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完璧姫様の婚活奮闘記  作者: 長星浪漫
妹、来る
22/41

妹、来る その5「静かなる怒り」

 クレアがシャーロットのいる部屋に戻った時には次の一手の準備が完了していた。


「クレア、お疲れ様、カリンは大丈夫だった?」


 その質問をするシャーロットの声からは心配が伝わってきた。


「はい、例の発作が起りはしましたが用意していた対策でなんとかなりました」

「それはよかったわ。こちらも次の一手に出るところよ。エドリック殿」


 シャーロットが呼び掛けるとエドリックは頷いた。


「ご要望の魔法は作成できました。しかしこの魔法は膨大な魔力を必要とします。私では扱いきれません」

「それは大丈夫です、フリージアお願いね」

「はい!」


 フリージアはエドリックが作成した魔法について説明を受ける。一応フリージアについての説明を受けていたエドリックだったがやはり不安そうだった。


「あの、本当に大丈夫なんでしょうか?」

「大丈夫、この子は1人で異世界召喚を行えるくらいすごいんですよ」

「なんと!異世界召喚を1人で……異世界召喚!?この国で何か深刻な事がおこったのですか?」

「そうではないのです、今はアリシアを優先したいのであまり触れないでいただけると助かります」

「そ、そうですね」


 有無を言わせぬ凄みを感じてエドリックは追求をやめ、フリージアに作成した魔法を伝えた。フリージアは一度で魔法の構造を把握し発動した。


「『広域索敵魔法』発動します」


 手に持っていた魔法の杖で地面を叩くとフリージアを中心に大きな魔法陣が展開された。

 『広域索敵魔法』、エドリックげ作った魔法で、名前の通り広範囲の敵を探す魔法だ。カリンが引き出した情報でレーヴ・アムール国内に魔王教の隠れ家が多数あることが確認された。大元だけを狙っても他の場所の魔王教の人間を逃がしてしまう。なのでそれらもまとめて一網打尽にする算段だ。

 魔法で消費する魔力量は探索する範囲で変わる。一般的な魔法使いなら半径100メートルくらいが限界だがフリージアの魔力量なら国全体を範囲にしてもまだ余裕がある。フリージアはすぐに魔王教の拠点を発見した。


「見つけました。拠点は8つあります。アリシア様が囚われているのは…ここですね」


 フリージアは王国の地図の一点を指差した。そこに印をつけ他の拠点も印をつけた。さらにフリージアはより詳細な情報を伝える。


「街中にも何人かいます」


 街中にいる魔王教の人間までも特定してしまった。これにはエドリックも驚いた。


「本当にすごいですね、一応探索範囲や対象は自由に変えられるようにしていますがここまで広範囲でしかもかなり精密に判別できるとは、魔力量が多いだけじゃなくとてつもない才能もお持ちなんですね」

「…」


 魔法に集中しているフリージアは答えなかったが耳が少し赤くなった。フリージアが特定した場所の付近に騎士達を迅速に配置しシャーロットはフリージアに次の指示を出す。


「フリージア、攻撃はどこまでいける?」

「拠点にいる敵は地下にいるので無理ですが、外にいるものならこの魔法と併用して眠らせられます」

「そんなことまでできるのですか!?」


 常人を遥かに凌ぐフリージアの魔法の才能に驚きが止まらないエドリック。シャーロットは頷いた。


「上出来よ、では私とクレアでアリシアがいる拠点に向かうわ、到着したら連絡するからそれと同時に眠らせてちょうだい」

「わかりました」


 フリージアの答えを聞いたシャーロットは剣を持ち一般人に近い服装に着替えた。クレアもそれにならう。だがエドリックはそこまでの作戦は知らなかった。


「シャーロット様自ら行かれるのですか?危険では…」


 エドリックの問いかけにシャーロットはニッコリ笑う。


「今回の件は私の身内に関わることです。それになにより…」


 シャーロットの表情が変わる。それを見たエドリックは氷を背中に入れられたような寒気に襲われた。


「私の妹に手を出したことを後悔させなくちゃ」




 一方魔王教のアジトの独房で捕らえられているアリシア、門番に聞こえないくらいの声を意識しながらこれからの事を考えていた、!


「お姉様が動いてくださっているのは確かだわ、私はどうしましょう?勝手に動いたら逆にお姉様の邪魔になるかしら?それにしても首のこれは邪魔ですわ」


 アリシアは首につけられた『魔封じのチョーカー』の嫌な感触に首をふる。。


「はぁ…なんというかもう少しセンスの良いものを用意できなかったのかしら?まああんな盗賊くずれの人間にはこれが精一杯ね。ああ!早く助けに来てお姉様!」




 その頃シャーロットはクレアと2人でアリシアが囚われている可能性が一番高いアジトの付近にいた。


「あそこの酒場が出入口みたいね」


 そこは路地裏の奥にあるお店をやっているかもわからない寂れた酒場だった。それなのに先程から何人もの人間が周りを警戒しながら出入りを繰り返している。


「どうですか?姫様」

「………」


 シャーロットは目をつむり気配を探る。すると地下の方から微かにアリシアの気配を感じた。


「間違いない、ここにいるわ」

「いかがいたしますか?」

「そうね…あら?……なるほど、魔王教のやつら()()()()()()()()みたいね」


 シャーロットがニヤリと笑った。


「気づいてない、とは我々のことですか?」

「それもあるけど、“アリシア”についてよ。これなら正面から行っても大丈夫ね」

「ではフリージアに作戦決行の連絡を送ります」


 クレアが通信魔法でフリージアに知らせるとフリージアの展開している魔法が一部攻撃に転換し街中に出ている魔王教えさの人間のみを的確に動きを封じる。さらに各アジトの付近で待機していた騎士団がアジトに突入する。目の前のアジトも混乱が広がっているようだ。


「じゃあそろそろ行きましょうか」

「はい」


 シャーロットとクレアは真正面から敵のアジトの扉を蹴破った。急に扉が蹴破られさらにそれが2人の女性が立っていたので中にいる魔王教の教徒たちは状況を理解できず固まった。そんな魔王教の教徒たちにシャーロットは鋭い声でいい放つ。


「私の妹を返してもらうわ」




 王国各地で魔王教のアジトが一気に襲撃されていることは当然ベルグランドにも報告された。


「なんだと!?どうなってる!」


 ベルグランドは王宮にいるはずのアーシェスたちに連絡をとろうとするが先程まで繋がっていた通信が繋がらなくなっていた。


「くそ!どうやってやがる…」

「どうしましょう」

「どうもこうもねぇよ!相手は2人なんだろ?だったら数で押し潰せ、俺も行く!あぁそうだ、お前は門番にアリシアの監視を続けるように言ってこい、万が一の時は人質にする」

「わかりました!」


 慌てて出ていく部下を尻目にベルグランドは壁に立て掛けていた大鎌を手にする。


「こうなったらやってやるよ…」


 目を危なげに光らせながらベルグランドは戦場に向かった。




 シャーロットの殴り込みは独房の門番まで届いた。


「王女がここまで来たのか!?」

「俺たちも参戦したほうがいいか?」

「いや、ベルグランド様がでてる」

「あぁ、なら大丈夫か」

「魔王教の戦闘員もここには一番多くいるからな、それに来たのはたった2人だ」

「は?なんだじゃあ大丈夫だな」

「だが万が一があるからな妹を人質にできるようにしておけだと」

「わかった」


 伝え終えるとその兵は出ていった。もちろんその会話はアリシアにも聞こえていた。


「お姉様が来た!こうなったら大人しく待っているべきだわ!うふふ、まるで王子様を待つお姫様みたいだわ~、あ、私お姫様だわ」


 なんやかんや考えていると門番の会話が聞こえてきた。


「しかしなんてバカなお姫様だ」

(ん?)


 アリシアの耳がピクンと動く。


「昔魔王様を倒したと聞いていたがそれが本当かはわからんしな」

「魔王様の死体を見たものは誰もいないからな」

「それに妹を拐われてあわてふためいていたそうじゃないか、今来たのも後先考えず突っ込んで来たんだろうよ」

(…)

「まぁすぐに制圧されんだろ」

「この国の王女はかなりきれいだよな?捕まえたら俺らにもまわってくるかな?」

「そうだなぁ、この妹に対してはなぜか何の感情も持てないが、シャーロット王女ぜひともベットに入れたいねぇ」

「げひゃひゃひや!そりゃあいい!まあ、ベルグランド様が先だろうからもしかしたら壊れてるかもな」

「それはそれでいいじゃんか!」

「いい加減にしなさい」

「あ?」


 急に女の声が聞こえて思考が止まる門番、そして次の瞬間独房の扉が吹き飛んだ。


「ぎゃあ!?」

「うぐわぁ!!」


 門番は激しく壁に打ち付けられ、あまりの痛みに動けないでいると独房からアリシアが出てきた。


「な…がはっ…鎖で繋がれてた…はずじゃ…」

「壊したわ」

「壊し…?」

「魔法でね」

「は、はぁ!魔法は封じられて使えないはずじゃ…」

「このチョーカーのことかしら?これは確かに本物の魔封じのアイテムよ、でもね」


 アリシアがチョーカーに触れるとチョーカーは割れて地面に落ちた。門番はその様子を見て口をあんぐり開けて驚いた。


「このチョーカーで封じられる魔力量じゃ私は封じられないわ」


 アリシアはシャーロットに比べると物理面では圧倒的に劣っている。劣っているといっても平均的な女性と変わらないくらいだ。だが、その一方で彼女の持つ魔力はシャーロットに匹敵するくらいのものだ。この事はアリシア自身があまり戦闘をしないのもあって使う機会がなくほとんど知られていない。今回アリシアを拐った魔王教の人間は、魔王教徒の中でも盗賊に近いやつらが多く、異性を見れば誰彼構わず手を出すような野蛮な人間が多い、その事を理解していたアリシアはは密かに精神干渉魔法を使い彼らの意識を操作していた。

 そして、その魔力はある条件下において姉のシャーロットを凌ぐ程になる。その『条件』とは


「そんなことより、あなたたちさっきお姉様に対して許しがたい発言をしたわね?」

「は?」

「な、なにを?」


 アリシアは指を鳴らす。すると壁のレンガが動きだし門番の体を埋めるように積み上がっていく。その重さと恐怖に叫ぶ門番、そんな門番をアリシアは冷たくもメラメラ燃える目で睨み付けた。


「お姉様への侮辱は許さない」

「ひ…」


 アリシアが姉をも越える魔法を発動する条件は、“怒る”とこだ。特に姉への侮辱や誹謗中傷には敏感に反応する。つまり今のアリシアはガチギレ状態にある。こうなったアリシアは魔法の発動に詠唱などがいらなくなる。


「眠りなさい」


 そう呟いた瞬間門番の2人は白目を向いて気絶するように眠りに落ちた。アリシアは独房のある地下フロアの出口を見る。騒ぎを聞きつけた他の魔王教の教徒がなだれ込むように集まってきている。


「こうなってはお姉様を待つのは無理ね」


 降りてきた教徒たちは瓦礫に埋もれた門番を見て一瞬怯んだが、まさかアリシアの力とは思わずアリシアを捕らえるために襲ってくる。アリシアは怒りそのままに睨み付ける。


「目にもの見せてあげるわ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 異世界の技術がここで再現されたと感じずにはいられません。 また、フリージアは彼女がどれほど素晴らしいか、スゴイを披露するチャンスを得ます! 激しい怒りのこれらのショーは楽しいことを約束し…
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