1 異世界
俺は、坂口正弘。小学五年生だ。
両親と妹の四人家族だ。
その日は、学校が早く終わったので、妹のお迎えに、幼稚園まで行った。
学校が早く終わったりして、時間が合う時は、幼稚園まで妹を迎えに行く。
妹は、俺が迎えに行くと、凄く喜んでくれる。
幼稚園の門へ着くと、お迎えのお母さん方が数人いた。
「こんにちは!」
俺は、お母さん方に、挨拶する。
何度も妹を迎えに来てるので、門の所で待っているお母さん方は、大体顔見知りになった。
「あら、正弘君。こんにちは!今日もお迎えなのね。」
「はい。」
「優しいお兄ちゃんで、いいわね!」
「あ…いえ、俺、妹が可愛いんで。」
俺と妹は、六歳差だ。
そのせいなのか、俺は、妹が可愛い。
周りのクラスメイトには、妹のいる奴もいるが、うちほど仲良くは、していないみたいだ。
クラスメイトからは、“シスコン”と言われた事もある。
何と言われても、可愛いものは、可愛い。
“シスコン”でも何でも、好きに呼ぶがいい。
ふはははは!!うちの妹は、可愛いぞ!!
やがて、玄関が開き、園児達が出て来る。
少しして、妹が出てきた。
妹は、俺を見つけると、ニコニコしながら駆け寄ってきた。
「おにぃちゃん!おむかえきてくれたー♪」
「洋子!お帰り!!」
俺は、妹…洋子を抱き締めた。
ああ…洋子!!俺の可愛い妹!!
「エヘヘ♪おにぃちゃん♪」
「さ、帰ろう、洋子!」
「うんっ!」
俺は、洋子と手を繋いで家へ向かった。
「おにぃちゃん。きょう、よーちえんで、さやかちゃんとおえかきして、あそんだんだよ。」
洋子は、ニコニコしながら、幼稚園での事を話してくる。
うんっ。相変わらず可愛い!
彩花ちゃんは、洋子の親友だ。
幼稚園の話題には、度々出て来る。
「そっか。今日も、幼稚園楽しかったんだね。」
「うんっ!」
幼稚園での話をしながら、歩いていると、突然足元が光り出した。
「え!?何だ!?」
「おにぃちゃん!?こわい!!」
光は、俺と洋子を包み込もうとする。
洋子!洋子は、守らなきゃ!!
俺は、洋子を抱き締めた。
「いやぁああーーっ!!おにぃちゃんーーっ!!」
「洋子!!」
俺達は、光に包まれ、気を失った。
次に目が覚めた時、俺は、洋子を抱き締めたまま、真っ白な空間にいた。
「洋子!!」
俺は、真っ先に洋子を確認した。
「おにぃちゃん…。ここ、どこ?」
洋子も気が付いてたみたいだ。
「洋子!大丈夫か!?どこも痛いとこ無いか!?」
俺は、洋子の全身を確認する。
「うん。よーこ、どこもいたくないよ!おにぃちゃんは?」
「ああ…。俺も、大丈夫だ。」
取り敢えず、洋子に怪我とかは、無い様でホッとした。
「おにぃちゃん…。ここ、どこだろ?」
「うーん…。」
洋子に言われて、改めて周囲を確認するが、ひたすら真っ白で、何も無い。
『坂口 正弘君、洋子ちゃん。ようこそ、僕の世界へ!』
突然、どこからともなく声がした。
「え!?誰!?」
『う~ん…。分かりやすく言うなら、“神”かな。』
「「神様!?」」
俺は、神様の存在については、半信半疑だ。
両親は、神棚にお参りしたりしてるので、俺達も一緒にお参り位はしている。
でも、日課的にしているだけであって、信じているのとは、違う。
『突然ですまないけど、君達二人には、僕の世界“フェミニール”へ行って欲しいんだ。』
え?何処に行けって?勝手に俺達を連れて来て、何言ってるんだ!!
「おい!何勝手な事言ってるんだよ!俺達を元に戻せ!」
俺は、声の主に怒鳴った。
『ごめんね、それは出来ない。』
「何でだよ!!」
『君達は、言わば、“複製体”なんだ。』
「え…!?」
『元の世界には、君達のオリジナルがそのまま生活している。だから、君達を元の世界に戻すと、君達が、二組存在する事になるんだ。』
「…じゃあ、俺達は、本物じゃないって事なのか?」
『すまない。言い方が悪かったかな。君達は、“本物”だよ。勿論、もう一組の君達も本物さ。両方とも本物なのさ。』
「…どういう事だ?」
『詳しく説明して、理解出来るかは、分からないけど。君達二人は、元々かなり強い“気”を持っている。それを二つに分けさせて貰ったんだ。分けた“気”は、やがて成長して、元の強さに戻るから、問題は無いんだ。でも、分けた“気”を再び一つには、出来ない。だから、オリジナルが、二組存在してる形になるんだ。』
「……それで、俺達に、どうしろって言うんだ。」
『…実は、僕の世界“フェミニール”では、“気”の総量が不足していて、“魔物”が増加しているんだ。このままだと、僕の世界の住人が、絶滅するかもしれないんだ。それで、君達の世界の神に頼んで、“気”の強い魂を僕の世界へ転移させて貰ったんだ。それで、君達にお願いしたいのは、僕の世界で、生活して貰う事なんだ。』
「…魔物と戦うのではなく、生活?」
『うん。君達は、存在するだけで、僕の世界に“気”を補充してくれる。君達の魂は、元の世界と繋がっているから、君達を介して、“フェミニール”に“気”が補充されるんだ。そうすると、これ以上の“魔物”増加を防ぐ事が、出来るんだ。』
「…でも、魔物のいる世界で、ただの子供である俺達が、生き延びられるのか?大体、どうやって生活していくんだよ!せめて、妹…洋子だけでも元に戻せないのか?」
『すまないけど、君達を元には、戻せない。でも、君達は、特殊な力を持ってるだろ?』
「何言ってるんだよ!俺達に、特殊な力なんてないぞ!ごく普通の子供だ!」
『あれ?…そうか、まだ、覚醒してないのか…。ちょっと待って!』
すると、俺達は、光に包まれ、頭の中に何かが流れ込んできた。
「え…これは…?」
『これで、覚醒したはずだ。正弘君は、”放出タイプ”。洋子ちゃんは、“治癒”特殊タイプだね。ああ…それと、僕からは、“アイテムボックス”と“物質召還”をプレゼントするよ。使い方は、さっき一緒にインストールさせて貰った。魔法も存在する世界だけど、君達は、元々全属性の適性がある。僕の世界の住人は、多くて三属性位だから、中々チートだね。』
さっき頭の中に入ってきた“知識”によると、俺は、気を変換して、放出し、物を破壊したり消滅させたり出来るみたいだ。
洋子は、あらゆる怪我や病気を治す能力のようだ。
“物質召還”…元の世界にある物を“気”を使って召還出来るらしい。
とりあえず、衣食住は、何とかなるのか?
“アイテムボックス”…無限収納。時間停止型。動物は収納不可。
魔法は、イメージすれば、使えるみたいだ。
『“アイテムボックス”と“物質召還”は、人前で使わない方がいい。
それを持ってるのは、君達だけだ。
“フェミニール”は、大体、君達の世界で言えば、中世レベルだから、召還する物にも、気を付けて欲しいかな。
あと、魔法だけど、普通は、“詠唱”しないと使えない。
だから、使う時は、イメージして、言葉にする事をおすすめする。
どうだろう、僕の世界で、生活してくれないか?』
「…もし、断れば?」
『このまま、ここで、生活して貰う事になる。でも、僕としては、“フェミニール”で生活して欲しい。その方が、“気”を補充しやすいんだ。今までとは、違う世界だけど、ここと違って色んな事を体験出来るしいいと思うよ。“フェミニール”には、人族の他に、獣人族、妖精族、魔族と色々な種族がいるんだ。そういった種族とも交流してみて欲しい。』
「え!?妖精さんがいるの!?」
洋子が、“妖精”という言葉に、食い付いた。
『ああ…!妖精もいるよ!どう?興味あるでしょ?』
「うんっ!よーこ、妖精さんにあいたい!!」
確かに、ここに居れば危険は無いかもしれない。
でも、何も無い、ただ白いだけの世界は、どうなんだろう…。
「洋子。洋子は、どうしたい?」
「…よーこは、おにぃちゃんといっしょなら、どっちでもいいよ?でも、妖精さんには、あってみたいかも…♪」
俺と二人きりの世界…。
普通に考えたら、俺の方が先に寿命を迎える。
その後は、この真っ白な世界で、洋子は、一人ぼっちだ…。
兄妹じゃ、結婚出来ないから、子供も望めない。
洋子も、成長したら、誰かと恋愛して、結婚したり、したいだろう…。
…あれ?何か。胸が“チクリ”とする。
何でだ?
いや、とにかく、この真っ白な世界で、洋子を一人ぼっちにはしたくない。
「洋子。俺が、洋子を守るから、一緒に“フェミニール”へ行こう。」
「うんっ!よーこ、おにぃちゃんと一緒にいく!!」
『決まった様だね。じゃあ、僕の世界へ転移させるよ!安全な草原に転移させるから、安心して!それと、“アイテムボックス”に、地図も入れておくね。近くの村までは、半日位の場所だから、村に行くも良し、二人で草原で暮らすのも良しだよ!頑張ってね!あと、もし、僕と話したい時は、教会に行って神像に祈ってね!それじゃ、良い旅を!!』
俺達は、再び光に包まれて、光が消えた時は、既に草原に立っていた。




