55 入学時実力判定試合 06
他の人たちの試合をはさんで、コニーの番です。コニーが負けるとはあまり心配していません。コニーの対戦相手は女性で、ロビン・シーウェルさん。当然貴族ですがかわいらしい人ですね。
コニーの魔力は、お母様から人間離れしていると保証されている私にも劣るものではありません。コニーが魔法戦闘に習熟しているかは別問題ですが、対戦相手も新入生なのですからそこまで習熟しているとは考えにくいです。ヘンズリーさんのような人はそう何人もいないのではないかと思います。
「では、始め!」
補佐の先生が無効化結界を張った上で、アボット先生が試合の開始を宣言しました。結界を張るのも魔力を消耗しますから、アボット先生と補佐の先生二人が交代して魔力を回復しながら負担を分散しているのでしょう。
コニーはこれまでの試合を見て心構えができていたのでしょう。すぐに魔法を使う態勢に入ります。シーウェルさんは出遅れたのか、コニーの魔法に対処するべく防御魔法の態勢に入ります。
「アース・アロー五十連!」
「火よ。我を害意から阻め。ファイア・ウォール!」
シーウェルさんが使える属性は火属性と水属性。魔力もなかなか。新入生としては十分な実力者だと思えます。ですが相手が悪いです。
コニーは四大属性全てを使える奇跡の才能の持ち主なのです。そして魔力も私に劣りません。シーウェルさんが使える二つの属性に対して、唯一防御魔法で威力が削がれない地属性の魔法を使ったのでしょう。それも短縮呪文でやり過ぎないように手加減もして。
それでもシーウェルさんも使う防御魔法の選択は間違えませんでした。彼女が使えるもう一つの属性である水属性は地属性に弱いのですから。基準魔法にも防御魔法はあり、弱点属性をつかれた属性防壁魔法よりは強度があるのですが、基本的な防御力では防壁魔法に及びません。彼女は最適な選択をしたのです。それでコニーの魔法を防げるかは別問題ですが。
「きゃああああ――――――!?」
火の防壁に半分以上は阻止されたもののそれを破壊して着弾する石の矢に、シーウェルさんは悲鳴を上げます。それも当然だと思います。私はお母様相手の訓練で慣れていますからそのような状況でも悲鳴を上げない自信はありますが、最初の頃は泣きわめいたものです。
ですがシーウェルさんには怪我一つありません。先生が張った無効化結界が守ってくれます。
「それまで! 勝者、アシュビーさん! シーウェルさんも異論はありませんね?」
「ありません……」
「あの……怖い思いをさせてしまってすいません……」
「ううん……私が弱いだけだから……」
コニーも優しい子ですよね。そうして二人はどちらが勝者なのかわからないような様子で戻って来ます。貴族派の人たちには面白くないという様子の人たちもいます。
「コニー。おめでとうございます」
「はい……ですが……」
「勝ったあなたがそんな様子では、負けたシーウェルさんに余計に惨めな思いをさせてしまうかもしれませんよ?」
「あ……すいません、シーウェルさん……」
コニーも勝ち誇れとは言いませんが、もう少し自信を持つべきだと思います。この子にはそれに値する力があるのですから。
「シーウェルさん」
「は、はい」
「あなたは気落ちする必要はないと思います。このコニーは私も勝てるかわからないと思うほどですから。この子はいまいち自信がないようですが」
「は、はい」
「あなたも新入生としては十分に実力者だと言えると思います。自信を失う必要はありません」
「は、はい!」
フォローをしてあげるのもコニーの友達である私の役目でしょう。こんなことができるのも、私はうれしいのです。前世では家族に世話されるばかりで、今世でも基本屋敷で生活して友人らしい友人もいなかったのですから。
アボット先生もシーウェルさんに声をかけます。
「そうですね。アシュビーさんもとてつもない素質の持ち主のようです。そのアシュビーさんに負けたからといって、恥じる必要はありません。シーウェルさんも凡百の魔法使いでは相手にならない魔法使いになれる可能性はあると思いますよ」
「は、はい!」
「あと、君が火の防壁を使ったのはあの状況では間違いではありません。アシュビーさんの魔力が君を上回っていただけで、君の判断は正しいものでした」
「はい!」
シーウェルさんも私とアボット先生のフォローの言葉に気を取り直したようですね。先生はこうして負けた人をフォローしているのです。それも貴族の子女がほとんどを占めるこの学院では必要な配慮なのかもしれません。後で勝者側の人たちも含めた講評もされるそうですけどね。




