34 王女様と王子様 03
クリフさんが真剣な顔になりました。
「そしてオリヴァー先輩。エマ。私が愚かなことをしたら、あの時のように遠慮なく私を叱ってほしい。それは私のため、そして将来の王国のためになるだろう」
「私からも頼みますわ。賢者の諫言を聞き入れるのは王と王族の責務です。あなたたちは大賢者ザカライアに連なる知の名門、ワイズ伯爵家の者。その諫言には聞く価値があるのでしょう」
「承知いたしました。クリフ。私も君にとって聞き心地が良くないことを言うかもしれない。だが私の言葉が正しいとも限らない。それを受け入れるか退けるか判断するのは君がすることだよ」
「私も諫言することに異論はありません。ですが私自身、未熟者です。お互いに励み合って、立派な人になれることを望みます」
「ああ。私も未熟だ。お互いに頑張ろう。そして友人として仲良くしてくれるとうれしい」
「はい」
クリフさんには少なくとも良い王になろうという意思はあるようです。私が読んで来た本の数々からしても、他者の言葉に聞く耳を持たない統治者は暴君か暗君と呼ばれるようになる確率が高いのではないかと思います。この方の言葉が本気なのか、ポーズにすぎないのかはまだわかりませんが。この方は本気で言っているように見えますが、私にはすぐに人物の本質を見抜く目はまだないでしょう。
私もここまで人を疑うのは自分らしくはないと思うのですが、お兄様も言っていました。貴族社会は権謀術数が渦巻く魔窟だと。私が愚かなことをしてしまったら、お兄様やお父様たちまで巻き込んでしまう恐れもあるのです。私も慎重にならざるをえません。
「コンスタンス。君は平民だけど、学院に入学するということは君も類い希な素質があるのだろう。君も王国にとって有益な人になれるかもしれない」
「は、はい」
「その君も私が愚かなことをしたら指摘してほしい。君には民としての視点もあるだろうしね」
「は、はい」
「そして君のことは私もコニーと呼んでいいかい?」
「は、はい。どうぞ」
クリフさんは人道派的な考え方をしているのでしょうか。ライラ殿下は貴族派の中心人物だとパトリシア先輩は言っていましたが。ですがクリフさんは信頼してもいい人のようにも思えます。まだ断定はできませんが。王族ともなれば内心を隠してお芝居をすることなどお手の物かもしれませんし……
慎重にすぎるのかもしれませんが、相手は王族です。慎重すぎるくらいで丁度いいのではないかと思います。
ですがふと思いました。そんな状況にクリフさんは孤独感を抱いているのかもしれないと。数年前にこの方と会ったときもそのような様子でした。もしそうなら私がこの方に対して及び腰になればこの方の心を傷つけてしまうかもしれません。
私はどうすればいいのでしょうか……
いえ、こんな時こそお兄様に相談すればいいのです。後で二人きりで。




