56 入学時実力判定試合 07
シーウェルさんがはにかみながら私とコニーに向かい合います。
「あの……ワイズさん。アシュビーさん。よければ私のお友達になってくれませんか?」
「ええ。喜んで。なら私のことはエマと呼んでください」
「私などでいいのでしたら……私はコンスタンスかコニーと呼んでいただけると……」
「はい! 私はロビンと呼んでください!」
ロビンさんの表情に、もうさっきの気落ちした様子はありません。コニーに対する鬱屈した感情も見受けられません。この人もおそらくはいい人なのでしょう。自分を負かした相手、それも平民のコニーとも友達になりたいと言うのですから。この人もおそらくは人道派的な考えをしているのでしょうね。たぶんこの人は基本的に明るい人なのだと思います。ちょっと弱気なコニーを引っ張ってもらうのに丁度いいかもしれません。
ですがこの人を完全に信じるにはまだ早いです。この人はワイズ伯爵家より格としては下位の男爵家の人ですから、私に取り入ろうとしている可能性も否定はできません。ここまで疑いたくはないのですが、世の中には信用してはいけない人もいることは私も理解してしまいました。
そこにヘンズリーさんが声をかけてきました。
「ふん……ミス・アシュビー。君は平民ではあるけれど、かなりの実力の持ち主であることは認めざるをえない。だけど私が君と相対してもそう簡単には負けないから、心しておきたまえ」
「は、はい。ですが貴族様にミスをつけられると畏れ多いのですが……」
「君は平民としての身分をわきまえているようだ。だが貴族たるもの、たとえ平民であっても学友に対して礼を失するわけにはいかない」
「は、はい」
ヘンズリーさんはコニーを見下しています。この人は貴族派的な考えですから。コニーの実力は認めてくれたようですが。おそらくはこの人もコニーがやり過ぎないように手加減していたことにも気づいているでしょう。
この人もコニーを見下しているのは悲しいですし悔しいですが、これはコニー自身がこの人に認めてもらわないといけないことなのでしょう。そうして能力と実績を見せれば、この人もディスキン先輩もコニーを認めてくれるでしょう。
ですがロビンさんが不思議そうな表情でヘンズリーさんを見ています。
「あの、ヘンズリーさん。さっきエマさんとの試合の時は僕と言っていませんでした? 口調も違うような」
「んなっ!? き、気のせいだ! 私は誇り高い貴族なのだからな!」
「ふーん……」
ロビンさんは面白そうな顔をしてヘンズリーさんを見ています。
ヘンズリーさんの慌てようは、語るに落ちるとはこのことでしょうか。おそらくヘンズリーさんの素は、一人称を僕と言っていた時のものなのでしょう。今は気取っているだけのようです。それも微笑ましいですけどね。
「ミ、ミス・シーウェル。その表情はなんだね!?」
「うーんと……ヘンズリーさんもかわいいなあって思って」
「んな!?」
「エマさんとの試合の時もかっこよかったですよ?」
「なっ!? か、からかわないでくれたまえ!」
ヘンズリーさんは顔を真っ赤にして恥ずかしがっています。ですがそこに負の感情は感じられません。この調子ならロビンさんとヘンズリーさんも良好な関係を築けそうですから、それでいいのでしょうね。




