50話 四天王現る
「アルラウネ……遅いな」美咲が魔王の玉座に座り、使えるようになったばかりの魔法で粘土のような立体物を作る遊びをしながらアルラウネの帰りを待つ。
「出来たうさぎ!!」ばーんと魔力で形作ったうさぎを誰もいないのに披露する美咲。
「……つまんないや」
コツ……コツ……コツ。
「……!?」階段の下から何やら足音が聞こえてくる。
「アルラウネ……?」美咲がその足音の主に対し、返答の声を求める。
「……ケッヘヘ……違うねぇ……俺は」
『魔王四天王の一人ゲロスさ……クヘッヘ』
気持ち悪い笑い声と、とても強そうとは思えない枯れ木の様な容姿……これが私を護衛する四天王?と鼻で笑ってしまいそうになる。
「ゲロス? 我は美咲、新たな魔王なるぞここは王の間許可なしで入ってもらっては困るんだけど」美咲は油断せず魔王らしく返答した。
「らしいな……一応俺らはアルラウネの奴からのテレパシーでちくいち情報共有をしてっから大体状況は掴めてるしお前さんのその禍々しいパワーも把握してるよ」
「……ふーん」では何故、私に反感を買ったら危ないであろう王の間に無断で入ってきたのか美咲に疑問が残った。
「クヘッヘ……俺はこう見えても戦闘が大好きでね」
「一つお手合わせ願いたい」手合わせ願いたいと、誠実に頭を下げゲロス。
「_……!?」「へぇ、なるほど面白いね君!!」
「無理だとわかってて私と戦いたいなんて、私君の事少し好きかも知んない」笑顔が失われた美咲に少し笑みが生き返る。
「行くよ!! ゲロス君!!」
「お、乗ってくれるのか、それでこそ俺らの新しい魔王さんよ」(美咲さんよぉ……あんたのその極端さ俺も好きだぜ)
「クヘッヘ……そう来なくっちゃ、ワクワクするぜ」ゲロスも戦闘準備の構えをし美咲の攻撃を迎え撃つ体勢に入った。
『たぁ!!』美咲が空中で一回転し、華麗なかかと落としをゲロス向けて放つ。
__……ドゴン!! 美咲の攻撃が命中せず、地面に攻撃が打ち付けられる。
地面は砕け、下の階層が透けてしまう位に大破する。
「……ッ!! 消えた!?」美咲はすぐさま、殺気を感じ後ろを振り返る。
「いい攻撃だァ……でも、『遅い』」
「ぐっ……」不意を突いたゲロスは美咲の身体へ高速で連続攻撃を繰り出す。
「クヘヘヘ……気持ちぃ……気持ちぃぜぇ……!!これが快感……これが爽快!!」美咲の身体がグチャグチャになるまで、ゲロスは攻撃を辞めることは無かった。
「ヒャハ!! 魔王さんよォ……グチャグチャグチャグチャじゃねぇかハハハ!!こんなもんかァ!? 本気出してくれよォ!!」
『じゃあ、出すね?』
「ヒャア!! ……ッ!?」
ゲロスの理解が追いつかない、なぜ正面にいる美咲はグチャグチャで、背後に要る美咲は無傷なのか。
――__……「そうか、魔法か」
『正解っ!! いい攻撃だけどそれ分身だよ?』と、ゲロスにニコッと言い、身体能力バロメーターを最大にする。
「ありがと、楽しかったよゲロス君♪」
『はぁ!!』美咲が力を込めボディブローをゲロスへ放つ。
「殺られるッ!!」
死を覚悟し、瞳を閉じたゲロスだったが……何故か生きている。
__……ピタッ。
美咲の拳がゲロス腹部の数ミリ手前で止まる。
「……何故だ、なぜ俺は生きている」
「ふふ、もーいーでしょ今の私は無駄な殺生はしたくないの」と、ゲロスに言い終わると、美咲は玉座に座り直した。
「クッ……完敗だ」「俺はあんたに付いてくよじゃあな……」
『いい拳だったぜ……魔王様』そう捨て台詞を吐くとゲロスは四天王の間へ戻った。
「ふふ、ちょっと楽しかったな♪」魔王美咲は四天王との激しい戦闘でさらに戦闘の楽しさ、快感を思い知るのであった。




