魔法を使う!
「魔力が判ったなら、後は使うだけだ」
「えっと、イメージでしたよね?」
「そうだが、ここで使うなよ?」
「あっ、ダメですか」
「当たり前だ! 裏に空き地があるからついて来い」
おっさんに連れられて店内に入る。
そのまま裏口から出ると、そんなに広くない空き地に到着。
家1件分くらいか? 空き地って言うから土管とかあるかと思ってたけど、ただの草地だ。
しかし、この程度の空き地で良いんですか?
ほら、イメージで発動でしょ? こちとら、元日本人ですよ?
凄いのをイメージしますよ? テンプレ発動ですよ?
「ほら、使ってみろ」
「良いんですか? 責任持ちませんよ?」
「お前、子供かよ? 大丈夫だからやってみろ」
子供扱いされた。何故だ。
まあいい。ビックリすれば良いさ!
火魔法は火事が怖いから、やっぱり水魔法かな。
やっぱり凄い水圧で噴射して何でも切る事が出来る、ウォーターカッターでしょ!
では魔力を意識して、後はイメージ…………。
「えっと、何も起きませんけど……」
「そりゃそうだろ。声に出して言わないと出ないに決まってる」
あらら。無詠唱じゃないのね。
ま、いずれ無詠唱にしますけどね。
「では、『ウォーターカッター』!」
「は?」
「えっと、は?では無くてですね、出ませんけど?」
「いや、ちょっと待て。お前、本当に何も知らないんだな……」
「だからそう言ってるじゃないですか」
「判った。店舗に戻るぞ」
何でだ? 何か間違いがあるのか?
あっ、MPが足りなくて発動しないとか?
店舗内に戻り、さっきと同じ椅子に座る。
おっさんは黒板みたいな物を持ってきた。
どうやら何か講義が始まるようだ。
「お前、水魔法と火魔法が使えるって言ったよな?」
「はい」
「レベルはいくつのだ?」
「えっと、両方ともレベル1ですけど?」
「ま、そうだろうな」
「何を納得してるんですか」
「いいから聞け。今から子供にでも判るように説明してやる」
不本意だが、確かに魔法についてはその辺に居る子供よりも知識がない。
「イメージと聞いて何かを想像したようだが、そんなもんは捨てろ」
「えっ?」
「俺がイメージしろって言ったのはな、『使いたい魔法を思い出せ』って意味だ」
「思い出す、ですか?」
「そうだ。見た事のある魔法を思い出して、頭の中に描く。これがイメージだ」
「イメージしたのが具現化するんじゃないんですか?」
「そんな事ある訳無いだろ。ま、子供の頃には誰もが一度は考えるだろうけどな」
だから子供扱いか!
憐れむような視線、やめて!
「それでだ。お前はレベル1だから、レベル1の魔法を思い出せば発動する」
「レベル2の魔法は?」
「思い出しても、絶対に発動しない」
「絶対に、ですか?」
「絶対に、だ」
マジか。
つまり、現在の俺、全然チートじゃない。
ただの、イタい平均値の20歳だ。
いや! 待て待て!
俺、異世界人ですよ!
きっと同じレベル1の魔法でも威力が違うんじゃないかな。
そういう話ってあったと思います。
「じゃあ、レベル1の魔法を『思い出す』為に見せて下さい!」
「普通は親がやってるのを見て覚えるんだがなぁ……。
しかしな、お前、ここは何屋か知ってるか?」
「魔法屋でしょ?」
「そうだ。魔法を見るなら有料だぞ」
「そこを何とか! 誰でも使えるような最低の魔法で良いんで!」
「……しょうがねぇなぁ。ほらよ『トーチ』」
おっさんの人差し指の先には、小さい火が灯っていた。
ライターの火くらいのやつ。なんか手品みたいだ。
「見たな。ほら、やってみろ」
「ここで大丈夫ですか?」
「お前はまた子供みたいな事を……絶対に俺が見せた炎よりもデカくならないから。
大丈夫だから、な。ほら、やってみろ。言う言葉は『トーチ』だぞ」
また子供扱いしてるし。
憐れむような目じゃなく、憐れんでる目に変わった?!
くそぅ、見てろよ! さっきのよりも大きい炎を考える。
指先がライターではなく、ガストーチを想像してやろう!
「『トーチ』」
「ほら、俺が見せたのと同じ大きさだろ?」
「本当だ……何で?!」
「何でって言われても、そういうもんだからだとしか言いようが無い。
お前が何をイメージしたか知らないが、無理だぞ。
もしそれが可能なら、想像力豊かな子供に世界が滅ぼされてるわ」
あっ、凄く納得な説明だ……。
確かに子供は理屈じゃないからなぁ。
色々想像して、無茶苦茶な魔法を発動してそう。
「さて、納得してもらえたようだな。
で、ここから見せるのは有料だ。買うか?」
商売上手だな、おっさん。
買うよ、買わせてもらいますよ。