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51 入学時実力判定試合 02

 実力判定試合の開始です。試合は勝ち上がり形式ですが、実力の判定には試合中の戦いぶりも参考にされるそうです。

 開始前に魔法使い科23人のうち6人が不戦敗を選びました。不参加なのは全員貴族の子女です。コニーは参加します。

 戦うことも貴族の義務なのですが、素質的にどうしても戦いには向かない人もいるのでしょうから、それも仕方が無いのでしょう。そのような人たちは魔法使いとしてではなく政治面での勉強を重点的にするのでしょう。その勉強も(おろそ)かにする統治者としての自覚のない人もいる可能性も否定はできませんが。



「さて。私の最初の相手は君か。ミス・ワイズ。高名なワイズ伯爵夫人のご令嬢なら相手に不足はない」


「お互いに良い試合をしましょう」


「ああ! 私の実力をお見せしよう!」



 最初の試合。私の相手はディスキン先輩に連れられていたバーナビー・ヘンズリーさんです。この人も貴族派に参加しています。学院の生徒の大半が貴族の子女なのですから、貴族派の勢力が大きいのは当然なのですが。

 私のお母様は強力な魔法使いとして王国でも有名だそうです。この人もそれを知っているのでしょう。ヘンズリーさんは自信に満ちあふれています。見たところそれは虚勢(きょせい)ではなさそうです。ヘンズリーさんから感じられる魔力も結構なもので、実力もないのに思い上がっているというわけではなさそうです。

 私も魔法戦にはいささかの自信はありますが、もちろん油断してはいけません。相手を(あなど)ることができるほど私は強くはないのです。強くなっても相手を侮ることは不覚を取る危険を抱えることだともお母様からたたき込まれていますし、私もその言葉は正しいと思っています。

 試合場所の端に立ってメモをする準備をしているアボット先生が声を張り上げます。



「もう一度言いますが、試合では教師が無効化結界を張ります。怪我をする心配はありませんので、安心して試合をしてください。攻撃の有効無効および勝敗の判定は私がします」



 今は補佐の先生が無効化結界を展開しています。この結界を展開することも負担がかかるので、複数の先生で分担しているのでしょう。

 無効化結界の中では一切(いっさい)の攻撃はダメージを与えることはできません。敵も味方も。ですので怪我をする心配もなく思い切った攻撃ができます。無効化結界も無敵ではなく、負荷がかかりすぎると魔力を維持できずに崩れてしまうのですが。

 ただこの安全に訓練できるということも善し悪しだそうです。実戦で本当の痛みを感じた時、それに耐える心構えが養われないと。



「では、試合始め!」



 アボット先生が試合開始の合図をします。私もいささか緊張しています。家族や教育役以外の人と試合するのは初めてなのですから。



「風よ。我を害意から(はば)め。ウィンド・ウォール!」



 どうするべきか迷っているうちに、先手をヘンズリーさんに取られてしまいました。やはり私は未熟です。先手を取ることは戦いにおいて重要だと教わっていたのに。

 ですが先手が取られたら絶対的に不利というわけでもありません。属性魔法使い同士の戦いでは、呪文を唱える前から相手がどのような呪文を使うかの前兆がなんとなくでもわかるものです。優秀な魔法使いなら、相手がどの魔法を使うかの種類と規模までわかります。相手がどのような攻撃魔法を使うかを察知すれば、防御魔法で防ぐこともできるのです。ヘンズリーさんが使うのは防壁魔法だと気づいたので様子を見たのですが。

 この世界において魔法使いというと一般的に属性魔法の使い手を指すようです。それほどに属性魔法はポピュラーなのです。属性魔法は基本的に地水火風の四大属性を操ります。

 ヘンズリーさんは風と地の属性を使うそうです。誰がどの属性を使えるかは、試合の公平性を保つために事前に申告します。私が使えるのは風と火と水の三属性です。地属性も全く使えないわけではないのですが、実用的ではありません。

 二属性使えれば優秀、三属性使えれば天才、四属性使えるのは奇跡とされるそうですね。扱える属性は素質によるものが大きいのですが、訓練により成長することもあるそうです。実戦ではわざわざ相手に自分が使える属性を教えずに駆け引きをするのでしょうが、今は学院の試合で実戦ではありません。



「あいつ、最初に防壁を使って何をするつもりなんだ?」


「何か準備をするつもりかも……」



 観戦の人たちにはヘンズリーさんの意図がわからずに戸惑(とまど)っている人もいるようです。

 ヘンズリーさんが初手で風の防壁を使ったこととこの人の使用可能属性から、次の手は数パターン推測できます。普通の魔法戦では初手で防壁魔法を使うことはありません。防壁魔法を使えば自分の攻撃もその防壁に(はば)まれてしまうのですから。防壁魔法でこちらの攻撃を防ぎつつ、攻撃行動に出る準備を始めようとしているのでしょう。



「ワイズさんは落ち着いていますわね……小憎らしいくらいに」



 ファーバーさんの声が耳に入りますが、私は慌てません。ヘンズリーさんの手が私の予測の範囲内なら十分に対処できます。予測を超えてきたら臨機応変(りんきおうへん)な対応が必要になります。その臨機応変な対応を適切にできると確信できるほどの経験は私にはないことは認めるしかありませんが。


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