59話 魔王と勇者
理不尽とも言わんばかりの、美咲の怒りを買ってしまった勇者は八つ当たりと言わんばかりの一撃を食らってしまった。
美咲は華麗に空中で回転しそして、その遠心力の軌道に任せ、勇者の身体目掛け全力でかかと落としを決め込んだ。
「――あんたら勇者たちって本当に、ウザイ。」
――ドゴーン!!
ゼノスは美咲のかかと落としにより地面に叩きつけられるそしてその衝撃で地面はバキバキと音を立てながら崩落死する。
そして、勇者に向けた殺気と打って変わって美咲が部下へ眩しい笑顔を向け、口を開いた。
「間に合ってよかった!!探索ご苦労様、ありがとうアルラウネ!!」
「美咲様!! 有難いお言葉、しかと胸に刻むのじゃ!!」
アルラウネの危機に間一髪で駆けつけた美咲。自分の窮地を救った美咲に対し、アルラウネはお礼を告げる。
「来るよ、アルラウネ!! 構えて!!」
と、アルラウネへ美咲が勢いよく声を発した。
その言葉の勢いの強さからアルラウネは事態を再認識する、敵は勇者軍最強の男ゼノス。四天王、それに魔王である、美咲でさえ彼の前では油断は許されない。
「了解ですのじゃ……」
――シュルル……
再びアルラウネの右腕が変形し剣を形作る。しかし左手は先程の爆撃により負傷している為、戦闘で使い物にならない状態であった。
「ぐっ、……治癒魔法に充分な時間さえあれば……」
短時間の治癒魔法であった為、応急処置にしか至らず、腕へのダメージは完治して居なかった。この重要な戦闘に不利をきたす、身体にアルラウネは頭を抱えた。
「ハァ、ハァ……アルラウネ? 無理してない、私分かるよ……」
「み、美咲 大丈夫なのじゃあ!?」
アルラウネは動揺し、敬称を付けるのも忘れ声を荒らげ返答した。
そして、その言葉に対し美咲は優しげな表情を浮かべる。
「アルラウネ……無理しなくていいよ、私は貴女が大切なのここは私一人で終わらせるから皆の所へ早く逃げて」
美咲はアルラウネの小さい体をぎっと抱きしめ精一杯の想いをアルラウネへ伝えた。
「アルラウネ、思い返せばずっと貴女は私の傍に居てくれたよね、だからこれからもずっと私のそばに居て」
「の、のじぁ……美咲ぃ……」
魔王美咲のその想いは、確かに伝わりアルラウネは自分の為、そして生きてと願う美咲の為勇者のさっき迫るこの場所から戦術的撤退をする決断をした。
「分かったのじゃ、美咲それがそちの願いとあらばこのアルラウネ・ゲルス・ゲノガーテその命令しかと受け容れたのじゃ!!」
――バサッ!!
魔力により構築された翼でアルラウネが天空目掛け勢いよく飛翔した。
「絶対……死なないでね……アルラウネ。」
アルラウネが飛び去った後、美咲はそう一人呟く。
この魔界に来てからという物長い時間彼女に支えられていたことに気づき、彼女の大切を再確認する美咲。
そして、それと同時にこれ以上親しい人、大切な人を失いたくないとそう強くアルラウネの身を案じ想い続けた。
――スッ!
「あの魔物は俺の情によって、見逃してやった女、次は外さない本気で行くぞ、覚悟は出来たか?」
美咲を魔王であると、先程の一撃から認識したゼノス。
確かな殺意を込め、美咲の命を奪おうと剣を構え美咲の動向を伺った。
――しかし。
美咲は天を仰いだまま、動かない。
「こい、……フンッ、来なければ俺から行かせて貰うまでだ!! はぁああ!!」
美咲は勇者の反撃に伴いすぐ様身体能力強化で加速し、猛スピードで地面に突き刺さっていた勇者の大剣を身体の慣性力であっという間に抜き去り、刃を勇者の喉元に突き付けた。
「油断しないで、貴方死ぬよ?」
喉元に突き刺さった、剣の刃がじわりじわりとゼノスの皮膚を切り裂いていく。
――ポタリ、ポタリ。
勇者の血液が喉元をつたり、彼の服にまで血液が染み渡った。
「くっ……」
美咲がゼノスの喉元に構えた剣を振り下ろさず、彼の次の動きを待っている、仕留めないのは時間稼ぎか、それとも―――。
――この奇妙な美咲の挙動は勇者をただ、翻弄した。
明日の分も原稿あがってます!俺が異世界転移しない限り明日公開予定です。
また見てね♪
次回☆『圧倒』