死んでも「転生」しない俺。
勢いよくベッドから飛び起きた。夢、だったのか……? 胸のあたりに違和感が残っている。刺さった、のか? でも、生きてるし……。
「お目覚めのようね」
「……あんたは?」
俺に話しかけてきたそいつは、長く綺麗な黒髪をなびかせた。狐のような鋭い目が俺の胸を捉える。
「……俺の胸、気になるか?」
「ならないわ」
即否定された。それよりも、だ。お前誰だよ! あと、ここどこ! うさぎやくまのぬいぐるみが並べられたベッド、ピンクのカーペット、甘い香りから女子部屋だとは推測できるが、俺がそんなところで寝るはずがない。考えれば考えるほど、混乱する。
「どうやら、状況が掴めていないようね。ここは私の部屋。あなたは、気絶して倒れていたからここまで運んできたの」
「気絶って……。俺、刺されたと思うんだが」
「ええ。あなたの服は血塗れだったわ。服は元に戻して置いたから」
戻したって……。おかしい。綺麗すぎる。いくら丁寧に直したとしても、ここまではいかないだろ。血がついていたとは思えないほどの色の自然さに、破れたとは思えないほどにシワひとつない生地。
「……あんた、何者だ? プロのクリーニング屋、とは言わせないぞ」
「私のことを知りたいなら、まず、あなたから名乗りなさい」
「俺は、佐藤。佐藤伊月だ」
「私は、暁花音」
暁と名乗ったそいつは、椅子に腰掛けると、足を組んで静かに微笑んだ。
「佐藤くん、君は不死身のようね」
「不死身……?」
「それがあなたの能力」
待て待て。何を言ってるのかわからない。
「何が言いたい?」
「詳しく話すわ。ここは異空の地。超能力者を保護する施設よ」
「ち、超能力!? 俺がか?」
「ええ。あなたは死なない。それが超能力に該当すると判断されたわ」
異空の地? 超能力? 転生したわけじゃないよな? ぶっ飛び過ぎててよくわからん。
「進化論。人類はね、昔から進化し続けてるの。私たちはその進化の形。新たな新人類なのよ」
ほえ? 暁の話は続く。
「人類は楽をするために効率化を図った。その結果、キカイが生まれ、自然を壊した。じゃあどうするか、自然を壊さず、楽して生きれるように進化したの」
「つまり、働かない世界に慣れるため、超能力を持つように進化したって言うのかよ!」
「ええ、その解釈であってるわ」
そんな話、授業で一度も出てこなかった。飛躍し過ぎた暁の説明では完全に理解するにはあまりにも不十分すぎる。
「そんな新人類を研究、解析する為に作られたのがこの施設。異空の地よ」
「じゃあ、ここにいるのはみんな超能力者って言うことか」
「そう。私は時間を操れる。あなたの服も時間を戻して再生させた」
納得……できるかよ! 死んだと思ったら、不死身の能力で生きてて、新人類を研究する異空の地に保護された? なんだよそれ……。
「俺はこれからどうすればいい?」
「それも説明する。部屋を出るわよ。ついてきなさい」