換金に行こう
隠し財産には色々な物が置いてあった。
当然、足のつきにくい物をチョイスして持ち帰る。
嵩張る物も却下だ。
って事で、高額の硬貨・宝石等の貴金属・時計等の魔道具、を選んだ。
持ちきれない物は後日にまた来て持って帰れば良いのだ。
あっ、俺が開けた穴は勿論隠しておいたよ。
バレたらヤバいからね。
翌日。
逸る足を抑えて商会に持ち込む。
この商会はアディット商会と言って、何でも扱う大手だ。
何でここに持ち込むかと言うと、俺が取引してた商人に勧められたから。
取引相手なんだってさ。信用出来るらしいです。
俺の事も話してくれてたみたいで、話は早かった。
わざわざ代表が出てきて商談になったのには驚いたけど。
持ち込んだのは貴金属。
査定に1日かかりますとの事だったので、翌日改めて訪れる事に。
査定額が楽しみだ。
安くても問題無いしね。タダで入手した物だし。
そして翌日。
商会に行くと、そのまま馬車に乗せられました。
ついた先はデカい屋敷。自宅?
中に案内され、入った部屋には40代くらいの威厳の有りそうな男性が一人。
…………判ってますよ! 現実逃避ですよ!
はい、貴族さんですよね! バレましたよね!
デンジャラスです! ピンチです!
「私はここの領主のカルベだ。ま、座ってくれたまえ」
「あああああありがつございますです」
「ははは、落ち着いて。取って食ったりしないよ」
「ささ、タクヤさん、座りましょう。フォックスさんもこちらにどうぞ」
タヌキめ、逃げようとしてやがった。
アディットさんに捕まってるけどな。
俺の膝の上に乗せてあげよう。おっと、尻尾は持たせて貰うよ?
「呼んだのは他でも無い。君が昨日持ち込んだ物についてだ」
「あああああああれはですね、ひろ、拾ったのです!」
「あぁ、そういうのは良いから。あれは当家の物でね、盗まれた物なのだよ」
「拾ったんです! ……えっ? 盗まれた?」
「そう。盗まれた物なのだよ。それを君がアディット商会に持ち込んだのだ」
「盗んでませんよ!!」
「それは判ってるよ。私の屋敷から盗むような者はこの町に詳しいだろう。
詳しい者なら我が家御用達のアディット商会に盗品を持ち込む訳が無い」
貴族御用達のお店だったのか。
そりゃ信用出来るわな。
「君は最近来たばかりだそうだね。換金してきてくれと頼まれたのかね?」
「いえ、そうじゃないんですよ……」
「ほう。事情を説明してもらえるかね?」
俺は観念して全てを話した。
このカルベって貴族さん。実に良い人。
ラノベに出てくる悪い貴族を想像してたのに、全く逆な人物。
普通ならもっと俺を疑うだろうに、アディットさんの話を信用して俺を疑う事をしなかった。
「……なるほど。ダンジョンの1階にねぇ」
「はい。そうなんです」
「それは盗賊の隠し場所だな。盗品は売る先が決まるまで、そこに保管しておくのだろう。
ダンジョンの1階とは盲点だった」
「あのぉ……それで俺の罪は……。俺はどうなるんでしょうか?」
「盗賊の物を奪っても罪にはならないさ。ただ、持ち主が判明している物は返して欲しい所だが」
「それは勿論! 全てお返しします!」
「いやいや、現金なんかは正確に誰の物と判りにくい。
持って帰った物は君の物にして良いよ。それで、そこには案内してもらえるかね?」
「はい!」
この現金は案内料ですね。判ります。
盗った現金は不問にしてお前にやるから、場所まで案内しろ。って事ですね。
そこに残ってる物は全て没収されるんですよね。
くそ、現金に限定してれば良かった。
いや、罪に問われなかっただけありがたいか。
しかし、盗賊の保管場所だったとはねぇ。
あっ! 盗賊の物を懐に入れるって結構な定番じゃない?
後でステータスを確認してみよう!
次話は12日の17時に投稿します。




