姫様、町コンにいくその3「女子トーク(探り合い)」
シャーロットは元の場所に戻った。同じ場所で本を読んでいたヴァーミリィが遠慮がちに声をかけてきた。
「あの、いかがでした?」
「えっと、かなり個性的な方々でした」
“変な人”と言うのははばかられ言い方をやんわり薄めて答える。ヴァーミリィがもう少し聞きたそうだったのでどんな人たちなのか話しているとシャーロットの隣に小さな影が立った。
「ちょっとあなた!」
「え?」
声の方を振り向くとこの場の最年少、武器家の娘ペニー・ベネットが目をつり上げ口をへの字に曲げながらシャーロットを睨み付けていた。
「えーっと…なにかな?」
「私が狙っている殿方にちょっかいをださないでくれるかしら!?」
「えぇ?」
身に覚えがない、というかそもそもお見合いだから他の男性とお話するのは普通ではないだろうか?と考えているとペニーは机を叩き迫ってくる。
「聞いてるの!?」
「え?ええ、で、でもここはお見合い会場であって…」
「んん!?」
「あ、いや、はい…」
ものすごい剣幕に押されて引っ込む。ヴァーミリィがおずおずと助け船をだす。
「あ、あの、あなたはまだお若いですしそこまで必死にならなくても…」
「甘いわね!!」
「ひっ!」
睨み付けの目線が自分の方に向いて悲鳴を上げる。
「将来の伴侶を見つけるのに遅いも早いもないわ!むしろ今の時点で考えておくのが普通でしょう?後になって後悔しても遅いんだから、15を超えて候補もいないなんてありえない」
「うっ」
「ぐっ」
涙目になり胸を押さえるシャーロットとヴァーミリィ。そこに残りの2人もやってくる。
「あんら~言い過ぎよペニーはん」
「考え方自体は悪くないと思うけど、考え方を押し付けるのはよくないわよ」
「む……………ごめんなさい」
2人に言われてふてくされながらも素直に謝るペニー。それを見てエリカがポンッと手を叩く。
「ほな、皆でおしゃべりしましょか」
エリカの提案で全員が席に着いてそれぞれの考えを話し始めた。
「さて、ペニーはん、あそこまで怒るゆうことは誰か狙ってる殿方がおるんかな?」
「いるわ!」
ペニーは恥ずかしがることもなくキッパリと言いきった。その素直さにシャーロットは感心する。
「ズバリ!ガンドレッド・ボルさん!」
(あぁ、だから睨まれていたんだわ)
先程の自分への剣幕に納得がいったシャーロット。だがペニーがガンドレッドに話しかけているところは見ていないことに気づいた。
「あれ?でも彼に話しかけてるところを見てないのだけれど…」
「あなたのようなビッチと違って大人の!しかも知らない男の人に年下の私がどうやって声をかけたらいいのかわからないのよ!」
「ビッ…!?ちょっ、そんな言い方やめてもらえるかな!?」
さすがに少しイラッときたシャーロットが少し強めに言うとペニーは頬を膨らませた。その姿が可愛らしくてイラつきはすっと引いた。自分は王女という立場もあったので自分よりもはるかに年上の人とも交流する機会もあったので今回の町コンでも物怖じせずに話しかけにいけた。ペニーもお店では商売として接したことはあっても将来の伴侶を探すという目的で接したことはないはずだ、やる気はあっても一歩を踏み出すのはかなりたいへんだろう。
「ちなみにうちは~ヌー・バッフさんやわ~」
少し気まずい沈黙の後その緊張を解くかのようにエリカが頬を赤く染めながらはんなり告げた。
「え?どの辺りが好きなんですか?」
食いつくシャーロット、普段こんな恋バナみたいなことをできないので(主にカリンが原因で)少しずつ楽しくなっていた。エリカは頬に手を当て少し恥ずかしそうにしながらヌーについての気持ちを話し始める。
「うち、筋肉フェチなんよ」
「筋肉…フェチ?」
ペニーが首を傾げたので「自分が相手に魅力を感じる条件みたいなことだよ」とやんわり教えた。
「特にうちは細マッチョよりも、ヌーはんみたいなごりごりに鍛えたごりマッチョが大好きなんよ~、ピョンピョン跳ねるような大胸筋、丸太みたいな大腿筋…はぁ~♥️ええわぁ、ほんでなぁ~…」
そこからしばらくエリカの筋肉談義が続いた。止まりそうになかったのでシャーロットが口を挟んで止める。
「で!もうお話ししたんですか?」
「それがまだなんよ~」
「え?そうなんですか?」
先程ヌーと喋った時にヌーを見ていたのを知っていたのであの後に話していたのかと思ったいた。
「話そうとは思ってたんやけど、うち同世代の~しかも好みの筋肉の男の人とあんまり話したことなくて、キッカケをどう作ったらエエのかわからんのよ」
ゆったりした話し方の中に確かな困惑が感じられた。この2人はまだかなり若く男性経験も家族以外の異性と話す機会もまだそんなにないだろう。ここでも一般国民と王族貴族の違いを感じた。
「えっと、私も男性がなんだか怖くて…小さい頃から本ばかり読んでいたこともあって、何を話したらいいのかわからずこの年まできてしまいました…」
ヴァーミリィも沈み気味な声でそう話す。皆が自分の考えや思いを話したので視線は自然とハンナに向けられる。ハンナもそれを感じて少し考えた後に自分の考えを話す。
「私には姉と妹がいて、2人とも結婚しているので両親が結婚しろとうるさいうえに父親が“結婚したら家庭に入って仕事をやめろ”という古い考えなので、私は私が働く事を否定しない人がいいです、そして相手もそれなりの仕事ができる男性がいいです」
「なるほど」
レーヴ・アムールは女王の国家ではあるもののそういう考え方もまだ残っている。他国に比べればましなほうではあるがそれでももう少し改善していこうとシャーロットは思った。
と、真面目なことを考えていると最後にシャーロットに話が回ってきた。
「レベッカさんはどうですか?」
「え!?」
話をふられてビクッとなる。本当の事を言えるわけもなく、だからと言って嘘をつくのもどうかと考え、気をつけながら話した。小さい頃の恋愛相手の性癖の話から最近までの相手の話を相手の身分などを変えながら話した。話が進むにつれて他の皆の表情が曇っていく。話終えた場の空気は冷え冷えだった。
「えっと…さっきはひどいことを言って本当にごめんなさい。改めて謝罪します」
強気だったペニーが頭を下げる。
「まだまだ人生これからや」
明るくエリカに励まされ
「…」
「…」
残る2人はかける言葉が見つからず慈悲に溢れた目で見てくる。
(うん、こうなることはわかってた)
シャーロットはパンッと手をうってできる限りの明るい声で提案する。
「はい!皆の気持ちはわかりました!」
突然の切り替えにポカンとする皆を引っ張る感じでシャーロットは次に進む。
「これから一人一人皆さんの恋を私がサポートします」
「え、でも…」
皆不安な表情になる。ほぼ実話のシャーロットの恋愛話を聞いたのだから無理もない。でもシャーロットには自信があった。
「私、自分以外ならうまくやれる自信があるから!」
この言葉を発したシャーロットの顔には並々ならぬ自信と謎の説得力が伺え、4人はとりあえず頼ってみることにした。
ペンスはため息をついていた。
「はぁ~、予想はしていたけどうまくいかないなあ」
本があるスペースで本棚から本を出してはしまうという動作を繰り返しながらペンスは次の本を手にしようとした時、
「ペンスさん!」
「あひゃぴぃ!?」
突然後ろから声をかけられ変な声を出しながらペンスは本を取り落とした。それを落ちる寸前でシャーロットが拾う。
「ごめんなさい急に声をかけてしまって」
「い、いえ!な、ななななんでしょうな!!」
声が上ずりまくっておかしな感じになってしまっていたがそれに気づかないほどパニックが続いていた。そんなペンスが落ち着くのを待ってシャーロットは先程までの女性陣の会話を説明しながら要件を伝える。
「私に協力してほしいんです!」
「なるほど…でもなんで僕に?」
話を聞く限りペンスは他の4人から好意を寄せられてはいないようで、だとしても婚活という状況で他の人の恋愛のために協力してくれなんて初対面で言えないと思った。
「失礼を承知でお願いします。でもあなたしか頼める人がいないんです」
「はぁ…」
ペンスは「手持ちぶさたで困ってたからちょうどよかった」とか「あなたしかいない」と言われて悪い気はしないとか考えて少し空いた間がシャーロットを少し不安にさせた。
「あの、実は私何回かあなたのお店に行ったことがあるんです」
「はぇ…え?」
「行く度にあなたの事を見ていました。とても優しく誠実で真面目な方だと感じました」
「え?」
そこで改めてペンスはレベッカ(シャーロット)の目を見た。その目はあのお客さんと同じに見え、先程の疑問が確信に変わっていく。
「もしかして…最近小さな女の子といらっしゃった方ですか?」
「!はいそうなんです」
限りなく地味に装っていた自分の事を覚えていたことに驚きながらも頷くシャーロット。一方ペンスは相手の事を認識した上で先程の言葉を脳内再生していた。
『あなたの事を見ていました』
「うわぁ!」
「わ!?」
「あ!ごめんなさい!」
嬉しさで顔を真っ赤にしながらペンスはシャーロットの手を取った。
「ぜひ!僕にお手伝いをさせてください!」
「え、はい!ありがとうございます」
たじたじになりながらも答えるシャーロット。同時にシャーロットの作戦が始まる。




