龍はあまり良い伝承がないので常々不満に思っていた。人の倍程の大きさしかないラオはまだ龍としては幼い。五十年しか生きていないので赤ん坊のようなものだ。


「一気に喰らう姿が滑り落ちてくるように見えるから滑り道ってか。落ちてくる時はあいつが腹を空かせた時。それにしたって前回確認されてからだいぶ時期が早い……そっか」

「なんだよ」

「お前のじいちゃん、サカナシと戦いに行ったんだな」


 その言葉にラオは目を丸くした。


「いやでも、だって。なんでそれを周りの奴らに教えなかったんだ」

「教えて賛同してくれる奴居ると思うか。三家も八家も自分たちが偉くて凄いんだと奢ってる奴らだぞ。地上の人たちを見下して、飢え死にする人を鼻で笑って戦を起こしている様子を酒の肴にするような奴らだ」


 天上界に龍はいない、不遜な仙人を嫌いだからだ。ラオの祖父がこの場所に長くいたのは、ようやく産まれた孫が戦に巻き込まれず健やかに育つようにだ。周囲の者たちは巨大な蛇が邪魔でしょうがないと嘲笑っていた。


「じいさんがいなくなった時もきっと地上でたくさんの人が死んでた。でもじいさんが戦ってくれたからあいつは満足に餌を食えなかった。実際今降りてきたしな」

「……じいちゃんは、シバリを蹴散らしながら昇っていってくれたんだな」


 三家の一人と八家全員の長が集まり何とか噴火を押さえ込み始める。術を使って無理矢理止めているようだが。


「溶岩を押し込んだら他の山が噴火するだろ、馬鹿かあいつら」


 呆れるチョウカはラオの尾をギュッ掴む。


「いってえ! 馬鹿力!」

「掴んでおかないとお前、じいさんと同じことしようとするだろ」

「それは」

「やめとけよ。じいさんの力でも勝てなかったんだ。お前が行ったら瞬殺で終わりだ」

「でも! このまま何もしないっていうのは」

「何もしないなんて言ってない」

「え」


 チョウカは周囲を見る。シバリはほぼ全滅したようだ。


「怒り狂って降りてくるだろうよ。せっかくだから力を持て余して暇すぎる奴らに相手をしてもらおう」


 にやりと笑うとラオの首の上に跨り角を掴む。


「何してんのお前」

「何って、行くだろ」

「お前止めたじゃん」

「一人で行くの止めただけだ。行くぞ、一緒に」


 その言葉にラオはまっすぐ空を見つめてからポツリと呟いた


「おうよ」


 ラオは、勢い良く飛び出した。




 地鳴りではない別の大きな音が空から響く。最初は何か白いものが蠢いているようだったがやがてその姿を見ることができた。


「やっべ、想像以上にでかい」

「じいちゃんよりデケェし!」


 ラオの祖父は百尺あったがその数倍大きい。仙人たちが一斉に飛び出すが、食事を邪魔されて気が立っているらしいサカナシは口を開くと、巨大な氷の塊を一気に吐き出した。冷たすぎるその空気はそこら中を凍りつかせて行く。


「あ、噴火おさまったな、よかった」

「どこまでも前向きだよなお前は!」

「噴火どうやって静めるか考えてなかったからな!」


 空へ上っていく。サカナシは二人をギロリと睨みつけた。


「見ていたぞ、お前だな、俺の飯をかき乱したのは」

「餌がないのに一本釣りできるとは是如何に」


 その言葉にサカナシは尻尾を大きく振る。そこら中に乱気流が起こりラオはその風に乱されながらも必死に空を飛んだ。


「挑発すんなよ!」

「いや全然面白くないこと言うから。言い返さずにはいられなかったんだよ。さてと」


 見下ろせば怒りに満ちた仙人たちが次々とサカナシに向かってきている。それらの相手を適当に受け流しながらサカナシはニヤリと笑った。


「臭うぞ、少し前に俺に歯向かってきた愚かな年寄り蛇。同じ匂いがする、血族か」

「じいちゃんの悪口言うな、あとしゃべんな息臭ェんだよ不細工」


 今度は口から吹雪を吐き出す。氷柱も混ざっていて刺さったら致命傷だ。ラオはそれらを器用に避ける。サカナシはふん、と息をつくがひっひっひ、と嗤った。


「じじいを馬鹿にされて悔しいか。あの蛇は俺につっかかってきたが弱いのなんの。最後は尾の一振りで粉々になったぞ。ああ、思い出しただけでも笑える! 無様無様!」


 怒りに震え黙り込んだラオの頭をぺしんと叩いたチョウカは鼻で笑った。


「その割には次の飯を集めるまでに二十年かかったな。どうせ大怪我して痛くて動けなかったんだろばーか、恥ずかしい奴。つーかこいつを蛇って馬鹿にするならお前も蛇じゃん、頭悪いな。あっち行け、しっしっ」

「下賤と一緒にするな!」


 叫ぶと同時にゴウ、と突風が巻き起こる。そうしているうちに三家、八家が全員到着した。空を飛びながらサカナシに攻撃をしかけ、サカナシが怒りながら反撃をしている。ラオは溜息をついた。


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