努力の結果
街に戻りながら道の横に生えている雑草を『鑑定』する。
そして俺、とうとう見つけましたよ。
その鑑定結果が、コレ! はい、ドン!
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名前:ラヤグ草
種類:ラヤグ科
備考:加工すれば傷薬になる
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薬草ゲットだぜ! ゲットなんやぜ~!!
これがまた群生してるんだよ。
とりあえず10株取って、後は明日のお楽しみ。
いや~、道の横なのに誰も取らないなんてさ。鑑定様様だね。
しかもこういうのってテンプレじゃない? 俺だけが発見出来るっていうさ。
あら、イベントもクリアですか? 順調ですなぁ。
宿に帰ると、食堂に商人が居た。
食堂と言っても飲み屋みたいな感じだけど。
「おや、やっとお帰りですか」
「ちゃんと取って来ましたよ! どうです! はい、これ!」
商人は驚いた顔をした後、そっとコインを一枚テーブルに置いた。
「あの、商人さん? これ、1コルに見えるんですけど?」
「そうですね、1コルです」
「最低貨幣の?」
「はい、最低貨幣の」
「これ以上下が無い?」
「はい、これ以上下はありません」
「1コル?」
「1コルです」
「………………何で?!」
「はぁ……。貴方は物知らずなだけで無く、アホだったんですね」
アホ呼ばわりされた!
何でだよ! 薬草だろうが!
あっ、もしかして価値を知らないのか?
しょうがないなぁ、俺が教えてあげよう。
「これはね、薬草なんですよ?」
「知ってますよ。ただし、加工をすれば薬になる、つまり薬の材料の一つですけどね」
「だから薬草でしょ?」
「ふぅ。しょうがないですね、アホの貴方の為に優しい私が教えてあげましょう」
「あっ! またアホって言った!」
「良いから聞きなさい。
これは傷薬の材料の一つですが、それを作るにはこれよりも大事な物があります。しかもこの辺りにはありません。
そちらの方が価値が高いのは判りますね?」
「そ、そうですね」
「次にどこでも生えている雑草のような物なので、誰でも簡単に入手出来ます。
そう、5歳の子供でもです」
「うぐっ!」
「最後に。雑草扱いなので、街に生えていても抜かれます。処分です。
それを10株持ってきた? ゴミですよ? 買い取れ?」
「すみませんでした……」
「どうせ道すがら大量に生えているのを発見して取ってきたのでしょう?」
「な、何でそれを! はっ! まさか追けてたのか?!」
「追跡なんかする訳ないでしょう。ちょっと考えれば判りますよ」
「くそぅ……あっ! でも俺が出る時に『良い物なら買いましょう』って言ってくれたじゃないか!
なのにさっき『これよりも大事な物があって、この辺には無い』って言ったな!」
「言いましたよ?」
「知ってて放置したのか?」
「貴方はこの辺りの人では無いのでしょう?
ならばもしかしたら、この辺りでは使わないが役に立つ物を知っているかもしれない。
そういう物を持ってくるのではないかと思ったのですよ」
なんという正論! 反論の余地無し!
さっき驚いてたのは、まさか雑草を持ってくるとは思ってなかったからか。
「ところで、この1コルは?」
「無駄な努力をしたので、残念賞という事で」
つまりは、暗にバカにしたのね……。
「ちくしょー! 今に見てろよ!」
俺はそのまま部屋に戻りかけたが、引き換えした。
だって、晩飯食べてないもん。
捨て台詞を言った後だとバツが悪いが、しょうがない。
昼飯も食べてないから空腹なんだよ。
食事後、部屋に戻りステータスを確認する。
メシ代? 商人が払ってくれたよ。
「1コルでは食事も出来ないでしょうし」とか言いやがったけどな!
散々だったが、良い事が2つあった。
まず、職種が出来た!
それは『狩人』! 狩りなんかしてないんだけどさ。
採取したからだろうか? それともそれを商人に売ったから?
まぁ良い。これで税符を貰いに行ける!
もう一つはイベントが1増えた!
そして貰った物は「火魔法(Lv.1)」!
ところでさ、魔法ってどうやって使うのかな?