里山登山
家族で息子だけ飯綱山に登っていないのは可哀想だと思って、先日の日曜日息子を登山に連れて行こうと思いました。もちろん前々から、
「高原学校で登れなかったら、お母さんと一緒に登ろう」と言っていましたし、前日には
「明日は山に行くよ」と念を押しておきました。
当日、早めに起きて洗濯物を干し、早めの朝食を済ませていざ行こうと思ったら、
「俺、行くなんて言ってない」えっ、そうなの。行く気満々だったのに。もう今日は、別の用事なんて全くないし、1日家でぼーっとしちゃうし。せっかく天気もいいのに。
行きたくないと言っているのを無理やり連れて行ってもねぇ。仕方がないので、前々から気になっていた若穂の太郎山に行くことにしました。上田の太郎山と区別するために、若太郎山なんて言っているのは私だけかなぁ。今からさかのぼること10年以上前のこと。在所で身近な里山に目が向けられた時期がありました。今まで地元の人しか登っていなかった身近な山々を、もっと多くの人に登ってもらうために地元の愛好会で登山道が整備されました。その活動の中で、太郎山も地元の方々によって整備され、各方面で紹介された山です。
まだ娘が子供が小さかった頃、娘をおんぶしてでも登ろうと思って行ったことがあります。その時、細い尾根がを見て断念して帰って来た経緯があります。その後、改めて調べなおしました。標高、996.9メートル。登山口からの標高差はたぶん630メートルくらい。一般的に標高300メートル登るのに1時間かかるといわれています。ってことは登るのに2時間半かかるってことですねぇ。地元で愛されている山という事もあって、登山道が何本も整備されています。地元で紫陽花寺と有名な蓮台寺から登れば、やせ尾根を回避して登れることもわかりました。いつか家族で登ろうと思って、駐車場の場所までは確認済みです。
山岳会に入っていたころ、里山を登るとき一番の難関は登山口を探すこと、なんて言われたことがあります。全国的に有名な山々は、ガイドブックで紹介されていたり大きな案内板などが設置されています。ですが、身近な山には、案内板のない山も少なくありあません。数年前に、地元の里山愛好家の方が自分で登られた山の記録が本となって出版されました。この本のおかげで、今まで紹介されていなかった地元の山々の様子を知ることが出来るようになっているはずなのに。
駐車場について、さて登山口はどこだろう。きっとあの尾根を登るんだろうなぁ、とは分かるのですがどこが登山口かわかりません。有難いことに、駐車場の隅に愛護会の方が地図を置いて置いてくださいました。皆さんはやっちゃだめですよ、地図も持たないで山に行っちゃぁ。有難く地図をいただいてみてみると、仁王門を抜けアスファルトの道を横切り、お寺に向かって歩きます。お寺の横を山に向かって歩いていくと、ようやく登山口の看板が見えてきました。
しばらくは軽自動車が通れるくらいの林道を進むと、猪除けの柵がみえてきます。ここ近年、山からイノシシが降りてきて農作物を荒らす被害が出ています。そのれを防ぐために、山の周りを電気柵で囲って、登山口に扉が付いています。入り口には、『扉には電気が通っていません。開けた後は締めてください』ですって。しばらく林道を歩いていくのですが、その脇には電気柵が続き『触れると危険』の看板が目につきます。近年、里に近い山はどこもこんな様子です。
登山道は林道から尾根にとりつくために急な上り坂になっていきます。杉林の中の土の斜面に人工的にステップが切られています。このステップあるのとないのとでは大違いです。登山道を整備していただいた方に感謝しながら、ゼイゼイ言いながら登っていくと尾根の上に出たようです。ちょっとした広場のような場所には『春山城跡』の看板が立っています。尾根の上に登り切ったら楽が出来ると思ったのは少しの間だけ。尾根は広くなりながら細くなりながら、勾配を急にしながら緩めながら山頂に続いています。全身筋肉痛なのに加え尾根につりつくまでの急登で足はがくがくです。重い体を恨みながら体力の低下を実感しいます。息が上がって足が止まり周りの木々に目を移せば、紅葉に柏にブナと様々な広葉樹です。
気が付くと、足元に笹があります。標高が上がってきて植生が少しだけ変わったようです。周りの木々の種類には変化はありませんが、セミの声が聞こえてきます。晩夏の夕暮れに耳にするような、ヒグラシ。でも違います。以前、6月に自然観察会を開催した際に聞いたものと同じ蝉の声です。この時のお世話になった講師の先生が
「これはねぇ、春になく蝉なのよ」と教えてくださったのを思い出します。このセミの声を聞くと、気持ちが落ち着くのです。今日もきっと、このセミの声が聞きたくて山に来たのかもしれないとも思いました。
遠くから見てカッコいい山は、最後の登りがきついもの。富士山だって、全国各地にある何とか富士だって、登りはきついです。若太郎山も勾配を急にしていきます。元の登山道はその急勾配を蛇行するように作られているのに、ショートカットしてまっすぐに道が出来ています。見る人が見れば、蛇行した登山道がみえるかもしれませんけど、みんなショートカットしてまっすぐに行きたいんでしょうねぇ。この先にはきっと平らな場所が待っているという確信をもって、登りきるとそこには平らな場所が開けていました。広葉樹林に囲まれているために山頂という雰囲気はありませんが、善光寺平が見渡せる方面の木は切り開かれていて、案内板も設置されています。本当は登るはずだった、飯綱山に黒姫に妙高。その後ろには後立山連峰。眼を北に向ければ斑尾。持参したおにぎりを食べ、下山です。
下山時すれ違ったのは、息子を連れたお父さんと、山岳会らしき4人パーティーだけ。山の中を歩いているときにはほとんど一人で、鈴もラジオも持参しなかったことにちょっと公開しました。一人の時に、ヒグマじゃなくたって、ツキノワグマやイノシシには会いたくないものです。
「有名な高い山に登るのが嫌になって、里山に登るようになった」これは、私に春ゼミを教えてくれた方の言葉です。ファミリー登山ブームから始まり、中高年の登山ブームに山ガール。有名な山には多くの人が押し掛けるようになりました。それ自体を咎めることもできないのですけれど、オーバーユースになった山は、本来の姿から離れて行ってしまったように感じます。私は自分の事情により高い山に登れなくなってしまいましたが、人の少ない里山に登ることで山登りの原点に帰れるような気がしました。
コールタイム2時間のところを2時間で登るなんて、体力が落ちたものだと思って登山口に帰ってきました。ですが案内板をよく見ると、『春山城跡まで50分→太郎山まで2時間』とあります。これって山頂まで2時間50分ってこと?と自己満足をして帰って来たのでした。
自身のブログに転記します




