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行を跨がず言えること  作者: 烏合衆国
第四章 言われたいことが/ない
41/46

▲▲▲▲の場合④


「……えっと、どうしてついていこうと思ったのか、訊いても?」


 三人で森の中を歩いている。ヴルシェは先頭に立ち意気揚々と進んでいき、二人はその少し後ろを横に並んでついていく。ゲンは隣を歩く少女に、そう言った。カイは声をかけられたことに驚き、投げられた問いにしばらく答えず俯いていた。まだ壁があるなとゲンが前を向き直した頃、


「――わたしは」


 彼女は、口を開いた。


「うん」


「スキルくらいしか、取り柄がなくて」彼女は続けた。「だから、わたしのスキルを使ってくれる人といたいんです――そうじゃないと、ただの穀潰し」出てきたのは、存外強い言葉だった。誰かにかつてそう言われたのだろうか。「だから、あの人にスキルを訊かれて、それでついて来いと言われたら、わたしには行く選択肢しかないんです。あのまま、あのパーティに居続けても、わたしにできることは何もありません」


「“剣の舞”にも、スキル目当てで誘われたんじゃないの? イーヤに聞いたんだけど」


 ゲンの言葉に対して、カイはまだ浮かない顔をしている。「そのはずでした。だけどわたしは戦闘に参加できないから、レベルが上がるのが遅くて、リーダーに、もう他の奴を探すと言われて……」


 彼はその話を聞いて顔を顰める。レベルが上がらない理由、それは戦闘でしか経験値を得られないと思っているからだ。受け売りではあるが、経験値は()()()経験ではない、たとえば魔物の討伐なら、倒した()()()経験を得ることができるのである。そして経験値効率でいえば、せいぜい数十年生きた程度の魔物をがんばって討伐するより、数百年、数千年モノの岩石類のほうがいい。ゲンは“剣の舞”では戦闘にも詠唱手(キャスター)として参加していて、他のメンバーと同様にレベルを上げられたが、彼女の場合はスキル一本でパーティに在籍していた。それで討伐クエストしか受けていなかったら、レベルが上がらないのは当然であり、全ての非はケンのほうにある。


 とはいえ既に終わったことをどうこう言っても仕方ない。ヴルシェが何をする気かは知らないが、限界突破スキルだから、彼女を引き抜いたようである。そしてそれがカイの気持ちと合致したというならもう文句はない。問題は、ヴルシェが今のレベルのスキルを欲しているのかどうかだ。恐らくはレベル上げを要求される。今のうちに準備を始めようとゲンは考える。


「今レベルいくつ?」


 ゲンが訊くと、カイは自分の胸の前に手をかざす。これで二人のスキルは少なくとも基本は同じものと確認できた。「あの、32です」


「分かった」


 低いとはいえ最初の上限、レベル90の三分の一に到達している(必要経験値に対しては大体五分の一くらいだが)。思っていたより低くはなかった。レベル30台はこの年齢で、ふつうに生活していて到達できる水準ではない。そしてそれは戦闘には参加していないが、いろいろなところから経験を吸収する素質を持っているということである。そういうタイプの人間は効率を意識すればどんどん伸びる。


「効率がいいレベルの上げ方、経験値の得方って知ってる――」




「ふっふーん?」




 ゲンが続いて受け売りを受け売ろうと思って口を開いたタイミングで、何者かがゲンとカイの間に現れる。


 というか驚かなくなってきた――新たな魔人である。頭の後ろのほうから生えている左右対称な一対の角。透き通るような金髪を角の付け根で一ツ結にしている。


 勿論、カイはその魔人が現れた途端、身を硬直させ必死に情報を処理しているようであった。そこでそういえばヴルシェが魔人だという、たぶん一番重要な情報を伝えていないことを思い出す。


「あ、ペルメス。耳が早いね」


 ヴルシェが振り返って言った。ペルメスーー前に聞いた名だ。確か、ヴルシェがしばらく一緒に行動していたという魔人である。ペルメスは、「やっほー。立ち会わせてもらうよ」と軽い感じで手を挙げ言う。「というか角ないじゃん。どこかに落とした?」


「ああ、もういいか」ヴルシェは言って、髪をかき上げた――髪が下ろされると、角が三本、きっちり生えていた。結局どういうことなのかよく分からない。見えなくするように何かで覆っているのか、それとも見る者の視覚に干渉しているのか。とはいえそれで、見慣れたヴルシェに戻り、


 カイは、魔人二人の角を見て腰を抜かし、その場に尻餅をついた。



読んで頂きありがとうございます。


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