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54 入学時実力判定試合 05

 私の攻撃はウィンド・ボウだけではありません。



「では、追加を。ファイア・アロー五十連」


「なっ!?」



 私が放った50本にも及ぶ炎の矢がヘンズリーさんの風の防壁をあっさりと破壊し、多少数を減らしながらもゴーレムに着弾します。火属性は風属性に強いのです。ゴーレムもさすがの防御力で、炎の矢があれだけ直撃してもさしたる損傷はありません。

 ですがそれだけではありません。風の防壁で阻まれていた風の矢が、風の防壁がなくなったことで連続してゴーレムに着弾します。ゴーレムはみるみる損傷していきますが、風属性に弱い地属性なのにまだ持ちこたえています。

 ヘンズリーさんも(あきら)めてはいません。



「風よ。我を害意から(はば)め。ウィンド・ウォール!」


「ファイア・アロー五十連」



 ヘンズリーさんは再度風の防壁を展開します。私はそこにまた炎の矢を撃ち込み、風の防壁を破壊します。

 そこで試合を見ていたアボット先生が声を張り上げました。



「試合一時中断!」


「射撃中止」



 その言葉にウィンド・ボウに射撃の中止を指示しました。



「ヘンズリー君。挽回(ばんかい)の目があるなら試合を再開しますが、どうですか?」


「……いえ。完全に僕の負けです」


「わかりました。試合終了! ワイズさんの勝利です!」



 観戦していた魔法使い科の人たちから歓声が上がります。隣のフィールドで同じように試合をしていた騎士科の人たちもこちらの試合に気を取られていたようで、騎士科の先生が自分たちの試合に戻りなさいと声を張り上げていますね。皆さんも新入生の試合でここまでの戦いが見られるとは思っていなかったでしょう。

 私はゴーレムを解除して地面に降りたヘンズリーさんに声をかけます。



「試合は私が勝ちましたが、ヘンズリーさんもお見事でした。あれほどのゴーレムを作るとは、驚きました」


「……どうにも君相手だと調子が狂うね。君には嫌みがない」


「ええ。私は純粋にあなたがすごいと思いましたので」



 実際、私は驚きました。新入生にあれほどのゴーレムを作れる人がいるとは。多くの本を読んで様々な知識を持っているつもりでしたが、私もワイズ伯爵家という狭い範囲しか知らなかったということなのでしょう。

 その私にヘンズリーさんは毒気のない顔をします。ただこの人にはひねくれている面もあるのではないかと思いました。そしてディクソン先輩に対する態度や試合中の様子からすると、人に認められたいという欲求もあるのではないかと思いました。

 アボット先生もヘンズリーさんに声をかけます。



「ワイズさんの言うとおりです。ヘンズリー君にはゴーレムの扱いにおいて王国での第一人者になれる可能性があると思いますよ」


「は……はい!」


「もちろんそれは君が努力を(おこた)らなければですが。その才能を開花させるか、それとも腐らせるかは君次第です」


「はい!」



 ヘンズリーさんはやる気にみなぎっているという様子ですね。この調子ならヘンズリーさんも素晴らしい魔法使いになれるのでしょうね。



「ワイズさん。僕は君を目標にさせてもらうよ。君に勝つのが当面の僕の目標だ」


「はい。共に(はげ)み、高め合って、素晴らしい魔法使いになりましょう」


「ああ!」



 この人との出会いも良いものだったのでしょうね。この人は貴族派的な考えで平民を見下してはいるようで、その点では私とは意見が一致しません。ですがこの人もおそらく人格的にはいい人ではあるのでしょう。

 素晴らしい魔法使いになることも私にとっては必須です。大賢者になるには強力な魔法使いになることも必要なのですから。そして前世の家族に手紙を届けるためにも、常識では考えられないほどの魔法使いになる必要があるのでしょうから。

 

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