タヌキの事情
どういう事?!
この世界の獣は喋るの?!
それともモンスターとか魔物?!
あっ、ラノベによくある魔族とか獣人ってやつ?!
「……あの~、何を思案されてるのか判りませんが、助けてください」
「いや、いきなり喋ったからさぁ。何の種族かと思って」
「貴方達の言うところの獣ですよ?」
「獣なのかよ! じゃあ何で喋れんの?!」
「その辺も含めて、安全な所に行ってから話しませんか?」
交渉が上手いな。
そう言われると助けなきゃいけない気がするわ。
結局タヌキを連れて穴に戻った。
うわ、獣臭が! 洗いたい!
「臭いとか言わないで下さいよ。傷つきます。もう怪我してますけどね」
「上手い事言うなよ。で?」
「あの~、治療は?」
「連れて帰ってから気づいたんだけど、治療出来るような物を何も持ってないわ」
「マジですか? 貴方狩人ですよね? 普通持ってませんか?」
「タヌキが狩人を語るなよ。持って無くて悪かったな!」
「えっと……すみません。じゃあ自分で治療するので手伝ってもらえませんか?」
出来るのかよ!
と思ったら、無理だった。
前足を怪我してるので、持てないのだ。
俺が手伝って、足に添え木をしてタオルを巻いてやった。
しかしこいつ、よく見ればアライグマにも見えるな。
ま、どっちも見た事は無いんだけどさ。俺の知識なんてネットで見た程度だし、区別がつかない。
「助かりました。ついでに言えば、朝までここに置いてもらえませんか?」
「別に良いけどさ。色々説明してくれよ?」
「ありがとうございます。何が聞きたいですか?」
「そうだなぁ。ところで、タヌキで合ってるのか?」
「一応タヌキです」
やっぱりタヌキか。
「で、何で喋れんの?」
「実は自分は魔物との混血なんです」
「混血だと喋れるのか?」
「さあ? 自分も詳しくは無いのですが。
混血だと、知能が上がるらしいです。自分以外にも喋る獣を見た事がありますし」
「へ~。どうやって知ったんだ?」
「前に学者と言われる人が来て、その時に聞きました」
こういうのを調べてる人が居るのか。
まぁ、そうだよな。獣が喋ったらビックリするよな。
で、調べようとするよな。
喋れる獣を殺すには相当の覚悟が要りそうだし。
それにコッチの言う事が理解出来るなら、住み分けとかも可能だろうし。
「他の普通のタヌキとも喋れるのか?」
「いえ。あいつらバカですから。無理ですね」
「一応同族だろ? バカとか言ってやるなよ」
「だって、本能だけで生きてますよ? 危険だから行くなって行っても聞かないし」
「そうなのか?」
「ええ! 今回だってそう!
熊の気配があるから狩りに行くなって言ったのに、ノコノコと出かけるんですよ?!
結局、熊と遭遇。そのまま死ねば良いのに、俺や親の居る巣まで逃げてきたんです!!
そのせいで全員見つかり、逃げる事になったんです!!」
「本能の方が熊とか発見しそうなんだけどな」
「本能と言ってもあいつらは臭いだけですよ。
自分は木に爪痕があったのを発見しましたから」
「なるほどね。で、何で落ちてきたの?」
「恥ずかしながら、熊にビビりまして。目を瞑ってやみくもに走ってたんです……。
ここに穴がある事は知ってたんですけど……」
「他のタヌキの事をバカに出来ない失態だな」
目を瞑って逃げるとか。どんだけビビったんだよ。
「あの……それでですね。頼みがあるんですけど」
「ん? 何だ?」
「魔法で怪我を治す事が出来る人が町には居るんですよね?
治してもらう訳にはいきませんか?
あっ! 治すのにお金が要るのは知ってます!
必ず返済しますので! お願いします!」
俺よりも詳しいじゃねぇか。
そうだ、俺に色々と知識を与えてもらおう。
多分俺よりも詳しそうだからな。
テッテレー
タヌキが仲間になった!
次話は31日の17時に投稿します。




