第1話 不思議な力
「 …んッ」
僕は見ル野こなた。
今年から都心部の大学に通う学生だ。
「荷物の整理し終えなきゃ。」
部屋にはまだ開けていない段ボールが多く置かれている。
「そういえばもうすぐだったな。ダンジョン探索許可証が取れるようになるのは。」
ダンジョン探索許可証。ダンジョンを潜るために必要な資格のようなもので、これを取ることで一部施設の利用や武器や防具などの道具を買うことが出来たり、買取をしてもらうことが出来る。僕は一週間後このダンジョン探索許可証を取得しに行くのだ。
(なんとしても早く許可証を手に入れなくちゃ、妹のためにも。)
僕の妹は、4年前世界的に発生した事件。「ダンジョン発生大事件」の時に魔物の攻撃を受けてしまい今もなお目を覚ましていない。僕の目標は妹の状態を治し、ダンジョンの発生原因を見つけること。
「その為にわざわざ都心部の大学に入ったんだ。」
僕が通う大学は日本でダンジョンに関する研究が最も進んでいる大学である。
「よし。それじゃ学校に向かうか!」
今日は大学生活初めての日。
(友達とか出来るかな〜。)
離れたところから来たので知り合いは一人もいない。そんなことを考えていると目の前には大きな扉があった。
「 …ダンジョン……」
目の前にダンジョンがあった。まだ入ってはいけないと知りながらも何かに惹かれるように扉に手が伸びた。
『ダンジョン探索のサポートを開始します。』
突如頭の中に響いた声にビックリして手を引いた。
「この声あの時と同じ……」
そうこの抑揚の無い声には聞き覚えがあった。それは妹に怪我を負わせた魔物を倒した時に鳴ったのと同じだ。
「お前は何なんだ。姿を見せてくれ。」
そう思うと声は答えなかったが目の前に半透明の板のようなものが現れた。
「今度は何だ。」
そこにはこう書かれていた。
LV1/500 見ル野こなた 男
種族:ヒューマン
職業:第一職業(侍).第二職業(製作者)
HP:150 MP:100
ATK:20 DEF:10
INT:10 MND:10
AGI:10 DEX:20
LUK:10 SP:5
スキル:刀術(1/10).強欲(1/10).製作(1/10)
武技.魔法.生産:
兜割.奪取.裁縫
「これは今の自分の状態…か?」
戸惑いを感じつつ、目の前の板に触れてみた。それは通り抜けることなく触ることが出来た。
(なるほど、こういうのがあるから冒険者は身体能力が高いのか。)
僕は納得した。冒険者とりわけその中でも上位にいる人達は人間離れしていると聞いたことがある。とても強い力を持つ者、どんな攻撃も効かない防御力がある者、素早い身のこなしで魔物を屠る者。魔物を倒すことで身体能力が高くなる気がするのはこういう訳か。
「ん?このSPってのは何だ?」
他の値よりも低いものがあるのがわかった。それに触れると『振り分けてください。』と声が聞こえた。後ろを振り返ってもやはりいない。僕は5あるSPをスキルに振り分けた。
LV1/500 見ル野こなた 男
種族:ヒューマン
職業:第一職業(侍).第二職業(製作者)
HP:150 MP:100
ATK:20 DEF:10
INT:10 MND:10
AGI:10 DEX:20
LUK:10 SP:1
スキル:刀術(3/10).強欲(2/10).製作(1/10)
武技.魔法.生産:
兜割.居合.百舌鳥の早贄.奪取.情報開示.裁縫
刀術は昔、剣道をやっていたから手に入ったんだろう。そして…
(強欲)
強欲は初めて魔物を倒した時に鳴ったものだ。
(スキルだったのか。)
(そういえばこんなこと話題にならないと変じゃないか?)
自身の能力表示。こんなことが出来ればすぐに広まるんじゃないんだろうか。……もしかして今こんなことが出来るのは出来るのは僕だけなんじゃないか?
「……ふぅ……とりあえずバレないようにはしておこう。変なことに巻き込まれそうだし。」
「まぁこれでダンジョン攻略もしやすくなるだろ‼️」
そう思いながら再び学校へと向かい出した。
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