64話 アルベドの意思
空へ飛翔した美咲はアルラウネの微かなオーラを辿り、そして遂に美咲はアルラウネの本体を目視で捉える事が出来た。
空から見上げたアルラウネは敵によって柱に設置された魔法具に手足が魔法陣で拘束されており身動きが取れない様子でだった。
そして、敵の姿は周りに無かった、今がチャンスと言った所だった。
美咲はアルラウネを一刻も早く取り戻したいと言う一心から頭でなく心。つまり直感で後先考えず瞳に映った、拘束されて苦しんでいるアルラウネを救出する為に急降下する。
「今度こそ見つけたよ!! アルラウネ!!」
届けと言わんばかりに美咲は片方の手を開きアルラウネへ向け、手を差し伸べた。
「み、美咲……」
拘束されたアルラウネは、空から落ちてきた美咲に目を向ける。
「行こう!! 帰ろう!! アルラウネ、私気づいた!! 私貴女のことが、貴女のおかげで私ここに居られたのだから」
美咲は涙をボトボトと零し、そしてアルラウネへ胸の内で留めていた物も涙と共に言葉になって本音もボロボロと零れてしまう。
「み、美咲ぃ……妾も帰りたい、お主と……一緒に……」
拘束されたアルラウネは美咲を見るや、衰弱したその力で身体に縛り着いている魔法陣をギギギとこじ開ける。
これも美咲が来た事による精神的活力がなせる技だろう。
そして、最後の力によって拘束から脱したアルラウネの右腕が美咲から差し出された手に向かいそらへ手のひらをめいいっぱい広げ掲げる。
「アルラウネ!!」
「美咲ぃい……!!」
__バシッ!!
がっちり美咲とアルラウネの手と手が繋がれた。
「よっし!! じゃあ行くよ、アルラウネ!!」
そのまま、美咲は上空へと加速し、空へ再び飛翔する。この一連の動きは重力さえ無視する強靭なる美咲の身体能力がなせる技であった。
バリン!!
美咲の飛翔の勢いで手足に付いていた拘束用の魔法陣が解除されアルラウネが自由となり無事、二人で上空へ飛翔する事が出来た。
……と思った、矢先美咲が事態の深刻さに気づいてしまう。
「良かった……ゼロルド君の所へ向かって回復スキルがある人にお願い……して……」
「いやあああああああああああああぁあああ」
アルラウネを救出して一安心出来たかと思った美咲が目にした物は繋いだ手から先が無くなり、身体の一部と化したアルラウネの姿であった。
「そんな、……なにが…起こって…いやだいやだ!! もう私一人になりたくない」
パーツと化したアルラウネの手でさえ大事に握り、今起こった事態を飲み込めずあまりのショックに泣きじゃくり、嗚咽を吐き浮遊したまま空中でうずくまってしまう美咲。
ガタガタと身体は震え、今までに感じた事の無い恐怖と喪失感を感じ、遂には疲弊した精神により空を飛ぶ事を維持出来ず地面に落下してしまい動けなくなる美咲。
「ヤダ……ヤダ、私……こんなつもりじゃあ……」
頭痛に苛まれ、鼓動が何倍にも早くなり目の前が薄暗く感じるくらいに精神が絶望と言う恐怖に侵食される。
そんな美咲の耳に突然見知らぬ声が届いた。
「見つけたよ、ただのルビナスでありながら、我々アルベドを恐怖に落し入れる凶悪なる魔王の少女……美咲」
「……うっ、うぐっ」
美咲は朦朧とした意識で相手の姿を捉える。
黒きローブに身を潜め血に染った、剣を携えた人物が目に映った。
「……っ!!」
美咲が剣に付着したアルラウネの血液であろうモノに反応する。
__そして、その者が美咲の前に立ちそっと口を開く。
「……何故貴様はアルベドとして生を全うしないのだ……お前の様な裏切り者がいるから……」
美咲は先程の精神的ショックで半分相手が言っていることが耳に入らず、目の前に突然現れたこの人物が自分へ向け何を言っているか理解出来ずにいた。
__スチャ
そして美咲の喉元へ鋭利な剣がその者によって、かざされる。
「うっ……うう」
きっと自分の命を狙っている者だとは突きつけられた武器により理解は出来たが半ばもう抵抗する精神も残されていなかった。
「フン、噂に聞く威勢はどうした魔王。貴様などに哀れみなど受けぬ今ここで……私が……」
「貴女を殺す。」




