違う使い方
『アイテムボックス』と唱えると、眼の前に学長と同じようなのが出現した。
やった! 成功だ!
「問題なく出来たね。では少し説明をしようか。
中に物を入れるのは、放り込んでもゆっくり入れても大丈夫。
ただし出す時には注意が必要だ」
「注意? な、何か危険でも?」
「いやいや、そういう意味じゃないよ。ただ、取り出す場合は出したい物を想像しながら手を入れるだけ。
でもね、入れた物のリストが出来る訳じゃ無いから、忘れたらそのままになってしまう」
えっ? リストって出来ないの?!
「それから刃物等は絶対に鞘に収めて入れる方が良い。
何処を持ってしまうか判らないからね」
「それは確かに危ないですね。注意します」
「うんうん。後は時間経過かな。時間の流れが違うらしく、検証した結果では50日くらいの差がある。
1日で腐るような物を入れても50日は大丈夫だ。時間経過が止まってる訳では無いよ」
そうなのか。
じゃあ出来たての食べ物とか入れて置いても、1ヶ月内に食べた方が良いって事か。
いや、それ以前に熱々のグラタンとか入れても、取り出す時に危ないな。手を突っ込んで火傷の可能性もある。
ラノベのように自動的にリストが出来たり、ちゃんと上下が固定してたりしないのね。
ま、現実なんてそんな物か。
「後は……そうだね。入れる物の重さは関係無い。
この取り出し口は大きさは変えられるが、出現する場所は変えられない。
他人は中の物を出す事が出来ない。もし所有者が死んだら中の物は消えてしまうと思って良い。
これくらいかな?」
俺しか出す事の出来ない、保存庫って事だね。
大事な物を入れて置くと安全だけど、全財産を入れてると何かあった時に家族などが困るのか。
あっ、冒険中に気絶とかしたら、パーティーメンバーが困るな。
冒険中で思い出した。
もう一つ聞いておかないと。
「生き物は入れられますか?」
「入るよ」
「おおっ! じゃあ、タヌキ、入ってみて」
「入れると死ぬけどね」
「そうなんですか? じゃあ、タヌキ、入ってみて」
「何でですか!! 死ぬって聞いた後に、おかしいでしょう!!」
「冗談だよ、冗談」
「ほほぅ、珍しいね。そのタヌキは喋るんだね」
「あっ、始めまして。私、フォックスと言います」
リュックから出てきて、学長と挨拶するタヌキ。
男子生徒は喋る事に興味があるようだ。女子生徒は「かわいい~」とか言ってる。
しかし、生き物は入らないのか。
いや、入るけど、入ったら死ぬのか。
ん? 待てよ?
入り口の大きさが自由に出来て、眼の前に出現させる事が出来て、生物は中に入ったら死ぬ。
これって、防御に使えるんじゃないか?
例えば直径を2mくらいにしてさ、俺の前に出しておく。
イノシシとかが突進してきたら、そのまま中にご案内。
するとどうでしょう! 傷一つ無い死んだイノシシの出来上がり!
そう考えると、優秀な盾になりそうだね!
「もう一つ質問しても良いですか?」
「良いよ。どうぞ」
「裏側からも入れられますか?」
「ん? ああ。入れられるよ。防御に使うつもりだね?」
「あっ、そうです。判りますか?」
「そういう使い方をしてる人も多いからね。ただし街中では注意が必要だよ?
誤って人でも入ってしまったら殺人者だからね」
「た、確かに……。注意して使います」
子供とかが遊んでる近くで、大きいのを取り出そうとデカいのを出現させたら……。
うん、危険だ。人気の無い所で使うべきだね。
しかし、こうやって無料で色々と教えてもらえるなんて、やっぱり学校は良い。
あっ、無料じゃないか。親が授業料払ってるもんな。
いや、それでも判りやすく教えてもらえるし。
どうにかして入学したいな。入学が無理でも毎日見学でも良い。
「さて、生徒諸君。ステータスを確認して見給え。
誰か時空魔法を覚えた人は居ないかな?」
「あっ! 私覚えました!!」
「俺もだ!!」
「ほう? 二人も居ましたか。これはなかなかの成果ですね」
学長の口ぶりから、普段はそんなに居ないんだろうな。
良いなぁ。俺も見て使えるようになりたい。イベントクリアじゃなくてさ。
「タクヤ君。この街にいる間、ここで働かないかね?」
「是非!」
「肯定が早いね……」
降って湧いた幸運!
逃してなるものか!!!
次話は20日の17時に投稿します




