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58 エマとコニーの試合 01

 勝ち上がり戦決勝。勝ち進んだ私の最後の相手はコニーです。魔法使い科の新入生で最も強力な魔法使いは私たち二人だと思っていたので、予想どおりではありますが。

 私とコニーは訓練場で対峙(たいじ)しています。



「コニー。いい試合をしましょう」


「は、はい。お手柔らかにお願いします……」


「そんな不安そうにしなくても、無効化結界がありますよ」


「は、はい」



 コニーも危なげなく勝ち進んで、少しは自信がついたかなと思ったのですが、変わらずのようです。貴族の集団の中に平民が一人なので、(ひる)むのも当然とは思いますが。

 アボット先生が声を張り上げます。



「では、最終戦、開始!」



 コニーが真剣な顔になりました。この子も気持ちを切り替えたのでしょう。

 私もこれまでの試合で、どのように魔法戦を展開すればいいかちょっとはわかりました。私は主にお母様から魔法を習っていたのですが、お母様の方針はまずは地力を引き上げるのが先決と、魔法戦の駆け引きなどはあまり習っていなかったのです。どちらかといえば基本スペックで敵を圧倒するという戦い方を習って。ですがそれは相手が同格か格上の場合には通用しないとはお母様からも言われています。戦い方を学院で身につけて来なさいと。

 まずは先手を取って精神的な優位を得ることも有効なのではないかと思います。コニーは基本的に気が弱いのでなおさら。



「ファイア・アロー百連!」


「ウォーター・ウォール!」



 私の放った大量の炎の矢に対し、コニーは即座に適切な防御魔法を短縮呪文で使いました。私は水属性に強い地属性の魔法は実用的な威力が出せません。

 そして着弾。これだけの魔法の矢を放てば、普通の魔法使いの防壁魔法なら相性の悪い属性でも砕けそうなものですが、コニーの防壁は余裕を持って防ぎきります。予想どおりではありますが。



「ウィンド・ボウ四連。速射開始!」


「ウォーター・アロー百連!」



 コニーの水の防壁に負荷をかけるべく、風の自動射撃魔法を四つ展開して即座に射撃を開始しました。私の狙いはコニーにさらに防御に回らせることだったのですが、狙いははずれました。コニーは防壁が破壊される前に反撃して来たのです。水の防壁を避けるように山なりに水の矢を放って。水の防壁と風の防壁は視界が通るので、こんなこともできるのです。



「ウォーター・ウォール!」


「ウィンド・ウォール!」



 私はウィンド・ボウの自動射撃を妨げないように、頭上から迫り来る水の矢に対して上方向に水の防壁を展開します。コニーも水の防壁をまさに破壊しようとしている風の矢に対抗するために風の防壁を展開します。

 私の水の防壁に大量の水の矢が当たり、轟音と水煙が広がります。水煙でコニーの姿が見えなくなりました。風の矢も視界が効かない状態で射撃していても命中は期待できません。それにコニーの風の防壁相手では負荷をかけることもあまり期待できません。ですから射撃を中止してウィンド・ボウも消します。この視界を奪うこともコニーの思惑(おもわく)どおりなのでしょうか。



「アイス・ボール!」


「アイス・ボール!」



 視界は効かないのですが、戦士ではないコニーが場所を大きく移動しているとは思えないので、爆裂する氷の範囲攻撃魔法を放ちました。そうしたらコニーも同じことを考えて、風の防壁を消して魔法を放っていたようです。氷の球が互いにぶつかって炸裂(さくれつ)してしまいました。轟音が響き、氷の粒が訓練場に広がります。

 さて。どうしましょうか。おそらく私とコニーの魔法使いとしての力量には大きな差はありません。私にはコニーの防御をかいくぐって有効打を与えるほどの技量もありません。これは千日手というものでしょうか。とりあえず様子を見て、視界が回復するのを待ちましょう。

 そうしていると、コニーも同じことを考えていたようで、それ以上の攻撃はして来ませんでした。視界が回復します。



「エマさんもコニーさんもすごいです……」


「……悔しいが、私も認めざるをえない。今の私ではあの二人には勝てない。わかってはいたが、やはり私はまだまだということか……」


(わたくし)は平民にも勝てないというのですか……」



 ロビンさんとヘンズリーさん、そしてファーバーさんの声がやけに大きく響きました。それだけこの訓練場が静まりかえっているのです。他の魔法使い科の皆さんも言葉もなく見ているようです。



「エマもコニーも本当にすごいね」


「クリフ殿下。是非(ぜひ)ともミス・ワイズとミス・アシュビーを宮廷魔術師団に招き入れるべきです。今でさえあれほどならば、学院卒業時にはどれほどになっているか想像もできません」


「ダスティン。今の彼女らの力は将来の力を保障するものじゃない。今はまだ彼女らと信頼関係を深めるだけでいいよ」


「はっ。差し出がましいことを言い、申し訳ございません」


「謝る必要はないよ。助言はありがたい」



 私とコニーが十五歳という年齢としては驚くべき試合を見せているのは事実なのでしょう。ですがこの程度ではお母様に比べればまだまだです。

 そして騎士科の人たちはもう全試合を終えて、私たちの試合の観戦をしています。騎士科の方が人数が多いのですが、魔法使い、特に魔力が十分にない人は多少でも魔力を回復する時間も必要になるため、試合を連続でする際には休憩時間を多めに取る必要があるのです。

 クリフさんの隣にいる男の人はダスティン・アスカムさんです。あの人は男爵家の三男で、数日前に入寮しました。あの人とはクリフさんだけではなく私たちも交流しています。クリフさんはファーバーさんのことを気にする様子はなさそうですが……



「でも君も学院内ではそこまで私にへりくだる必要はないのだけどね」


「殿下相手に無礼な言動も行動もするわけにはまいりません」


「君は真面目だねぇ……」



 アスカムさんはクリフさんに忠誠を(ささ)げる姿勢を示していて、クリフさんはちょっと困っているのです。アスカムさんもクリフさんが人道派に参加しているならと、迷う様子もなく人道派に参加しました。ちょっと真面目すぎて融通が利かない人なのかなと思うのですけどね。

 そしてお兄様は、クリフさんはアスカムさんを将来の側近候補として育てようとしているのではないかと言っていました。忠誠心に(あつ)い臣下は主君にとって宝だと。有能ならなおさらに。アスカムさんはまだクリフさんを王子様としか見ていないだろうとも言っていましたが。お兄様は最近こういった政治的なことも私に教えてくれるようになったのです。


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