謎の穴
「……どっかと繋がったな」
「……そうですね」
「あれか? 地下二階に繋がる通路か?」
「違いますよ。地下二階に行くにも、ダンジョンに入る時と同じ様に縄梯子を使うって聞きましたよ?
それにこの穴は水平じゃないですか。地下には行きませんよ」
「じゃあ何の穴?」
「知りません!」
「俺と同じ様に鉱物掘りをしたかな?」
「いえ、ありえませんね」
「……断言したな。何でだ?」
「ダンジョンの一階では壁を壊しても大したものは出ないと聞きました。
だから、そんなバカな人は居ないはずです」
「ちょっ! おまっ!
今、さらっとバカにしたろ!
後、何だその重要な情報は?! じゃあ俺が溜めてるあの鉱物は……」
「はい、かなり安いと思います。持って上がる手間を考えたら捨てた方がマシだと思います」
「早く言えよ!」
「何か意図が有って溜めてると思ってましたけど?」
こいつ……。
この世界に関しては自分の方が詳しいと判ってから、少し俺をバカにしてるわ。
タヌキのくせに!
「じゃあヘビ玉狙いじゃないか?」
「貴方の様に経験値が見れる人は少ないと思いますよ。聞いた事無いですし」
「それ、お前の知識で、だろ? で、何の関係が?」
「アレを倒した所で、大して経験値が入手出来ないと考えてるはずです。
所詮ヘビですし。大物を倒して稼ぐのが一般的ではないですか?」
「だからヘビ玉も違う、と?」
「はい、そうです」
「じゃあ、自然に出来た穴か? 新発見?!」
「いえ、貴方と同じ様に魔法で掘られた穴だと思います。綺麗な形をしてますからね」
夜目って便利だな。暗くても自然か人工か判る。
しかし、人工とは。意図が読めない。
「あっ、あっちに何かありますね」
「俺みたいに鉱物を置いてるのか? 行ってみるか」
その穴は20mもあった。
反対側にも続いてるので、全長は結構な物だろうな。
たどり着いたのは、穴の入り口だった。
タヌキが発見した物はカーテン。
わざわざ木で入り口を囲い、そこにカーテンを付けてるのだ。
モンスターが入って来ないようにする為の仕組みだろうか?
「ここが入り口だと反対側はどうなってるんだろうな?」
「行ってみましょう」
反対に進み、俺の開けた穴を通り過ぎる事30m。
穴は90度に曲がっていた。そこから10m進むとまた90度曲がっている。
カタカナのコの字の形。
そしてまたカーテン。
カーテンを開けると、中は6畳くらいの空間があった。
そしてランタンが設置してあり、少し明るい。
驚くのは、所狭しと荷物が置いてある事だ。
「……倉庫?」
「ダンジョンの中にですか? 誰が? 何の為に?」
「俺に聞くなよ。知らねぇよ」
「ちょっと待って下さい。……怪しくないですか?」
「は? 何がよ」
「カーテンを付けて入り口を隠したり、この部屋の明かりが漏れないようにコの形に掘ったり。
しかもダンジョンの一階を掘ってます」
「一階じゃダメなのかよ?」
「深い所なら、レベルを上げに来た人が休憩所を兼ねて設置してる可能性はあると思うんですよ」
あ~、セーブポイントみたいな感じか?
それとも、セーフティーゾーンか?
「確かに一階には必要無いな。ここに来るくらいなら上がって帰った方がマシだ」
「ですよね」
「あっ! 判った!」
「えっ?! 判ったんですか?!」
「きっと、貴族や金持ちの隠し財産に違いない!」
「……え~? 貴族や金持ちがダンジョンに入っていけば怪しいですよ?
すぐに噂になると思うんですけど?」
「って考えるのを逆手に取ってるのさ!」
「……そう言われれば確かに。
自身で行かなくても、執事とかに行かせれば良いですしね」
「よし! パクろう!」
「は? 何を言ってるんです?」
「隠し財産だぞ? 隠してるんだぞ?」
「それくらい判りますよ」
「隠してるって事は、隠した人間しか知らない事だ。
それを盗られても大事にはしない。何故なら隠してる事がバレるからだ!」
「ま、まぁ、確かに」
「それにな、これだけあるんだぞ?
少しくらい盗ってもバレないって。隠してる物の目録なんか作らないしさ」
「それが見られたら問題ですからね」
「そういう事」
タヌキはまだ納得出来ないようだ。
では、会心の一撃を出すとしよう。
「これで入手した物も折半だぞ? 借金が減るぞ?」
「いくつか持って帰りましょう。ええ、バレませんとも!」
ふっ、チョロい。
次話は10日の17時に投稿します。




