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行を跨がず言えること  作者: 烏合衆国
第二章 言われたいことが/ある
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ノリア・ヒンヴァ―の場合③


 ノリアがヨーカーの世話をしに外に行ったのを見計らって、ゲンは次にフクシーのところを訪れた。ロイツもノリアも、フクシーのいた修道院に預けられたのだという。フクシーが修道院出身というのは服装から察していたが、三人で出ていったと、ノリアは言っていた。その辺りのことを聞きたいと思ったのだ。




「私が追い出されたんだよ」


「え?」


「もう一回言う必要あるか」フクシーはまっすぐ立って身体のバランスを確認しながら答える。腕を失ったことで、変な力が加わっている箇所がないかチェックしているらしい。「私のスキル、憶えてるよね」


「【二重詠唱】を限界突破して【三重詠唱】――だけど、【復唱】と【輪唱】っていうスキルも使ってましたよね」


 ゲンは答えた。それはいちばん引っかかっていたところだ。サブスキルを四つ持っているロイツにも驚いたが、フクシーの場合は進化前のスキルを進化後も使えるということなのだろうか。そういうもの、だと言われたら納得するしかないが、


「そう。そういうものなんだ」


 そういうもの、らしい。


「詳しく話す」フクシーは身体を捻りながら言葉を続ける。「私のスキル、初期スキル【復唱】。進化スキル【輪唱】。()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()


 スキル【輪唱】を使った際は、雹狼(ヨーカー)と。


 スキル【復唱】を使った際は、雫鼠と。


 一緒に、詠唱していたと思ったのは正しかった――いかんせん、啼き声にしか聴こえなかったため、あの声が詠唱(そう)だったとは言えないが。


「そう、魔物の言葉を一時的に使えるようになる。ただそれが、教会としては看過できないらしい」


 フクシーは上体を反らしながら言う。


「魔物は人類の敵、っていうのが教えだから、その魔物の言葉を使うなど言語道断、っていう論理。どっちもスキルを持ってるし人間も魔物も変わんないとか私は思ってたから、というか今も思ってるけど、院でもスキルは気にせず使いまくってた」


「ええ……」


 見習えない大人である。


「まーそれである日、院長がプッツンして追い出されたの。私が結構相手してたロイツとノリアもついでのおまけで」


 彼女は寝台に腰掛けて一度休憩する。と思いきや、寝転んで首を回し始めた。


「ちなみに、なんで相手してたんですか?」


「そりゃハグれ者同士の馴れ合いだよ」フクシーはくふと笑う。「ロイツは記憶喪失な上にその辺徘徊してる嫌われ者。ノリアは、魔物に育てられたって知れ渡ってからは、ずっと苛められてた。そこは私と同じような理由でね。それでまとめて厄介払いされたってわけ」


「……大変だったんですね」


 何とも、かける言葉が見つからない。二度パーティを追放されたとはいえ、まだ自分はスキルにも環境にも恵まれていたほうだということを痛感させられた。


 そういえば、とゲンは、ノリアの話も含めて、気になり始めていたことを尋ねる。


「ソークさんの話を全然聞かないんですけど、“白い杖”結成時には、ソークさんはいなかったってことですよね?」


「このパーティも、やることなくていつの間にか始まってた感じだけどね」彼女はようやく腕を投げ出して休憩した。「ソークを拾ったのは、そうだ、ちょうど一年前かな。ドワーフだってのは聞いたっけ? 口減らしのために追放されたんだって、ほら、身体でかいから」


 まあそちらの話は本人に聞けばいいかと、ゲンは退室しようとする。


 と思ったが。「ノリアと、昨日の夜とか、何か話しました?」


「んー、特には」


「あの子、昨日魔人と会って――自分も本当は、本当に、魔人なんじゃないかって――」




「おいッ!」




 フクシーは立ち上がって、がしっとゲンの左腕を掴んだ。いつもの冷静、というか楽観的な感じがない。かなり焦っている様子だ。


「本当か?」


「えっと、」


「本当か!」


「ほ、本当です」ゲンは頷く。フクシーは右手で頭をがしがしと掻いた。「――なんで私に言わねえ……」彼女は部屋の戸を開ける。「ソーク! いるか!」言いながら、ソークの使用している部屋に入った。ゲンは慌ててついていく。




「スキル【巌窟王】使用」


 彼が入室した時、ソークは既にスキルを使っていた。


 ロイツも騒ぎを聞きつけてソークの部屋にやって来た。「騒がしいのう。いったい――」




「ノリアが出ていった」




 フクシーは言った。



読んで頂きありがとうございます。


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