表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

第一章 第1話 出会い。

異世界転生


その甘美な言葉にどれだけの人が夢想しただろうか。


数多のライトノベル・アニメの題材にされ、

今やファンタジーの王道になりつつあるそれは、


本当に、存在するのだろうか。


辛い現実を逃れ、剣と魔法の世界で新しい人生と、

心躍る冒険。


そんなものが本当にあるのだろうか。


死後、そんな馬鹿げた夢は叶うだろうか。


その世界に俺が求めたものはあるだろうか。


もし......、もしそんな絵空事のような世界があるのなら、



俺は……




――――――――――――――――――――――――――――――――――





走馬灯のように浮ついた意識を、現実へと引き戻す。


なんで...... こうなったんだ。


そう問わずに入られない状況。


鼓動の加速と共に荒くなる呼吸が、時が止まったとさえ錯覚させる。

眼前の惨状を脳が処理するたび、膝が笑う程の恐怖と、猛烈な吐き気に襲われて体が動かない。


「不運」か? 「偶然」か? はたまた「運命」か......


目の前に転がる血まみれの美女と、殺った犯人の激昴した鬼のような形相は

進藤 (リヒト)童貞25歳の短い人生終了のお報せを、本能的に告げていた。



刹那―



物凄い速さで犯人が迫り、ナイフを振りかざしてくる。


「ひぃっ」


もう殆ど無意識的に喉から悲鳴が漏れていた。



......俺は本当に無力なんだな。

せめて、1発ヤッてかr― ブツ




世界は黒に染まった。



* * * * *



チクショウ


なんでこうなったんだ。


今まで無難な人生を歩んできた。


幼い頃からの努力故に成績も優秀だったし、スポーツだってなんでもこなした。


才能も容姿も比較的恵まれていたが、そんなことは関係ない。


何も知らない奴らに「天才」だなんだと言われたが、意にも介さなかった。


そうして、


有名大学を卒業し、大手企業に就職した。




でも、「不運」だった。


その企業は端的にいってブラックだった。


残業漬けの日々、休息の得られない日々。


死ぬ程働かされ、最後はリストラされて無職になった。


その頃にはもう、転職する気力も残ってなかったんだ。


脱サラ自宅警備員の毎日は楽ではあったが、心が酷く痛んだ。




そんなある日、コンビニへ行くため外に出た。


「偶然」だった。


その途中で殺人現場に遭遇し、無念にも25歳で俺の人生は幕を閉じる。


「不運」か? 「偶然」か? はたまた......運命は俺に敵対するのか。


無力だ。 無意味だ。 無益だ。


俺の人生に、俺という人間に価値なんてあったのだろうか。


別に認めて欲しかったわけじゃない。


褒めてほしかったわけでも、理解して欲しかったわけでもない。


慰めも共感も。金も、女も、名誉も、


そんなものは要らない。


俺はただ......


ただ............――――





* * * * *





~時空の境界~


「............せに! ......クセに! 」


うぅ......なんだ......


「なんで私がこんな目に遭わなくちゃいけないのよ!」


女の......声?


重い瞼をゆっくり開けると、そこには漆黒の世界が広がっていた。

その中に一目見ただけで「人」ではないと理解できる背に黒い翼を生やした少女がいて、足踏みしながら愚痴っている様だった。


......誰だ?


そう思い体に力を入れると、どうやら実体を保っているようだったので起き上がり、膝を立てる。


とにかく、どういう状況なのか聞いてみない、と......


そこで俺の思考は途絶えた。


長い銀髪。輝く緋の目。雪のように白く瑞々しい肌。

均整のとれた幼い顔に、似合わない熟れた体。

まさに女神級、人間離れした美貌をもった美少女がそこにはいた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ