新たな魔法
翌日。
折角土魔法も覚えたんだし、魔法屋に行く。
火魔法と水魔法のレベル2の魔法も覚えたいしね。
「おおっ、タクヤじゃねぇか。お前さん、役者だったんだな」
「いや、違うんですよ!」
「何でだ? 昨日演じてたそうじゃねぇか。言ってくれれば俺も見に行ったのによ」
「えっとですね、アレは……そう! 俺の故郷に伝わる儀式でして」
「はぁ?!」
「ああやって演じる事で魔法を使えるようになるっていう、儀式なんです!」
「そんな事あるかよ」
「いや、本当なんですよ! 実際に、土魔法を使えるようになりましたよ!」
「へぇ~、って、いやいや、俺を騙そうとしても無駄だぞ?」
「本当ですって!」
「じゃあ、俺が今からレベル1の土魔法を見せてやる。使えるようになるなら信じてやるよ」
おっ、ラッキー。
タダで教えてもらえるぞ。
見せてくれた魔法は『ディグ』というらしい。
農作業用の魔法で地面を耕すだけ。
1m四方を耕してMP4を消費するそうな。
使い道の無い魔法だ。タダだから良いけどさ。
覚えたので使ってみせたら、驚かれた。
「本当にアレで覚えたのか?!」
「ええ、そうですよ」
「そんな方法もあるんだなぁ」
「あっ、でも特殊な方法なので、誰でも覚えられる訳じゃないですよ」
「そうなのか?」
「ええ。ちゃんとした手順があるんで」
「その手順とは? 金払えば教えてくれるのか?」
くっ。現金収入はありがたいが、教える訳にはいかない。
っていうかデタラメだしな。やっても覚えられる事は一生無い。
ウソを隠す為にウソをつくのか。雪だるま式だなぁ。
「え~、秘伝なので、ちょっと無理ですねぇ」
「そうか……残念だが、そういう事はあるだろうな。
ところで、そういうので他の魔法も使えるようになるのか?」
「そうですね。複雑な手順がありますけど……」
「ふ~ん。その割には魔法に全然詳しく無いけどな」
んぐっ。痛い所を指摘されたな。
しょうがないじゃないか。ウソなんだし。
「使えるようになってたんですけど、詳しい勉強する前に諸事情で……」
「ん? あぁ、教えてくれる人が亡くなったとかか?」
「そう! そうなんです! もう高齢のお婆さんだったんで! 残念でした!
それで魔法を覚える為に、村を出たんですよ!」
ナイスなフリです!
上手く誤魔化せたかな?
よし、さっさと話題を変えよう。
「それで、レベル2の魔法を覚えたいんですけど?」
「あぁ、そうだったな。土魔法のレベルは?」
「土魔法は1です。水と火が2ですね」
「って事は飲んだんだな?」
「……はい。マズいなら教えておいてくださいよ!」
「言ったら買わないだろ?」
確かにその可能性はあったけど!
それでも教えて欲しかった!
まぁ俺も、誰かが買って飲もうとしてたら言わないけどさ。
「レベル2の魔法な。火と水で1つづつだ」
「そうなんですか。じゃあお願いします」
「ここからは攻撃魔法になるからな。取扱い注意だぞ。街中で使ったら捕まるからな?」
「ここでは良いんですか?」
「あぁ。認可を貰ってるからな」
披露された魔法は『ファイヤー』と『アイス』という魔法だった。
どちらも照準は目で、見た所に向かって発動するらしい。
つまり見えない所には使えない。暗闇でも使えないんだってさ。
火魔法の『ファイヤー(Lv.2)』は、いわゆるファイヤーアロー。MP10を消費する。
水魔法の『アイス(Lv.2)』は、2m四方を凍らせる魔法。すべるらしい。MP10を消費。
ファイヤーがあれば、スライム相手に戦えるんじゃないか?
くそ、先に覚えておくんだった。
いや、また予備知識無しにダンジョンに行ってもダメだ。聞いておこう。
「ファイヤーでスライムを倒せますかね?」
「余裕だな。というかMPがもったいない。スライム倒すならたいまつを持ってろ」
なるほど。確かに。
ではアイスは?
「アイスは何に使えます?」
「アイスなら2足歩行のモンスターに有効だな。あぁ、ヘビにも使えるぞ」
へ~。そうなんだ。
聞いておいて正解。なかなか勉強になる。
これでダンジョンでのレベルアップに行けるな。
たいまつを忘れずに買わないと。
「そうそう、土魔法のレベルアップ用のポーションは買わないのか?」
「…………ちなみに何味ですか?」
「そのまま、土の味だな」
「…………考えときます」
次話は水曜日(17日)の17時に投稿予定です。




