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「14」一日目④
「……」
現在、私はキッチンの隙間をのぞき込んでいる。
理由は簡単、雇い主の依頼でゴキブリを殺せと言われたからだ。
別にそれ自体に不満があるわけではない。メイドさんとはいえこういう汚れ仕事をする時もあるだろうし、一応雇われているため断るなんて出来やしない。
「でもなぁ……いくら何でも初仕事が殺しっていうのはなぁ、ちょっとなぁ」
チクリ。胸の奥に刺さる物を感じた私は、思わずその拳を握りしめた。
鮮明に思い返せる血の匂い、骨を折り肉を潰すあの感覚、少しずつ衰弱していく人間の表情。
思い出すだけで体中の血が騒ぐ、暴力の血が、自分の抗えない事実が。
「……」
結局、私は私のままなのかな。弱音を吐きかけた所で、私は深呼吸した。




