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24 兄との会話 01

 食事の時間も終わり、私とお兄様は食堂がある建物の10人程度が入ることができる談話室にいます。生徒が勉強や話し合いをするためにこういった部屋は学院各所に多数あるそうです。二人だけなのは、お兄様が私と兄妹としての話をしたいと言ったからです。寮の私の部屋やお兄様の部屋で話すことは無理です。寮は異性の生徒が入るのは規則で禁止されていますので。

 お兄様と私はテーブルをはさんだ長椅子に座っています。



「ふふ。二人きりで、男女の逢瀬(おうせ)のようですね」


「ははは。そうだね。でもパティも忠告してくれたように、こういった部屋を悪用する人もいるから、気をつけるようにね」


「はい」



 コニーはパトリシア先輩に寮の部屋に連れて行ってもらいました。あんなことがあったばかりですし、平民でしかも美人なあの子を一人にするのは不安ですから。パトリシア先輩も身の回りのことは自分でしていて、寮の部屋は私たちと同じ階だそうです。パトリシア先輩は私たちとも女の子同士で気軽にお話ししましょうと言ってくれました。

 お兄様の表情が真剣になりました。妹の私でもときめいてしまいそうなほど、その顔は凜々(りり)しいです。



「エマ」


「はい」


「君も理解したんじゃないかと思う。世には尊敬に値する人もいれば、軽蔑(けいべつ)するべき人もいると」


「はい。ディクソン先輩やパトリシア先輩たちは尊敬するべき方に思えます。貴族にもフリント先輩のような人がいるのは悲しいですが……」



 この学院に来てからの出会いは、これまで私が経験したことのないものでした。前世と今世を合わせても。前世の私は病弱でろくに出歩くこともできずに若くして死んでしまったので、家族とお医者さん以外の人とは出会うこともほとんどなかったのですが。

 そして今世でも私はこれまで基本的に屋敷の中で生活して敷地外に出ることは滅多(めった)になく、家族や使用人以外の人とふれあう経験はほとんどありませんでした。時々お父様やお母様に連れられて領地内や領地外に訪問することもあったのですけどね。



「君も大人になれば、相手が信じていい人なのかそれとも信じてはいけない人なのか、自分で判断しなければならなくなる」


「はい」


「この学院でその練習をするんだ。屋敷の中にいてはそういった能力を鍛えるのは容易ではないからね」


「はい!」



 お兄様の言うとおりです。このことは本を読むだけで身につけられるとは思えません。実際に経験しなくては。そういった意味でも私がこの学院に来た意味はあるのでしょう。この学院には信じていい人もいるのでしょうが、信じてはいけない人もいるのでしょうから。



「そしてなにより君は大賢者を目指す。大賢者はただのお人好しでは務まらないだろう。ただのお人好しでは、悪意を持った人に都合良く利用されるだけなんだ」


「……はい」



 お兄様の口からこのような言葉を聞くのはちょっとショックです。私はお兄様はいい人だと思ってきたのですから。そのお兄様の口から人間不信とも思える言葉が出てきたのですから。ですがディクソン先輩が言っていたように、お兄様は単純ないい人ではないのでしょう。

 そしてお兄様の言葉は正しいのでしょう。私が読んできた本にも人を安易に信じるなと書いたものもいくつもありました。悪意を持った人はいくらでもいると。お父様とお母様からも教えられています。

 大賢者ザカライアの残した手記にも特に貴族には注意しろという記述がありました。貴族社会では権謀術数(けんぼうじゅっすう)が当たり前だと。

 私はお父様たちからそのような教育はあまり深くは受けていませんでした。ですがおそらくお兄様はワイズ伯爵家の次期当主として徹底的にたたき込まれたのではないかと思います。お父様は私相手では愛情の深すぎるお父様ですが、ワイズ伯爵家当主としての能力も気構(きがま)えもあるはずなのですから。


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