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08 ザカライア学院入学前に 02

 ところでコニーは困った様子でしたけど、どうしたのでしょうか。そう思ったら、お兄様が声をかけました。



「ところでミス・アシュビー。さっき困った様子だったけど、どうかしたのかい?」


「あ、あの……すいませんがコンスタンスかコニーと呼んでいただけると……貴族様にミスをつけられると(おそ)れ多くて……」


「ああ、すまない。配慮(はいりょ)が欠けていたね。では私もコニーと呼ばせてもらうよ。私のこともオリヴァーでいいよ」


「は、はい。オリヴァー様」


「様はつけなくていいよ。先輩くらいで」


「は、はい! オリヴァー先輩」



 コニーは素敵な笑顔をお兄様に向けていますね。こんなきれいな子にこんな笑顔を向けられたら、年頃の殿方は勘違いしてしまいそうです。お兄様には動揺する様子はないようですけどね。

 ですが確かにこれはお兄様の配慮不足でしょう。上級生にも平民出身の人もいるのでしょうが、お兄様は初対面ということでミスをつけたのでしょうけどね。でも気が強くはなさそうで野心も見受けられなさそうなこの子が、貴族からミスをつけられるのは居心地が悪いだろうということは推測できます。



「それでコニーはなにを困っていたのかい?」


「図書館に入ろうと思いましたら、新入生は入学するまでは一人では入れないと言われまして……」



 新入生も教師か上級生に同伴してもらえば入学前でも図書館に入れるそうですが、この子にはそのような知り合いはいないのでしょう。



「コニーも本が好きなのですか?」


「はい。たくさんの本があると聞いていますので、わくわくしています。調べたいこともありますし」


「それはエマと気が合いそうだね。この子も本を読むのが好きでね」


「そうなのですか?」


「ええ」



 確かにコニーとは気が合うかもしれませんね。ただ私はちょっと度が過ぎているようなので、引かれないかと心配です。私は前世から本を読むことが好きでしたが、この世界に来てからさらに好きになってしまいまして。ワイズ伯爵家は賢者の家系ですから、本を読むのはいいこととされていますので、さらに拍車(はくしゃ)がかかってしまったのです。



「なら私たちについて来るといいよ。私たちも図書館に入るところだったからね」


「いいんですか?」


「ええ。もちろん。私とあなたはお友達になったのですから」


「は、はい!」



 コニーの笑顔は自然なもので、うわべだけのものではなさそうです。どうやら私がこの子は悪い子ではなさそうと思ったのは間違いではなかったようです。ですが私とこの子は出会ったばかりですし、まだ本当の友人になれたわけではないでしょう。いい友人関係を築きたいものですね。



「ところでコニーは学院の中はもう見て回ったのかい? 良ければ案内するよ」


「え……いいんでしょうか? そんなお手間を取らせてしまって……」


「構わないよ。エマも一回見ただけでは場所を完璧に覚えられたかはわからないしね」


「これは私のためでもありますから、遠慮(えんりょ)しなくていいですよ」


「は、はい……それではお願いしていいでしょうか……?」


「もちろんいいよ」


「ありがとうございます!」



 私とお兄様はささやかな嘘をついています。私は記憶力には自信があり、この程度のことならば完璧に覚えています。コニーが罪悪感を覚えてしまわないように、こう言ったのですけどね。

 コニーは平民なのに、貴族やはては王族まで通うこの学院に入って不安もあったのでしょう。でも私たちのことは信頼していいと思ってくれたのか、その笑顔には嘘はなさそうです。

 こうして友達になろうとしているこの子を観察しているのは、少し申し訳ないですけどね。ですが私の性分なのか、つい観察してしまうのです。こんな私を心から友達と思ってくれる人はいるのだろうかと不安もあるのですが……


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