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59 エマとコニーの試合 02

 このままでは勝負はつかなさそうです。引き分けもまた立派な結果ではあるのですが。



「コニー。このままでは勝負はつきそうにありません」


「はい。そのようですね」



 コニーも実践に強いのか、普段の気弱さが消えて、しっかりと答えます。それも心地いいですね。



「ですので、お互いに思い切った攻撃魔法を使って、それでも相手を崩せないと思ったら負けを認めるというのはどうでしょう?」


「それはいいですね。でも、私が勝っちゃうかもしれませんよ?」



 コニーがこの子には珍しい悪戯(いたずら)っぽい表情をしました。こんな顔もかわいらしいですね。



「構いません。あなたは私のライバルになってくれる子だと思っています。勝って喜び、負けて悔しい思いをする。そうしてお互いに成長していけると思うのです」


「エマさん……そうまで思ってくれているなんて……」



 コニーは思わず感動に目を(うるま)ませているようですね。私はもう認めています。コニーは友達だと。コニーも私を本当に友達だと思ってくれているならうれしいですね。



「私から言いだしたことですから、先手はあなたでいいですよ」


「はい。でも先手を譲ってもらうのもちょっと不公平に思いますから、二手目の次もエマさんで、その次は私という順にしますか?」


「それでいいですよ」



 コニーがどんな攻撃をして来るか、楽しみです。もちろん私も簡単に負けるつもりはありませんけどね。

 そしてコニーが使う魔法の前兆が()()()()()。氷の上級範囲攻撃魔法。一人前の魔法使いにも使える人は滅多(めった)にいないはずのものです。



「我は水を行使する者。水よ、氷の嵐となりて全てを凍てつかせよ。アイス・ストーム!」


「水よ。我を(おお)い全ての攻撃から守れ。ウォーター・ドーム!」



 氷の嵐が私に襲いかかります。直撃したら並の騎士や魔法使いでは命はないでしょう。コニーが短縮呪文ではなく呪文を唱えたのは、この子にはまだそこまでの技量はないからでしょう。上級魔法を短縮呪文で行使できる魔法使いはごく限られているはずですから、それは当然と言えば当然ですが。

 それに対し、私が使ったのは水の上級防御魔法。防壁のように一面だけを守るのではなく、周囲一帯を守るものです。ただの防壁ではこの氷の嵐相手では意味はありません。私もこの魔法を短縮魔法で使うことはまだできないのですが。

 そして氷の嵐が収まります。

 視界が回復して、コニーが微笑(ほほえ)みました。



「やっぱり、エマさんは防ぎましたね」


「ええ。次は私です」



 コニーの表情には焦りはありません。つまりこれ以上があるのでしょう。

 私は右腕を掲げます。お母様に貴族の令嬢なら動作の優美さも重要と言われ、ポーズにも気を配っています。魔法の前兆を察したコニーの顔に緊張の色が浮かびます。



「ファイア・ボール五連!」


「水よ。我を(おお)い全ての攻撃から守れ。ウォーター・ドーム!」



 私の右手の指一本一本の先に出現した五個の小さな火球が、指先から離れると大きさを増して、違う軌道を描きながらコニーに殺到します。コニーは先程の私と同じ水の上級防御魔法を使います。

 着弾。火球が炸裂(さくれつ)し、轟音と爆炎が広がります。コニーもお見事です。短縮呪文で放った私の火球に対し、上級防御魔法を間に合わせました。火球相手ならと防壁魔法を使うことも考慮して、防壁なら二個くらいは避けて当たる軌道で飛翔させたのですが。

 視界が回復すると、コニーの防御魔法の範囲外の地面が焼きただれて(えぐ)れていますが、コニーの防御を突破できませんでした。抉れた地面は地属性の魔法を使えばすぐに修復できるはずです。私は地属性の魔法は実用的には使えないのですが。

 私は笑みを浮かべます。



「やっぱり、あなたは防ぎましたね」


「ちょっと怖かったですけど……」



 コニーはちょっと(ひる)んでいるようです。この子は基本的に気の小さい子ですからね。

 火球五個となるとその威力は上級攻撃魔法に匹敵するはずですが、それを防がれたことに私には全く動揺はありません。コニーなら防ぐと確信していましたから。

 私は火球を短縮魔法で放ちましたから、防御魔法が間に合わないこともありうるとは思いましたが。仮に防げなくてもアボット先生の無効化結界が守ってくれますから、コニーが怪我をする心配はありませんけどね。


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