エピローグ:元人並み少女の逆転生
君がいるそれは私にとって何よりも大事なこと。
何時でも私の事を大切にしてくれる存在種族も位も関係ないそんな私とアルラウネの関係。
何時でもいてくれてお互いに力になれる。
「だから今……私は貴女を助ける。」
美咲はゲートを伝い魔界に帰ってきていた。
玉座に腰掛け、テレパシーで呼んでおいたある部下を待つ。
コツコツ……と階段を登ってくる音が聞こえてきたきっと彼、ゼロルドであろう。
そしてゼロルドが美咲の前に到着し跪いた。
「美咲様……用とは何でしょうか……」
美咲は儚げな顔でゼロルドを見ながらこう告げた。
「私……この魔界を離れようと思うの」
「なっ!?!? 何を考えているんですか美咲様……」
当然のリアクションがゼロルドから帰ってきた。
「そうだよね……ごめんねゼロルド君……でも私ここから離れないと出来ないことがあるの本当にごめんね」
「み、美咲様……」
ゼロルドは何かを悟ったかのような顔をする。
「うー! うー!!」
「あはは、ごめんねアルラウネ……食べさせてあげる」
美咲は器となったアルラウネにご飯を上げる。
「そういう事だから……ゼロルドくん……ひとつ頼みたいの」美咲はゼロルドに目も向けず、アルラウネの世話をしながら彼に頼み事をする。
「貴方に、魔王を頼みたいの」
「ななな!?!?ままま魔王ですと!?!??」
「何を仰って!!?」
「あはは、そうだよね……でも君にしか頼めないんだ……お願い」
美咲は真剣な表情でゼロルドへ訴える。
「……なるほど……本気のようですねでも私の今の力じゃ……うっ!!!」
美咲がゼロルドの胸へ手を当て全ての魔力を彼へ注いだ。
「うああああああああああ、、あああ!!!!」
彼の身体に電流が流れるような痛みが走った。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「ふふ、流石だねゼロルドくん……私に全力の信頼を置く君なら耐えられると思った……ちゃんと使いこなしてね私の力……流石に身体能力は上げられなかったけどその魔力があれば大丈夫……貴方なら立派な魔王になれるわ」
そして、美咲は華奢なその身体でゼロルドの屈強な身体に抱きついた。
「頑張ってね」
「ちょ、ちょ……美咲様……お、おやめ下さい」
そして美咲が数秒間抱きしめた後別れの言葉を告げ事務的な言葉を放つ。
「ゼロルドくんさよなら……」
「よし、下がっていい」「この後私が最後の集会を務め、ゼロルド君。君へ継承の儀を行う待機してて。」
「美咲様……はっ!!」
ゼロルドは美咲を後にして自室に戻る。
「ふぅ、……これでいいよね……これで魔界にも迷惑をかけない……でもほんとに色々あったよねアルラウネ……」
「うー!!」
「ふふ、アルラウネ、魔王様にあったり勇者軍と戦ったりアルデ君と出会ったり……ほんとに色々あったな……」
「よし、行こう!! アルラウネ!!! 私達の未来へ!!」
「うー!!!」
その後美咲は魔物達を前に周回を開いた。
魔王城の演説場にワラワラと集まる魔物達。
そしてそこには学生服を着た美咲が居た。
「な! 魔王様変な服きてやがるぜ」
「いや、俺はめちゃくちゃ可愛いとおもうぜキヒヒ」
「馬鹿野郎……あんな服全然魔王の威厳ねぇじゃねえか……」
「ばか!! 聞こえたら殺されるぞ」
(良かった……戦闘服の格納バックパックに学生服入っててやるな!神様)
『聞いて!! みんな!!! 私神尾美咲はこの世界の人間じゃ無いです!!!』
ザワザワ……
「何だって!?」
「おいどういう事だ!?」
案の定魔物達は騒ぎ出した。
「私はここより遥かな世界から来た一人の人間なの!!! でもあなた達と戦えてとっーーーても!!
楽しかった!! でも私。元いた世界にやり残した事があってそこへ帰らなきゃならないの!!!」
「美咲様……」
『だから!! あなた達とは今日でお別れ!!! ありがとう!!! じゃあね!!みんなの事は絶対忘れない!!!』
「美咲様!!」
「美咲様!!」
みさきの元へ五番隊の皆が集まる。
キュピー!!
「ドラドラ!!うん、うんありがとう!!」
「レグリス君! ありがとうね」
「そんな……急すぎですよ美咲様ぁああああ」
涙をうかべるレグリスが耐えきれず美咲へ抱きつく。
「おーよしよし、きっとまた会える!!」
「本当ですか? またあいにきてくれますか?」
「うん!!!」
「へへ、もう一度あんたと戦いたかったけど残念だぜ……」
「ゲロス君!! へへ今度からは強くなったゼロルド君と2人で共に鍛えあってね!!!」
「み、美咲様……」
切ない表情浮かべたゼロルドが美咲に声をかける。
「ゼロルド君……あはは!! そんなかおしないしない!! 笑って!!せっかくのイケメン魔族が勿体ないよ!!!」
「美咲様!!!! ずっとずっとす……」
「おーーっと美咲、帰るのはいいけど私の研究室はちゃんと」
ゼロルドを遮りリミィが口を出す。
「あー大丈夫大丈夫……設計部にちゃんと頼んといたからふふ、リミィちゃんも色々ありがとう」
「じゃあ、みんな、そしてゼロルド君……魔界を頼んだよ魔王の力、あなたに託すね……いい魔王になってね……」
「ハイ、美咲様これより私がここを収めます絶対にこの力守り抜きます」
__フォオオン。
「なっ!? これが魔王の力……なんてパワーだ」
美咲が有する二つ力の内の1つ『魔王』の力をゼロルドに継承する。
そして、その後美咲の体が徐々に消失して行く__。
「美咲様!?……身体が」
2つの魂が美咲の周りをクルクルと周り美咲の身体は神々しく煌めいて消えていく。
そしてゆっくりと天空に美咲の身体は登っていく。
「バイバイみんな……」
「美咲様ー!!!!!!」
「みさきーーーー!!!!」
『「美咲様!!「美咲様!」』
そこで美咲の身体が消失し、美咲が頭に付けていた自作のアクセサリーが地面に落ちた。
「……美咲様っ……」
ゼロルドがそれをぎゅっと抱きしめる。
こうして、嵐のように登場した身体能力最強少女の魔界での物語は幕を閉じ、現実世界へ逆転生し『神尾美咲』は新たな人生を開始する。
そして――。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※
《現代日本》
美咲は新たに生を受け、『元神美咲』として元いた現実世界へ転生し、今日で美咲は15歳となり中学三年生になる。
「まって下され〜おねーちゃん〜ー」
「いまいきますじゃぞぉ〜」中学生くらいの女の子が姉へ返答する。
「ララ!! 支度はお姉ちゃんが出る前から済ませときなさいって言ったでしょ!! まったく……」プスんと少女は頬を膨らませて妹を怒った。
「のじゃぁ…………」少しグズりながら妹は姉へうるうるした瞳を向ける。
「むぅ……て言うか!! ララ、なんなのその口調……めっちゃ変!! 時代劇とかの見すぎでしょ!!だから遅れるんだよ馬鹿!!」
「うるさいなあ!!お姉ちゃん!! お姉ちゃんは馬鹿だから時代劇の良さがわからいのじゃあ!!」妹も負けじと姉へ対抗する。
「はいはい、分かった分かった遅刻するから急ぐよ、ララ」
「はいです!!」
「新学期なんだから気合い入れてくよー!ララ」
「うー!!」
息の合った二人の姉妹はそう言って、家を飛び出し美咲が掲げた手のひらにララがペチンとハイタッチをする。
「ふふ、なんかいい事ありそうだね」
「ですのじゃー!!」
そして、急ぐ2人の前に自分たちと同じ歳くらいの少年が一回り年上ともめていた。
「あぁ? 俺らは悪くねぇだろテメェ舐めてんだろ」
「私は何もおかしい事は言っていない、愚かな事をしている君たちに親切心からゴミを捨てろ、と注意したまでだ」
「さあ早くゴミを拾え」正義心に溢れるその少年は恐怖に屈せず注意を続けた。
「るせぇ!! ガキが調子乗りやがって!!」
__ギギッ
「痛てぇ!!」美咲がヤンキーの腕を掴み凄まじい力でひねり揚げる。
『なんだこの女!? ひぃい……』絡んできたヤンキーは少女の力に怯み猛スピードで逃げ出した。
「ごめんね私……」
『身体能力が高すぎるのが取り柄の普通の女の子なんだ!!』と逃げ去る男に言い放った、そして事が終わると決めポーズをとった。
「あ、初めまして!! 君凄いね!!」
美咲は丸くて、きらきらと光る濁りのない瞳で少年にそう言った。
「いや、別に凄くはない……不快に思ったから注意しただけだ、君こそ凄いな」
「美咲」
「え!! なんで私の名前知ってるの!? そうだよ私美咲よろしくね!!」
「そんな君の名前は?」少年へ名前を聞き返す美咲。
「私は……アル、祐士アルだ よろしく」
「よろしくね!! アルデ君!!」
「姉様……アル君だよ!! 教えて貰ってすぐ様間違えるの失礼ですよ」と、妹がツッコミを入れる。
「そっかあはは!! よろしくねアル君!!」
「よろしく、美咲」
「うん!」
(良かった……アルデ君もこっちに来れたんだね……良かった、本当に良かった……)
「あれ? なんで私泣いてんだろ……それに私今何考えてたんだ? アル君とは初対面の筈だよね……寝不足かな、はは」
「俺もなんで初対面なのに名前知ってたんだ……どっかであったっけ……」
__……キーンコーン、カーンコーン。
「あっー!!」
「あっ」
「のじゃあ!!」
目の前に映る学校のが予鈴を鳴らした。
3人が一斉に予鈴の音で学校を振り返る。
「ヤバい!! 予鈴だ!! 皆ガチ遅刻しちゃう!!」
「ヤバいですじゃ!!」
「行こう!!『アル』君!!」
「は、はい!!」
予鈴に慌て3人は目に映る学校を見つめ3人は学校へ向け駆け出していく。
普通じゃない自分からと普通な世界へと「『元』人並み少女」は「人並み少女」へ転生した。
__神尾美咲の本当の物語は、ここから始まる。
本当の自分を探す果てしない人生と言う旅を。
彼女はきっと見つけられる、普通の世界で。普通の人間として普通じゃない彼女だけの幸せな未来を。




