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05 転生少女は大賢者を目指す 04

 お父様は真剣な顔のまま続けます。



「そしてエマ」


「はい」


「お前の異世界における知識はうかつに他者に伝えてはいけない。もしその知識が広まれば、人々が幸福になれる可能性もある。だが破滅がもたらされる恐れもある」


「はい。重々承知しています」



 私が持つ異世界の知識。それらは私が前世で本を読むなどして得たものです。私はそれらを克明(こくめい)に覚えているのです。ただ知識として知っているだけで、自分のものにしているとは言えないのですが。そしてそれらはこの世界を大きく変えてしまう可能性があります。神々が存在し、人類と魔族が対立し、剣と魔法が世界の根幹を成しているこの世界を。

 例えば前世の世界の科学技術。高度なものはそもそも製造技術も製造機械もこの世界にはないので、すぐに実現するのは無理です。製造に関するノウハウや製造機械の知識も私にはほぼありません。

 ですが火縄銃などの初歩的な機械技術なら、製造法と火薬の製法も含めてそこまで時間をかけずに実現できる可能性があります。この世界にも機械式時計などの機械技術もあるのですから。魔法という強大な力があるこの世界では銃や大砲は出現していないようですが。

 火縄銃程度では下等な妖魔程度の相手ならともかく、魔力による防御を持っている強力な魔族や魔物に対してはさほど有効ではないでしょう。ですが戦う力を持たない一般の人々にとっては脅威(きょうい)となります。そしてこの世界においても人類同士の戦いも普通にあるのです。

 それらが一度世界に広まればどんどん発達していくことでしょう。ですが前世の世界は科学技術が発達した結果、人類は世界を何度も滅ぼせてしまう力を手にしてしまいました。あの世界の人類は自分たちの力を制御できておらず、いつ暴走してもおかしくなかったという印象を受けます。そんな力をこの世界にもたらしていいのか私は疑問ですし、お父様たちもその私に同意してくれています。



「神々はおそらく人類の無秩序な繁栄とその末にあるだろう破滅を許さないだろう。いつ世界が滅んでもおかしくない状態になる前に、人類を滅ぼそうとすることすら考えられる」


「はい。私の前世の世界は一歩間違えただけで世界が滅ぶことすらありえた世界でした。神々がそんな世界になることを許すとは、私にも思えません」



 この世界には()の上位存在としての神々が存在します。神々は()がそんな危険すぎる力を持つことを容認するでしょうか。下手をすれば、人類を庇護(ひご)している側の神々すら人類を危険と見なして滅ぼそうとすることになるかもしれないと、お父様は危惧しているのです。そして私もその危惧は正しいと考えています。

 お父様の表情が急に緩みました。



「おお、我が(いと)しの娘よ。真剣な顔もなんと愛らしい……」


「……」


「まったく。エマのこととなると、あなたは真面目な態度も長続きしないのですから……」


「父上らしいですけどね」



 まったくもう。お父様は私のこととなるとすぐに親馬鹿になってしまうのですから。それだけ愛してくれるのもうれしいのですけどね。


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