夢の中の物語1(2)
妖精の少年と歩き始めてどれくらいたっただろうか。
かなり歩いた気がする。
なぜ歩いてきたのか疑問だが飛べないのがばれなくてよかった。
まあ、もしかしたら私も飛べるのかもしれない。
夢の中だもの。
主役ではなかったにしろそれぐらいはできてもいいんじゃないかと思う。
まあしかし、この花畑をゆっくり歩いて堪能できたのだからむしろよかったのかもしれない。
「もうすぐですよ。」
少年が声をかけてきた。
「はいっ。」
突然だったから驚いて変な声を出してしまった。
「大丈夫ですか。」
驚いた私に彼も驚いたようで慌てて聞いてくる。
この子はとても素直でいい子だなと思った。
妖精は、どんな場所に住んでいるのだろう。
ワクワクしてきた。
それからどれぐらい歩いただろうか。
かなり歩いたはずなのになにも見えてこない。
あっれーおかしいな。
この子の言っているもう少しは飛んだ場合の話ではないだろうか。
不安だ。
まだまだ時間がかかるんじゃないだろうか。
まあ、夢の中だからいくら疲れてもいいんだけどね。
それにしても長い夢だ。
私史上最長といいきれるほど長い夢。
まあ、毎回起きると忘れてしまうから詳しくは分からないけど明らかに今回の夢は長く感じる。
しかしそれから少し歩いていると、だんだんと視界が悪くなってきた。
霧だ。
それっぽいことになってきた。
ここを抜ければということだろうか。
一面に広がる花畑もやがて自分のすぐ先ぐらいまでしか見えなくなってきた。
私は迷わないように少年の背中にぴったりとついていった。
すると突然、少年が立ち止まった。
ドンッ。
行きなり立ち止まった少年にぶつかってしまった。
「ごっ、ごめんなさい。」
「あれっ、おかしいなー。どうなってるんだ。」
前で少年が何か困ったように言っている。
どうしたんだろう。
まさか、迷うわけないよね。
まさかそんなわけ、
「すみません、なんか、迷っちゃったみたいです。」
「えーーー。」
嘘でしょー。
と思いながらもやっぱりと思う自分もいる。
この夢の中は何かいつもと違う。
そう簡単に理想にたどり着けない。
そう教えてくれているような。
夢の中なのにこれが現実だと言わんばかりにうまくいかない。
「どうしましょうか。」
どうしましょうかといわれても困る。
というかそもそもなんで幾度となく通ってきた道で迷うのだろう。
いくら霧が深かったからとはいえ、ここの世界の住人が迷うだろうか。
妖精が迷うだろうか。
要請に期待しすぎなのかもしれないが。
「どうするかって、私もここのことは全く知らないんだよ。まあ、とりあえず霧から抜けないとね。」
「そうですね。とりあえずそうしましょう。」
とりあえずか。
まあこの美少年(妖精)と、もう少し二人きりで旅ができるからよしとしようじゃないか。
少年は、いつも通りの道をたどってきたつもりのはずだから、今もたぶんそこまで的はずれなところにはいないはずだ。
たぶん。
少年は行き先に迷っているようだったので、私が先行していくことにした。
「こっちいこう。」
「はっ、はい。」
少年は素直についてきた。
「流石ですね。旅人さんはとてもたよりになります。」
旅人さん。
まあ、確かに夢の中で旅をしてるからそれでいいかな。
だけどたよりにされては困る。
私だって全く知らない場所を適当に前に進んでいるだけなのだから。
何処にいくのか分からない。
しばらく歩いていると、だんだん霧が晴れてきた。
おっ、やっと何処かに出られそうだ。
「あっ霧が晴れてきた。そろそろですね。」
そろそろって、自分が何処にいるかももわからない状況でこの少年はとても楽しそうだった。
大丈夫かなこの先。
気づけば私たちの足元は、花畑ではなくなっていた。
草が生い茂っている。
回りを見渡してみると大きな木がたくさん生えている。
というかむしろ回りが見えないほどに木に囲まれていた。
まさか、ジャングル。
先程までの華やかな世界とはまた違った意味で神秘的だった。
「すごいですね。ジャングル。こんなにでっかい木がたくさん。
」
確かにすごい。
だけどいいのだろうか。
おそらく目的地とは全く違う場所に来てしまっているのだが。
「ねえ。ここって来たことある。」
念のために聞いてみる。
「いや、こんなところがあったなんて知らなかったです。すごいです。」
感動してはしゃいでいる少年。
かわいい。
けど。
まただんだんとおかしな方向に進んでいきそうな気がする。
「進んでみましょうよ。」
「あっ。うん。そうだね。」
冒険だ冒険だ。
楽しい大冒険の始まりだ。
こうなったらこの美少年との冒険を存分に楽しんでやる。
周りをもう一度見回すと木に果物らしきものがなっているのに気がついた。
あれは食べられるのだろうか。
なぜだかおなかがすいてきた。
「ねえあの果物さ。」
ってあれっ。
隣に少年がいない。
すると、私のみていた方向と逆の方向から声が聞こえた。
「おーい旅人さん。こっちに美味しそうな果物がたくさんなってますよ。」
浮いていた。
美しい七色の羽を広げて飛んでいた。
やっぱり、飛べるんだよなー。
何で迷ったんだろう。
せっかく妖精の国に行けると思ったのになー。
なんて今思っても仕方ないことだから切り替えて行こー私。
「はいはーい。」
私は大声で呼んでいる少年のもとまで走っていこうとした。
しかし、そこで私は足を止めた。
少年の後ろに何かいる。
なんだ。
少年が飛んでいる木の後ろに何か大きな影がある。
見たことがあるシルエット。
えっ。
まさか。
「どうしたんですかー。早くこっちこっちー。」
少年の声も私の耳には入らなかった。
「うっ、うしろっ」
「どうしましたかー。」
「うしろうしろーー。」
私は思いきり叫んだ。
「えっうしろ。」
少年はその瞬間私の声と同時に、何かを聞いたのか恐る恐る後ろを向く。
「えーーーー。」
少年が後ろを向くと同時にその大きな生物は吼える。
きょ、きょうりゅー?