21 食堂にて 04
少ししてお兄様も食堂に来ました。前後して来たパトリシア先輩とロニー先輩も一緒に食事をしようということになりました。私とコニーは人道派の先輩たちに声をかけられて、場所を少し移動していたのですが。私たちがいた場所は貴族派の人たちがいつもいるあたりに近かったそうです。
そしてお兄様たちに、私とコニーがフリント先輩たちに絡まれてディスキン先輩が助けてくれたことを正直に話しました。私は頭に血が上って決闘を申し出てしまったものの、事なきを得たことも。
「エマ。コニー。君たちも反省しているようだけど、あえて言わせてもらうよ。誇りを傷つけられた貴族が決闘を申し出ることは学院でも時々ある。だけど敗北したら全てを失う恐れもあることは覚えておくべきだよ。この場合、君たちは私の名前を出して彼らを追い払うべきだった」
「はい……反省しています……」
「私が目をつけられたのに、エマさんまで巻き込んでしまってすいません……」
お兄様の言葉は穏やかですが、優しくはありません。それは私とコニーにも問題があったため、私たちに反省をうながすためなのでしょう。それは私たちのことを心配してくれているからこそなのでしょう。
「でも彼らのような人がこの学院にもいることとその対処法を教えておかなかったことは、私の落ち度だったね。すまない」
「い、いえ、そんなことは……」
お兄様は謝りますが、いきなり私たちがあんな下劣な人たちから目をつけられるとは予想していなかったのでしょう。あらかじめ教えてもらっていたら、私がお兄様の妹だと言って、あの人たちを追い払えた可能性は高かったのでしょうけどね。
お兄様が微笑みました。
「でも君たちに何もなくて良かった。私はディスキン先輩にお礼を言いに行くよ」
「なら私も行きます」
「私も……」
「ああ、エマたちはここで待っていてくれ。ディスキン先輩の所には貴族派の人たちが集まっているから、あそこにコニーを連れて行くのはちょっとまずい」
「はい」
「は、はい」
確かに食堂も人が増えてきて、ディスキン先輩がいるあたりにも私服でも明らかに身なりがいい人たちが集まっています。あの人たちも貴族派なのでしょう。あそこに平民のコニーが行くことは、自らトラブルを起こしに行くようなものなのかもしれません。
お兄様はディスキン先輩の方に歩いて行きます。その先にいる人たちはお兄様に気づくと目礼しているようです。お兄様は貴族派の人たちからも敬意を向けられているようです。
ですが私もお兄様を尊敬し、その庇護下にあるだけではいけないのでしょう。私もお兄様のように人から尊敬されるようにならないといけないのでしょう。
そしてそれは私の欲求を満たすことにもなるのでしょう。多くの人に私のことを記憶してもらいたいと……
パトリシア先輩とロニー先輩はここに残っています。このあたりは人道派の先輩たちが集まっているようですが、明らかに貴族派の人たちより勢力は小さいようです。この学院に入学するのは基本的に貴族なのですから、当然と言えば当然なのですが。
「でもフリントの馬鹿息子、エマとコニーにも目をつけるとはね。あいつの女あさりで泣かされた子は何人もいるのよ。生徒にもメイドにも。エマたちは無事だったようで良かったけど……」
「君たちもわかっているでしょうが、彼らは貴族の風上にも置けない下劣な人間です。家柄だけはいいので、彼らを擁護する貴族派の人たちもいるのですが。しばらくおとなしくしていたと思っていたのですが、どうやら助けを求める先を知らない新入生を狙っていたようです」
「貴族にもあんな人がいるとは悲しいですけどね……」
「はい……」
パトリシア先輩もロニー先輩もフリント先輩に対して手厳しいです。フリント先輩はそう言われて当然の下劣な人でしたが。
「いっそのこと、あの馬鹿息子を徹底的に叩きのめして、二度とあんなことはできないようにさせるべきかしら……そうすれば馬鹿な連中に対する見せしめにもなるでしょうし……」
「お嬢様。ご辛抱を。ライラ殿下がフリント伯爵家に圧力をかけてくださっているはずです。その効果が出るのを待つべきと愚考します」
「わかってはいるのだけど、もどかしいのよね……」
ライラ殿下とは、アーヴィン王国の第一王女殿下の名前のはずです。お兄様と同学年のはずですが。
そのとんでもない名前に私も少し怯みました。
「あの……ライラ殿下も人道派なのですか?」
「違うわよ。あの高慢なお姫様は貴族派の中心人物」
「ですがライラ殿下も下劣な輩をいつまでも見過ごす方ではありません。あの方も民を虐げる者を嫌う誇り高い方ですから」
ロニー先輩の話からすると、ライラ殿下はディスキン先輩のような高貴な者としての誇りを持っている方なのでしょうか。パトリシア先輩が高慢と言っているのは少し気になりますが。




