「2」はじまり
「……知らない天井だ」
ぽっかりと口を開けておはようの第一声。それは幼い頃に見ていたテレビアニメのセリフだ、そのシーンだけを鮮明に覚えているが、そのアニメの内容はそこまで知らない。
アニメの題名をなんとなく思い出そうとしていると、自分の着ている服が変わっている事に気づいた。白い水玉模様の黄色いパジャマだ、かわいい。
それだけではない、フッカフカのベッドと枕、間違いなく自分の住んでいたアパートではなかった。広さは同じぐらいだが、明らかに清潔感が違う。
取り合えず上体を起こす、すると体がいつもより軽いことに気づき、ベッドの高い質に思わず声をあげてしまった。
「凄いなぁ、お金持ちの人のベッドって」
「気に入って頂けて何よりだ。さぁ、これをお食べ」
私が目をぱちぱちしていると横から何かが差し出される。食べやすそうに切られたリンゴだった。
「あっ、わざわざどうも~……んー! おいしい! そしてあなた誰ですか?」
意外と冷静だった事には自分でも驚く。私はリンゴを咀嚼しながら、若干ベッドの反対側に後ずさった。
見るとそこには知らない、しかも男の美人さんがいた。
白い短髪に青い目、白い肌。スーツの深い黒がこの人の美しさを際立たせていた。
(っていうかそもそも誰⁉ ここはどこ!?)
「起きてくれてよかったよ。でもまだ安心できないから寝てて、リンゴはここに置いておくから食べるように、君、何も食べてないんだろう?」
ゆっくりと立ち上がり、その人は私に爽やかな笑みを見せた。あまりにも綺麗だったため、思わず顔を反らしてしまった。
雪のような白い手がドアノブに触れた、するとその人は「あ、そうそう」と小言を言ってから。
「取りあえず命を助けたお礼は、体で支払ってもらおうかな?」
ふふっ、と、もう一度爽やかに笑って見せて、その人は部屋から出て入った。
「……」
鏡を見なくても分かる、今の私の顔は凄く青いだろう。
正直、冷や汗が止まらなかった。
 




